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第6話 焼き×焼き晩酌


 その後、ルルちゃんのお父さんはなかなか見つからず、ついにお祭り前日を迎えてしまった。

 私とアベラルド様は晩酌部屋に集まって、頭を抱えた。


「なかなか見つかりませんね……」

「宿泊施設からも連絡なしだからな」


 領地内すべての宿泊施設に連絡を入れたけれど、どこからもルルちゃんのお父さんの情報を手に入らなかった。


 もしかして、ルルちゃんのお父さんは娘を探していないのではないか……という最悪の予測が頭をよぎる。


 けれど、それを慌てて振り払った。最悪のことを考えるのは、すべての手段を試した後だ。まだお父さんを見つける可能性はゼロではない。


「とにかく、私は明日のお祭りで、絶対に見つけるつもりです」

「祭りで見つかるか?」

「明日のお祭りに行くって約束していたなら、お父さんもそこに来ると思うんですよね。約束を覚えていた娘も、ここに来るんじゃないかって」

「でも、祭りには人がたくさん来るから一人の獣人族を探すのは至難の業だぞ」

「実は一つだけ考えていたことがあって……」


 私はゴニョゴニョとアベラルド様に考えていることを話した。


「なるほどな。出店に来た人を使うのか」

「ついでに、畑を荒らしちゃったルルちゃんの罪滅ぼしにもなるかなって。ちょっと気にしてるみたいだったから」

「うん。いいと思うぞ」


 元々、育ちのいい子なのだろう。トウモロコシ畑の人に謝りに行った時も、ずっとしょんぼりしていたし、しっかり罪の意識があるみたいだった。


 ちなみに、被害を受けたトウモロコシ畑からは、公爵家で少し高くトウモロコシを購入している。これで損失分の補填ができればいいなと思って。


 そして、今回の出店では、トウモロコシを使った定番お祭り料理のアレンジレシピを使うつもりだ。たくさんあるトウモロコシをここで使っちゃおうってね。


「とりあえず、今日は晩酌をしましょう! 週末ですから!」

「そうだな。それじゃあ、明日の大成功を祈って、乾杯」

「乾杯!」


 ビールをぐびぐびと飲む。


 冷たいビールが考えすぎて疲れた脳みそに、じわじわと効いてくる。うーん、気持ちいい。


 私は存分にビールを味わった後、本日の晩酌の料理を出した。


「今日の晩酌は……焼きトウモロコシと焼き鳥です!」


 本日は炭火焼きを使った、トウモロコシと焼き鳥が晩酌のメニューだ。


 しっかりとタレで下味をつけておいた焼き鳥と、醤油を塗ったトウモロコシの香ばしい匂いが食欲を誘う。


「じゃあ、さっそく焼き鳥から食べましょう」

「ああ」


 私は焼き鳥を一本、アベラルド様へと差し出した。アベラルド様がゴクリと喉を鳴らした。


 今回作った焼き鳥は、もも肉の間にはネギが挟まっている「ねぎま」だ。


 さっそく私達は焼き鳥を食べ始めた。


 炭火で焼いたからか、表面はパリッとしていて、香ばしい。

 鶏肉を噛むたびに、とろっとした濃厚なタレとジューシーな肉汁が口いっぱいに広がる。


 そして、シャキシャキのネギには甘みがあって、鶏肉の美味しさをより際立てていた。


 焼き鳥片手にビールを飲むと、さらにお酒が進む。


「んんんっ、美味しい……っ」

「このタレが濃厚で美味しいな。それに、炭火焼きによって、鶏肉が外はカリッと中はジューシーで、より美味しくなっている」

「それが炭火焼きの醍醐味ですから。手間をかけた甲斐がありました」

「よし、それならトウモロコシの方も食べてもいいか?」

「もちろんです!」


 続いて、私達は焼きトウモロコシを手に取った。


 醤油の香ばしいにおいに我慢できず、すぐにトウモロコシにかぶりつく。


 醤油で味付けされた、トウモロコシの甘みが口いっぱいに広がる。トウモロコシの粒もしゃきしゃきしており、最高の食感だ。


 そして、この香ばしい味付けがビールとよく合うのだ。


「あぁ、美味しいですね」

「そうだな。ビールと合う天才的な味付けだ……」


 その後、晩酌の話題が尽きた私達は、しばらく無言になってしまう。


 だって……。


 だって、ルルちゃんとのお出かけの日から二人きりになるのは、初めてだから……!


