第2話 公爵様が酔い過ぎるのは、もはや風物詩
「それじゃあ、仕事の話はここまでにして……晩酌をしましょう!」
「そうだな」
アベラルド様はクスクスと笑う。多分、「晩酌の時間になった途端、更に元気になったな」とか思ってるんだと思う。
仕方がない。晩酌が好きで、このために一週間仕事を頑張ってるんだもん。
「今日の晩酌は、生姜焼きです!」
「生姜焼き?」
「豚ロース肉を砂糖や醤油、みりん、生姜などで味付けしたものです」
本日は、白ご飯も用意している。生姜焼きと白米のマリアージュは素晴らしいからね……!
さっそくビールを注いで、乾杯をする。
さっそく生姜焼きを取って、白米の上に乗せた。生姜焼きのにおいが食欲をそそり、くぅとお腹が鳴る。私はさっそく、生姜焼きと白米を口に入れた。
「お、おいひい……っ」
お肉が柔らかくて、白米はもちもちの食感。
そして、ほんのり甘い白米に、生姜が効いた味付けのお肉が最高にマッチしている。これぞ幸せ……幸せだ〜〜〜!
目の前に座っているアベラルド様を見ると、彼も感動で目を輝かせていた。
「生姜の味付けが最高にビールとマッチしている。これはビールが進むぞ……っ」
「本当ですね。生姜焼き、すごすぎる……!」
その後は、私達はひたすら無言で生姜焼きと白米を頬張った。
美味しいと無言になる現象、ここにあり。
そして、しばらく夢中で食べていたから、気づかなかった。またアベラルド様が飲みすぎていることに。
「うぅ……っ、俺はジゼルと結婚できて幸せなんだ……っ」
「あ、また飲みすぎてますね!」
気づいた時には、彼はすでに泣き始めていた。
「領地も順調で……っ、こんなに幸せにならるなんて、考へてもいらかった……っ」
最近のアベラルド様は泣き言よりも、“幸せすぎてどうしよう”みたいに泣くことが増えた。それ自体はいいんだけど、やっぱり飲み過ぎは控えて欲しいと思う。
「もう、公爵様は水を飲んで下さい!」
「公爵様?」
「あっ」
まだ名前で呼び始めて時間がそんなに経ってないから、慣れてないんだよね。時々、こうやって「公爵様」と呼んでしまうことも結構ある。
シラフの時は、いつもスルーしてくれるんだけど……。
今のアベラルド様は目に涙を溜めて、こちらを見続けている。水を飲もうとする気配もないし、もしかして呼び直さなければ、納得しないつもりなのかな……?
私はゴホンと咳払いをして、改めて口を開いた。
「あ、アベラルド様……」
「……やっぱり、ジゼルに名前をよんでもらえるの、すきだな」
「〜〜〜っ!」
アベラルド様は飲みすぎると、本音がダダ漏れになってしまうタイプだ。
つまり、今の言葉はアベラルド様の本音。私は照れを隠すように、彼の前に水を置いた。
「飲んで下さい。そして、酔いを覚まして下さいお願いします」
「? わかった」
その後、酔いを覚ましたアベラルド様が恥ずかしさに悶えていたのは、いつものこと。もはや、週末の風物詩だ。そう思うことにしている。
次の日。若干気まずそうにしているアベラルド様と私で、例の領地へと向かった。
朝イチで公爵邸を出たので、若干、眠い。
私が小さくあくびをすると、アベラルド様が首を傾げた。
「眠いか?」
「そうですね。昨日は夜遅くまで起きてましたし、ちょっと眠いです」
絶対に早く寝た方が健康的だと分かっているのに、なぜか週末って夜更かししてしまうんだよね……。
それで、お昼近くまで寝てしまって、「半日が終わってしまった」とちょっぴり後悔するまでがセット。でも、お昼近くまで寝るのも気持ち良くて、毎週同じことをやっちゃうんだよね〜。
「到着するまで寝ててもいいぞ。俺の肩に寄っ掛かるか?」
「本当ですか? それなら、少しだけ」
私は遠慮なくアベラルド様の肩に寄りかかって、目を閉じた。温かくて、安心するな。
私は彼の隣で、ぐっすり眠ってしまった。
しばらくして、アベラルド様に起こされた。
「ジゼル、起きてくれ。領民達が……」
「……?」
アベラルド様の言葉に目を開く。いつの間にか馬車が止まっていた。私は目をこすりながら、隣にいるアベラルド様に尋ねた。
「何かあったんですか?」
「目的地に着いたんだが、領民達が馬車の前に集まっていてな。少し焦っているように見える」
「なるほど?」
「大丈夫か? さっきまで寝ていたが、領民達の前に出れるか?」
「大丈夫です! しっかり目が覚めてますよ」
アベラルド様は心配そうにしているけれど、問題はない。寝ていたのは少しの間だけだったし、頭もスッキリしている。
私はすぐに馬車を降りた。すると、すぐに領民達が駆け寄って来た。
「どうしたんですか?」
「ジゼル様、結界の檻に……!」
「何か問題がありましたか?」
「いえ、とにかく来ていただけますか?」
領民の言葉に頷いて、彼らに着いて行く。すると、私の作った光の檻が見えてきた。
その光の檻に捕らわれていたのは……。
え、まさか人間の女の子⁈




