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第8話 思い出の人たち

 


 レオナルド様は、つい数ヶ月前に公爵領の視察にやって来た第一王子だ。


 私はコソコソと彼に話しかける。


「どうされたんですか⁈」

「久しぶりに君に会いたいと思った。それだけでは、理由は不十分か?」

「⁈」

「……というのは、冗談で。アリシアが行きたいと駄々を捏ねたんだ」

「アリシア様が?」


 私が首を傾げると、彼の後ろから「お〜に〜い〜さ〜ま〜! 早いわよ〜〜〜!」という声が聞こえてきた。


 そして、ドンッと金髪の美少女がレオナルド様の背中にぶつかった。


「お兄様、わたくしのことを置いて行くなんて、ひどいわ! 急に早歩きになって……って、お姉様!」


 アリシア様は、こちらを見て目を輝かせた。


「お姉様〜! 会えて、嬉しいわ!」

「アリシア様、お久しぶりです! ところで、なぜここに……?」

「お姉様が出店をやるなら、食べたいに決まってるもの! せっかくだから、お兄様も連れて来ちゃったわ」

「な、なるほど?」

「ちなみに、しっかり護衛は付けてあるし、この後はすぐに帰るつもりだから、安心してくれ」


 レオナルド様はそう言うけれど、お祭りは色んな人が集まるから少し不安だ。


 というか、変装はしているのに、二人だけが異様にキラキラしてる気がする……。これがロイヤルファミリーの特別感?


 とはいえ、彼らと久しぶりに会えたのは嬉しい。

 

「えっと……それじゃあ、お好み焼きです! 美味しいと思うので、ぜひ味わって食べて下さいね」

「嬉しいわ! ありがとう、お姉様!」

「こちらこそ、ありがとうございます!」


 お好み焼きを受け取った彼らは、すぐに帰って行った。本当に私に会いにきただけだったみたいだ。


 彼らに手を振って、お好み焼きを作る作業に戻ろうとすると……。


「聖女さま〜!」

「聖女さま、来たよー!」

「え、みんな⁈」


 続いてやって来たのは、前にポテチを一緒に販売した孤児院の子供達だった。あの時から少しだけ大人っぽくなったみんなが、お店の前に立ち並ぶ。


 彼らの後ろで、院長先生がにこやかに見守っていた。


「よっ、元気にしてるか?」


 と、声をかけてきたのは、最初に「ポテチなんかじゃ、やる気でねーよ」と反抗していた男の子だった。

 前に会った時より、少しだけ大人びた顔立ちになった気がする。


「元気だけど……もしかして、背伸びた?」

「あったりまえ。聖女様がご飯の美味しさを教えてくれてから、もりもり食べてるからな」


 彼は「聖女様の背なんて、すぐ抜かすつもりだから」とニカッと笑う。

 

「そっか。えらいね」

「へへっ! じゃあ、お好み焼きってやつをくれよ」

「うん、ちょっと待っててね!」


 私がお好み焼きの準備をしている間、彼らはルルちゃんを構ってあげていた。

 ルルちゃんの頭を撫でたり、「偉いね」「頑張ってね」などと声をかけていたり。ルルちゃんは少し年上の子達に構ってもらえて、ご満悦そうだった。


 すっかりお兄さん、お姉さんになっちゃって……。


 彼らの成長にしんみり感動していると、ふとルルちゃんを構っていた女の子が顔を上げた。


「そういえば、ここに来る前にこの子に似てる人、見かけたよ」

「え⁈ それは本当⁈」

「うん。その時はルルちゃんのこと知らなかったから、声をかけなかったけど……。この子のお父さんだったら、いいね」

「う、うん……」


 そうして、お好み焼きを受け取った彼らは、去って行った。


 「もしかしたら、本当にルルちゃんのお父さんが来ているのかも」と考えていると、再び私の前に大きな影が二つかかった。


 そこにいたのは、アベラルド様と……。


「やあ、ジゼルちゃん! お忍びでアベラルドと一緒にきたよ〜!」

「イアン様⁈ お久しぶりです!」


 そこにいたのは、アベラルド様とイアン様だった。

 イアン様はアベラルド様の幼なじみで、前に公爵家に泊まりに来たことがあるくらいの仲である。


「どうしたんですか?」

「アベラルドがどうしてもジゼルちゃんの様子を見たいって駄々を捏ねたから、連れてきちゃった」

「おい、駄々なんて捏ねてないだろう」


 アベラルド様の言葉を無視して、イアン様はウィンクをした。


「ま、俺もジゼルちゃんに会いたかったからね」


 相変わらず、チャラいな〜。私は苦笑していると、アベラルド様がイアン様の肩を後ろから掴んだ。


「おい、ジゼルを口説くな」

「口説いてない口説いてない! 本音を言っただけだから!」

「ほう、本音がそれなのか」

「痛い痛い! めり込んでるって!」


 イアン様とアベラルド様がじゃれ合っている(?)のを見ていると、ルルちゃんがこちらにやって来た。


「けんかしてるの? 仲良くしなきゃメーだよ?」

「ルル、これは喧嘩じゃなくてな……」


 アベラルド様が焦って、ルルちゃんに弁明をしている。その様子を見ていたイアン様が「あぁ!」と手を叩いた。


「もしかして、公爵家で預かってるルルちゃん? こんにちはー。可愛いねぇ」

「ルル、可愛い?」

「うん。すごく可愛い。お姫様みたいだね」


 ルルちゃんが顔を赤くさせたのを見て、アベラルド様が今度はイアン様の頭を掴んだ。


「おい、ルルも口説こうとしてるんじゃないんだろうな……?」

「ちょ、もう完全にお父さんじゃん! 安心して、俺のストライクゾーンは成人済み女性だから」

「成人済み……ジゼルも入る……」

「あーもう。大丈夫だから、幼なじみの妻に手は出しません」


 イアン様は降参のポーズを取りつつ、私の方を見た。


「そういえば、お祭り会場内でルルちゃんの話をしてる人多かったよ〜」

「本当ですか?」

「うん。迷子でお父さんを探してるって、話してる人がたくさんいた。お父さんがお祭り会場に来ていたら、話が耳に入るんじゃないかな」

「そう、ですか……」


 喜ばしいことのはずだ。なのに、胸が痛んでしまった。こんな感情、ルルちゃんのためにならないのに……。


 私が俯くと、ルルちゃんが私の袖を引っ張った。


「ジゼルちゃん? 悲しい顔、どうしたの?」

「ううん。何でもないよ」


 首を振って笑った私の顔を、ルルちゃんはジッと見つめる。そして、彼女は私の耳元に口を寄せた。


「あのね、ジゼルちゃん……」


 ルルちゃんが何かを言おうとした、その時だった。


「ルル!」


 ルルちゃんに似た男性がこちらに駆け寄ってきた。



活動報告に本話のボツシーン会話・レオナルド視点を載せました。メタ発言等も大丈夫な方のみ、よろしければ遊びに来て下さい。


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