第7話 お祭り当日
いよいよ、お祭り当日となった。
お祭りは今日と明日の2日間で行われる。
だから、今日でルルちゃんのお父さんを見つけてあげて……せめて明日くらいは、一緒にお祭りをまわらせてあげたいと思う。
本当はルルちゃんと離れたくないけれど……。ううん、それはルルちゃんのためにならないよね。
私はルルちゃんのお父さんを見つけるため、そして、お祭りを盛り上げるため、私は気合を入れ直した。
「皆さん、今日はよろしくお願いします!」
今日は、お祭りを主催している団体から何人か人員を貸し出してもらった。
私が挨拶をすると、彼らはにこやかに答えてくれた。
「ジゼル様、よろしくお願いします」
「聖女様とご一緒できて、光栄ですー」
「今日は頑張りましょうね」
そして、彼らに加えて手伝ってくれるのは……。
「ルルも頑張るね!」
「うん。ルルちゃんもよろしくね」
エプロンを身につけた、ルルちゃんだ。
今回、ルルちゃんには、最後の仕上げを担当してもらおうと思っている。重大な役割に、ルルちゃんも気合バッチリだ。
ちなみに、公爵様も手伝いたがっていたけれど、それは丁重にお断りした。
流石に領地内外から人が集まるお祭りで、出店の手伝いをさせるわけにはいかないと思ったのだ。
「それじゃあ、事前に打ち合わせした通りに作っていきましょう……お好み焼きを!」
そう。今回作るのは、お好み焼きである。コーンをたっぷり入れた、シャキシャキのお好み焼きにするつもりだ。
水、小麦粉、キャベツ、卵、コーン等を混ぜて、生地を作っていく。それを鉄板の上に乗せて、さらにその上に豚バラ肉を乗せて焼いていく。
生地がしっかり焼けたら、完成だ。お好み焼きの上にソースを塗る。
手分けして作っていると、お祭りが開幕し、人々が集まってきた。
「“お好み焼き”を一つ下さい」
「はーい!」
お好み焼きがいくつか完成したところで、お客さんがやってきた。私はお客さんに尋ねる。
「あの、小さい女の子に仕上げの手伝いをしてもらってもいいですか?」
「あら、もちろんいいですよ」
許可をもらったので、私はルルちゃんを呼ぶ。
「よし、ルルちゃん。仕上げをお願いしてもいいかな?」
「うん! まかせて!」
ルルちゃんは元気いっぱいに頷き、マヨネーズの入った容器を手に持った。
そして、お好み焼きの上にマヨネーズで、イラストを描き始めた。
お好み焼きの上に「たぬき」のイラストを描く。
以前、ルルちゃんがたこ焼きにイラストを描いていたことがあった時に、とても上手に描けていた。
それを見た時に、お祭りでも同じことをしてもらったら面白いと思ったのだ。
「たぬきお好み焼き完成ですっ! 美味しく食べてください!」
「あら、たぬきのイラスト? たぬきの飾りも付けていて、かわいいわね〜。ありがとう」
一般的に獣人族はあまり知られていないので、お客さんはルルちゃんの耳をただの飾りだと思ったようだ。
すかさず、私はそのお客さんに話しかける。
「この子、実は迷子で、公爵家で預かっているんです」
「そうなんですか?」
「はい。この子のお父さんの情報を集めているので、もし何かあればこの店までお願いします」
「もちろんです」
よし。ルルちゃんに好印象を抱いてくれそうな人には、こうしてお父さんの情報を頼んでいこう。
その後もルルちゃんが仕上げを担当していると、その様子を見ていた人達が口々に言い始めた。
「見て、たぬきの女の子がイラストを描いてくれるみたい」
「かわいい! あれ、欲しい!」
「聖女様のお店だって。行ってみましょうか」
私の考えたことが功を奏しているようで、ホッとする。
このようにルルちゃんが看板娘のような役割を果たしてくれれば、より人が集まりやすくなるのではないかと思ったのだ。
そうすれば、お好み焼きも売れるし、購入したトウモロコシも減らすことができて、ルルちゃんの罪滅ぼしになるだろうと。
それに、集まってきた人が「たぬきの女の子がいる店がある」と口コミを広げてくれれば、その話を聞いたルルちゃんのお父さんが店を訪ねてくれるかもしれない。
もちろん、お父さんがルルちゃんを探していて、このお祭りに来ていないと意味がないけれど……。
ううん、悩んでいても仕方がない。
私はお祭りを盛り上げるため、ルルちゃんのお父さんを探すため、お好み焼きを作りまくった。
「そんな、こんなにいただけません!」
お好み焼きを作っていると、店頭で会計担当をしている人の叫び声が聞こえた。
お好み焼き作りを一旦中断して、私はその人の元へ駆け寄る。
「どうしたんですか?」
「実は、このお客様が定価の10倍のお金を支払おうとされていて……」
「えぇ⁈」
私は会計皿に置かれたお金の量に驚いて、そのお客さんを見る。
そして、さらに驚いてしまった。だって、そこにいたのは……。
「れ、れ、れ、レオ……」
「シーッ。今回はお忍びなんだ。申し訳ないが、声を小さくして話してくれると助かる」
そこにいたのは、レオナルド様だった。




