第23話 コンビニお手軽おつまみセット
次の日から、早速、隣国の国王夫妻歓迎の料理を作るための準備に取り掛かることとなった。
初日は、一緒に料理を作る王城の料理人さん達との顔合わせ兼打ち合わせである。ちなみに、そこには殿下も同行してくれた。
まずは、一人一人が簡単に自己紹介をするところから始めることになった。
さっそく一人の料理人さんが立ち上がって、口を開く。
「ジゼル様のサポートをさせていただきます、エリックと申します」
彼に続くように、他の料理人さん達も次々に立ち上がって、自己紹介を始めた。
「トーマスと申します! 今日からよろしくお願いします!」
「ジョージです。噂の聖女様とお仕事ができて嬉しいです。よろしくお願いします」
「ジゼルと申します。新参者ですので、色々と教えていただくことも多いかと思います。お世話になりますが、今日からよろしくお願いします」
全員の自己紹介を終えて、すぐに殿下が口を開いた。
「ジゼル。それから、料理案は思い付いたか?」
「はい。いくつか候補を作ったので、皆さんにも見ていただきたいと思います」
私は昨日のうちに、考えた料理案を資料にまとめておいたので、それを全員に渡した。
ちなみに資料には、「巻き寿司……生魚やキュウリや卵を酢飯と海苔で巻いたもの。酢飯と魚の爽やかな味わいと食べ応え抜群の一品」などと説明も一緒に書かれている。
資料を見た殿下は「ふむ」と頷く。
「説明だけでは味が想像しにくい部分はあるが……料理として見た目が華やかなものの方が分かりやすくて好ましいんじゃないか?」
「なるほど。それなら、プラン1の……」
こんな感じで、私達は長時間に渡って話し合った。しばらく時間が経つと、誰かのお腹が「ぐぅ〜」と鳴った。
目線を上げると、お腹を押さえて恥ずかしそうにしているトーマスさんの姿があった。
「す、すみません!」
「いや、気にするな。そろそろ何か食べてもいいかもしれないな……」
殿下が「ふむ」と考え込む。そこで、私はすかさず手を挙げた。
「あの! もしよかったら、つまめるものがありますので、持ってきてもいいですか?」
「おお、それなら、ありがたいな」
私は王城で暮らせるように与えられた一室に行って、「とあるおつまみ」を持って、皆がいる部屋に戻った。
「持ってきました! おつまみセットです!」
私が持ってきた品々に一同、首を傾げる。
「……これは、どういうものなんだ?」
「柿ピーとさきいかとビーフジャーキーです!」
「……?」
実は、公爵様との帰り道などで、話しながらつまむつもりで作っておいたものだった。
前々から「食べたい」と思って研究していて、持ってきておいたのである。
今回はコンビニで手に入りそうだな〜というものをセットにしてみた。名付けて、「コンビニお手軽おつまみセット」である。
「柿ピーは、ピーナッツと米を使ったスナック菓子で、さきいかはイカを乾燥させて作ったものです。それから、ビーフジャーキーは牛もも肉を味付けして水分をふき取ってから乾燥するまで焼いたものになります」
「……」
「私一人で作るのは大変だったんですけど……。お手軽に食べることが出来て、お酒のおつまみとして一般家庭に人気の食べ物ですね。話し合いながら食べることも出来ますし……殿下もいかがですか?」
そう締めくくると、殿下は目を丸くした。そして。
「ふっ……はははは!」
殿下は爆笑し始めてしまった。
「私に庶民の食べ物を勧めるとは……っ。君は、本当に面白いな」
「す、すみません」
「いや、面白いから、そのままでいてくれ。せっかくだし、食べようか」
殿下の言葉に、皆でおつまみを食べることになった。
「うお、なんだこれ! しょっぱくて美味しいですよ、ジゼル様!」
「うわぁ〜、これは酒が進みそうですね……!」
「実はお酒も持ってきたんですよね。飲んでもいいですか……?」
恐る恐る聞くと、殿下は頷いた。
「いいじゃないか。景気づけに、皆で飲もうか」
殿下の言葉に、皆が盛り上がる。皆で私が持ってきておいた日本酒を飲み始める。
「柿ピー、このおつまみで永遠に飲むことが出来ますね……!」
「魚を乾燥させるなんて、初めて聞きましたけど……。さきいか、中々美味しいですね」
「ビーフジャーキーも味が沁み込んでいて、美味しいですよ! 噛めば噛むほど、深い味わいが出ますねぇ」
「私はさきいかが好きだな。新しくて、興味深い……」
皆が口々におつまみの感想を述べてくれる。その中でジョージさんが感動的に呟く。
「噂に聞いていたジゼル様の料理……。実食が出来て光栄ですよ」
「あはは、ありがとうございます。とりあえず会議の方も続けましょう」
「はい! そうですね!」
その後は和気藹々とした雰囲気で、会議を続けることが出来た。皆で飲むことを許可してくれた殿下に感謝だ。
そして、今後の方針を決めて、私達は本格的に準備を始めたのだった。




