初めての仕事
それから、長い1日が終わり…
私は自分の部屋でぐったりとしていた。
つまるところ、今の私は初めての仕事に疲れ、ぼーっとしているのだ。
『疲れたよ〜』
…と、小言を隣の部屋に聞こえないように言ってみたりしてることからわかる通り、私は新しい環境で良い意味でも悪い意味でも打ちのめされたのだ。
ーそして、今日私はどんな仕事をしたのか。
まあ、簡単に言うと、ひたすら床を雑巾がけだ。
ああ〜…筋肉痛になりそ〜……
こうして、私は今日の日記をつけてから、ベッドで毛布にくるまり、眠りについた。
(…………)
それから朝が来て、私は目覚めた。
朝の日差しが眩しい。
…………にしても。
私は……さっきまで。
何か怖い夢を見ていた気がする。
だけど……
詳しいことが思い出せない。
夢に出てきたその少女の顔も……名前も。
思い出せなくなってしまった。
確かに、所詮は夢だから忘れるのは仕方ない。
どうでもいいことなはずだ。
…はずなのに。
なら……なんで私は。
泣いているんだろう。
涙がポロポロと…溢れて止まらないんだろう。
(………………)
私がわけもわからず泣いていると、同じ使用人のエリカさんが部屋に入ってきた。
『おはよー。アンリ……?』
そして、私の方へ心配そうにかけよってきてくれた。
『大丈夫!!?アンリ!!』
『大丈夫だよ。エリカさん。少し思い出せないことがあっただけ』
すると、エリカさんは微笑んで言った。
『きっと悪い夢でも見たんだよ』
『きっと…?』
『うん。きっと』
その優しい微笑んだ顔を見ていたら、いつの間にか私の表情も柔らかくなっていた。
そして…涙はどこかへいっていた。
『あと…アンリ。私のことはエリカさんじゃなくて、エリカって呼んで』
『……え?良いの?』
『うん。だって、私達同じ使用人でしょ?だからアンリと仲良くなりたいの』
そう言って、彼女は私に手を差し伸べてくれた。
そして、私はその手を取って、言った。
『うん!よろしくね!エリカ!』
すると…エリカは嬉しそうに微笑んだ。
(…………)
そして、私がこの館に来てから2日目の今日は、ユリウス暦1020年11月12日らしい。
まあ、そろそろ冬になる季節だね。
というわけで、私は朝から全ての床を雑巾がけした。
すると、ハンスさんが黒服の客人と話しているのが見えた。
だけど、私はまだ入りたての使用人だから、深く関わらないようにして、いつも通り床を雑巾がけした。
そして…それから昼になり、私はキッチンの皿をいつもどおり洗っていた。
すると…
今度は執事のゾルゲさんが、その黒服の客人と話をしているのが聞こえた。
私はその黒服の客人の言葉の一部が聞こえていた。
ー『あとは頼みましたよ。ゾルゲさん』ー
ゾルゲさんは頷いていた。
私はこの言葉の意味がよく分からなかったけど、気にせず皿洗いを続けた。
(……………)
そして…このあと特に何もなく2日目も終わり、眠りにつく前に、今日あったことを日記にまとめた。
そして…眠りについた。
(……………)
朝起きた。
相変らず、光が強いな。
にしても…
私。
また涙をポロポロ流している。
この感覚……
昨日と全く同じ夢を見たんだ。
あの少女は誰なんだろう。
名前も顔も思い出せない。
すると…エリカが部屋に入ってきた。
『おはよー。アンリ……?』
そして、私の方へ心配そうにかけよってきてくれた。
『大丈夫!!?アンリ!!』
『大丈夫だよ。エリカ。少し思い出せないことがあっただけ』
すると、エリカは微笑んで言った。
『きっと悪い夢でも見たんだよ』
『きっと…?』
『うん。きっと』
その優しい微笑んだ顔を見ていたら、いつの間にか私の表情も柔らかくなっていた。
そして…涙はどこかへいっていた。
『あと…アンリ。私のことはエリカって呼んでくれて嬉しいよ』
『…え?エリカ…それはどうして?』
『だって…アンリ。私はアンリに昨日までエリカさんって呼ばれてたし』
『……え?なん…で…?』
あれ…?
おかしいな。
昨日。私はエリカのことをエリカって呼んでいたはずなのに。
……エリカ。忘れてるのかな?
まさか、そんなことは………
私は手元にあった日記を開いてみた。
しかし、なんと……
昨日書いたはずの日記の記録が消えていたのだ。