番外編 レンドールの苦労(最後にお知らせあり)
両思い後の時系列です!
僕の名前はレンドール。イーサン公爵家で、公爵家当主であるアベラルド様の従者をしている。
従者の一日は夜明け前から始まる。
朝、まだ日が昇っていない時間から馬の世話をしに馬小屋へ行く。一通りの世話が終わったら、公爵様を起こしに、公爵様の部屋へ。
公爵様を起こしたら、身支度を整える手伝いをして、その日のスケジュールを伝える。
その後、公爵様が出かける時はその付き添いをし、出かけない時は公爵様の部屋で執務の手伝いをする。
大体昼過ぎに昼食の配膳を行い、公爵様の食事が終わったら僕も昼休憩をもらう。(たまに公爵様に誘われて、昼食を一緒に取ることも)
その後は少し時間が空くので、公爵邸に住む大人たちから勉強を教えてもらったり、公爵様から直々に剣の指導をしてもらったりする。
夕方に再び厩舎の確認をし、夜に公爵様の食事の配膳をしたら、僕の一日の仕事が終了する。
合間に来客の対応や公爵家へ届けられた手紙の確認などもするけれど、一日の流れは大体こんな感じ。
僕の年齢も考慮して、公爵様は早めに僕を下がらせてくれるので、夜は暇な時間も多い。
僕は、その時間にお気に入りの銘柄の紅茶を入れて、夜の時間を満喫することにしている。
「ふぅ。今日も疲れましたね」
紅茶を飲んで、ほっと息を吐く。
しかし、最近は週末のその時間に「とある仕事」が舞い込んでくることもあって……。
コンコン、と控えめに扉がノックされる音が響いた。僕はため息を吐いて、扉を開ける。その先にいたのは。
「ごめんね、レンドール君……」
「またですか」
「うん。またです」
扉の先にいたのは、ジゼル様。彼女は申し訳なさそうに眉を下げて、手を合わせている。
彼女に手招きされて向かった先には、案の定、酔い潰れた公爵様がいた。
僕は公爵様のことを心の底から尊敬しているけれど、毎回のごとく酔い潰れるのだけは本当に理解できない。
リーリエ姉さんは、「大人には潰れるほど飲みたい夜があるのだよ」と言われたけど、正直意味が分からない。あと、普通に子供扱いはやめて欲しい。
「本当にごめんね。私だと体格差があって公爵様のこと運べないから……」
「大丈夫ですけど、いい加減学んで下さい。この人に飲ませすぎてはいけないって」
「思い出したら言うようにしてるんだけどね……。私もどんどん楽しくなってきちゃうと、ついね……」
まったく、仕方がない人たちだ。
僕は公爵様の肩に手を回す。ジゼル様に見送られて、すぐに晩酌部屋から公爵様の部屋へと向かった。
「うぅ……」
途中で、公爵様が目を覚ましたようでうめき声を上げた。
「大丈夫ですか? 一人で歩けますか?」
「ジゼルが……」
「ジゼル様がどうされたんですか?」
僕が聞き返すと、公爵様は悩ましげに眉を寄せつつ口を開いた。
「ジゼルがかわいい」
「は?」
「前々から可愛いとは思っていたが、両思いになってからは特にそう感じるのはなんでだろうな。楽しそうに笑うところとか、仕草とか、ふとした時の視線とかが全部特別に見えて……」
「一旦、落ち着きましょうか。そして、それを聞かされる僕の気持ちを考えて下さいます?」
急に饒舌に話し始める公爵様。この人、本当に酔ってるな。
「ほら、早く歩いて下さい」
「うぅ、迷惑かけて本当にすまない……っ」
「そう思ってるなら、もう少し飲み方を考えて下さい」
そう言って、なんとか公爵様を部屋へと運んだ。ベッドに入った公爵様は、気持ちよさそうに寝息を立てている。
まったく。本当に仕方のない人だ。
僕は公爵様の様子をしばらく観察してから、安全を確認して自分の部屋へと戻って行った。
すると、その途中で晩酌の後片付けをしているジゼル様とすれ違った。
「あ、レンドール君。本当にごめんね。運んでくれてありがとう」
「いえ、これも仕事のうちですから」
そう言うと、ジゼル様はキョロキョロと周りを見渡してから、コソッと僕に囁いた。
「公爵様って、可愛いよね」
「は?」
「最近、今まで以上に酔って泣いてるところが可愛く見えて仕方ないんだ。なんでだろうね」
「……なんでかは知りませんけど、お二人って本当にお似合いですよね」
「え、本当に? 照れるな」
「褒めてませんよ」
さてはジゼル様も酔ってるな?
似たもの同士の二人に、僕はため息を吐く。まったく、こっちの苦労も考えて欲しいものだ。
……まあ、そんな風にお互いを大切にしているお二人だからこそ、彼らに仕えることが僕の喜びだったりもするけれど……。
それは伝えなくてもいいことだろう。
さて、さっさと部屋に戻って紅茶でも淹れなおそう。明日の主人の予定でも考えながら。
お知らせ
この度、「聖女と公爵様の晩酌」2巻の発売が決定いたしました〜〜!!!
刊行予定は7月で、6月末からWEB連載も再開予定です╰(*´ ︶ `*)╯♡(連載再開まで番外編なども投稿させていただくと思います)
書籍でもWEBでも、再び皆さまとお会いできることが本当に嬉しいです(*´ ∀`*)♪
2巻を発売することが出来るのは、読者の皆さまが応援して下さったおかげです。この場をお借りしてお礼申し上げます。本当にありがとうございます!
それでは、再び動き始める「聖女晩酌」をよろしくお願いします〜!




