絶望
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私が遥香と思われるナニカに銃で胸あたりを撃たれたあと…
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私は…また何者かの悪夢の中で何回か目覚めた。
この死に戻りの正式名称は悪夢オチと言うらしい。
誰がつけた名前かは知らないが…
そして、これもキューピットが教えてくれたことだけど…
多分、その悪夢オチには回数制限がある。
そう…
10回までだ。
そして…
私は現実で遥香に殺されたのを含めると、この区間で9回殺されてる。
そう…
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9回もだ。
そして、私が遥香?に銃で撃たれ、悪夢の世界に戻されたあと、私達はやれることを色々やったが…
結局、私もエリカの打開策は…全てあの執事ゾルゲと、屋敷の外を固めている堕天使の軍勢の前では、すべて失敗に終わった。
全て…無駄だったのだ。
…そして。
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今回もまた、同じ朝が始まる。
(…………)
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私がまた同じ時間に泣いていると、同じ使用人のエリカが部屋に入ってきた。
『おはよー。アンリ……?』
そして、私の方へ心配そうにかけよってきてくれた。
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そして、私達は…奴らに悟られないように、わざといつものループと同じように振る舞った。
『大丈夫!!?アンリ!!』
『大丈夫だよ。エリカさん。少し思い出せないことがあっただけ』
すると、エリカは微笑んで言った。
『きっと悪い夢でも見たんだよ』
『きっと…?』
『うん。きっと』
その優しい微笑んだ顔を見ていたら、いつの間にか私の表情も柔らかくなっていた。
本当に…柔らかい。
そして…優しい。
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こんな優しい人達が9回も殺されたのだ。
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やっぱり、私は……この人達を守らないといけない。
…そう誓った。
でも……
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どうやって?
『あと…アンリ。私のことはエリカさんじゃなくて、エリカって呼んで』
『……え?良いの?』
『うん。だって、私達同じ使用人でしょ?だからアンリと仲良くなりたいの』
そう言って、彼女は私に手を差し伸べてくれた。
そして、私はその手を取って、言った。
『うん!よろしくね!エリカ!』
すると…エリカは嬉しそうに微笑んだ。
そして…私と数分話したあと、エリカは出ていった。
部屋の机の上に、あるメモを書き残して。
そのメモにはこんなことが書かれていた。
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ー『会話は全てゾルゲ達に聞かれている』
…そっかあ。
にしても…
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また同じ少女の夢を見た。
(………)
私はベッドの中に潜って、ひたすらどうするべきか考えていた。
でも…
何も思いつかない。
もうどうしようもない。
みんなを守れない。
私はここで死ぬ。
遥香やみんなを救えずに、死ぬ。
何故なら、私には魔法のような特別な力なんてものは何もないからだ。
私はやはり、特別ではないから。
私は結局…昔と同じままから…!
私は無力だから。
私は…!
私は!!
『私の助けが必要かい?アンリ』
窓の方から声がしたので、私はその声がした方向を見た。
すると…
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いつものループなら閉まっているはずの窓が空いていた。
そして…そこにいたのは。
精霊キューピットだった。