 ルルちゃんに「ちゅーするの?」って聞かれてから、なんかアベラルド様を意識してしまう……っ!


 私は気まずさから、ビールを煽った。そして、必死になって考える。


 何か、何か話題を探さなければ……!


「ルルちゃんのことなんですけど!」


 もうここはルルちゃんで乗り切るしかないと、私は口を開いた。


「ルルちゃん、だいぶ公爵家に慣れてきましたよね! 最初は怯えて話すこともできなかったのに。リーリエやレンドール君とも仲良くなってるみたいだし、本当の家族みたいで……」


 そこまで言って、思わず俯いてしまった。私は、ポツリと呟く。


「本当は……私、ルルちゃんと離れたくないんですよね……」


 言ってから気づく。こんなこと言っても、どうにもならないということ。そして、アベラルド様を困らせてしまうことを。


 いけない。うっかり飲み過ぎて、口が軽くなってしまったみたいだ。


 私は慌てて言い繕った。


「えっと、今のは違くてですね……」


 私が焦っていると、アベラルド様はガンッと勢いよくグラスをテーブルに置いた。そして。


「わかる……っ、俺も……離れたくない……っ」

「あ、本音を話してしまうアベラルド様! 飲みすぎましたね?!」


 私がビール瓶を確認すると、大幅にビールの量が減っていた。


「俺だってルルと離れたくない……でも、親元に返してやりたいという気持ちも本当なんだ……っ、心がふたつある……うぅ」

「はいはい。もう、なんでそんなに飲みすぎるんですか」


 私は意識しているのを誤魔化すために飲み過ぎてしまったけれど……。


 アベラルド様は真っ赤な顔で、私を見上げた。


「それは……その……」

「なんですか?」


 アベラルド様は目を泳がせる。そして、数秒迷った後、私から目を逸らした。


「な、なんでもない……」

「えぇ⁈」


 その時、晩酌部屋の扉が開かれた。


 レンドール君が来たのだろうかと振り返ると、そこにはルルちゃんがいた。


「ルルちゃん? どうしたの?」

「泣き声が聞こえてきたから、来たの」


 ルルちゃんはトコトコとアベラルド様の元へと駆け寄る。そして、彼の頭を撫でた。


「泣かないで。いーこ、いーこ」

「うぅ……」


 幼女が成人男性を慰めている?


 ぎ、逆では……?


「いつもアーちゃんがルルのことを励ましてくれるから、今日はルルが励ますね」

「うぅ、ルルはジゼルに似て優しい子だな……」

「うん! ジゼルちゃんのこと大好きだから!」


 でも、涙目のアベラルド様と、一生懸命頭を撫でるルルちゃんの姿が可愛くて……自然と愛おしさが湧き上がってきた。


 私はそっとアベラルド様とルルちゃんを抱きしめる。


「ジゼル?」

「ジゼルちゃん? どうしたの?」

「……ううん。なんでもないよ」


 私が首を横に振ると、ルルちゃんは今度は私の頭を撫で始めてくれた。


「ジゼルちゃんも、いーこ、いーこだね」

「……うん、ありがとう」


 本当は彼女を手放したくない。そう思ったけれど、その言葉は飲み込んだのだった。





明日は投稿をお休みさせていただきます。大変申し訳ございません。

明後日の更新をお待ちいただけると幸いです。

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― 新着の感想 ―
ルルちゃんが良い子過ぎてつらい。 もし公爵家で暮らす事になるとしても、パパが公爵家の使用人にでもならない限り、それがルルちゃんの不幸の上で成り立つという事実がもっとつらい。
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