分からないよ
お父さんとお母さんは私の目の前にいる。
ここは悪夢世界ではない。
そして…私は…
今、ベッドから起きた。
…?あれ…?
もしかして……今までの出来事って全て…
ただの悪夢…?
……悪夢…ねえ。
そっかあ。
そうなんだね。
今まで見ていたのは……きっと、悪夢だ。
だけど……悪夢にしては…少し幸せすぎたな。
あと、これは今思い出したこと何だけど、そういや私……
心臓止まったんだ。
だから…私は今、病院にいるんだ。
でも……
それじゃあ、少しだけ疑問が残るな。
結局……
あのキューピットっていう自称精霊は何だったんだろう…?
そして…さっきまでの出来事が、ただの夢なら…
遥香が私の前から消えたのも夢だったの…?
全く……どこからどこまでが夢なんだか分からないな。
……あれ?
おかしい。
これはきっと、夢なんかじゃない。
だって…もし、これが夢なら。
なんで…あの時。私は心臓の持病を持ってないはずなのに…私の心臓は止まったの…?
それに、もしあれがすべて夢なら…
今、私の目の前に現れた精霊を見ている私は……
幻覚を見ている私はただの幻覚を見ているやべえ奴ってことになる。
『おーい。アンリ…いや。この世界では愛理か』
キューピットが何か言ってる。
あ…やばい。
もしこれが夢じゃないなら…私が完全に頭おかしいことになっちゃうじゃん。
『愛理。聞いてくれ。これは真面目な話なんだ』
いや、でも…私が心臓の持病がないとは言い切れないし…
『愛理。君の親友の…遥香は気の毒だけど…』
いや、でも…それなら。
…え?
遥香がなんて?
『君の親友の遥香は…死んだ』
『彼女はもう生き返らない。とある一人の人間の悪夢の中で、堕天使に殺されたから。……すまない。あれは私でも救いきれなかった』
ーこの時の私は、意味がまるで分からなかっていなかった。
悲しいとか、その以前に頭がとにかくこんがらかって、意識があっちこっちいって……
意識を失いかけるほどだった。
とにかく……何が起こってるか、とか。
遥香が死んでしまったとか。
生き返らない…………とか。
…生き返らない…?
シンダって……死んだってことか。
……そのシンダの意味をほんの少しだけ理解した時…私は初めてその時、死という概念を身近に感じた。
でも、信じられないし、信じたくもなかった。
だって…あの日、約束したから。
ずっと……親友だって。
約束…したのに。
(…………)
ー私の記憶に小学1年の時の記憶が流れ始めた。
ああ…
そうだった。
これは……
私と遥香の馴れ初めの記憶だ。
『遥香…それが私の名前よ。転校生さん。君の名前は?』
『愛理』
『あい…り…?』
『うん。愛理……やっぱり変かな?』
『変じゃない…!!全然!!変じゃないよ!!凄い良い名前だね!!愛理!!これからよろしくね!!愛理!!』
『あ…ありがとう』
その時の遥香の目の輝きは、私と遥香の初めての出会いとして、私の脳裏に深く記憶されることになる。
何故なら…あの時……両親以外で初めて私の名前を普通でも…変な名前でも…何でもなく…良い名前って言ってくれる人に出会えたのだから。