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第9話 「またね」



「ルル!」


 ルルちゃんによく似た男性が駆け寄ってきた。彼の姿を見て、ルルちゃんが目を輝かせる。


「おとうさん!」


 ルルちゃんはそのままその男性に飛びつき、わんわんと泣き始めた。


「おと……っ、会いたかった……っあいたかったよぉぉ……っ」


 お父さんと離れ離れになって、本当は怖かったし、寂しかったよね……。本当に再会できて、よかった。


 一旦出店の人たちに声をかけてから、私達は人通りのない場所へと移動した。ちなみに、イアン様もついて来ている。


 ルルちゃんから事情を聞いたお父さんが、私達と向かい合う。


「ルルを保護していただいたようで、ありがとうございます。ずっと探していたのですが、ルルを見つけることができなくて……」

「公爵領内の宿泊施設にルルちゃんを預かっていると周知していたのですが、気づきませんでしたか?」

「そうなのですか⁈ 実は、私達は宿泊施設には泊まっていなくて……」

「え?」

「獣人族って、動物に化けられるので、たぬきの姿で野宿してたんです」

「えぇぇぇぇ!」


 どうりで宿泊施設に聞き込みしても見つからないわけだ。ルルちゃんにもっと詳しく事情を聞いておけばよかった。


「慣れない道のりにルルから目を離してしまい……気づいたら、ルルがいなくなってました。本当にルルに何かあったらと怖かったので、助かりました」

「公爵領には、初めて来られたんですか?」

「はい。ルルが気になると言っていたので、連れて来ました。この子は本当にいい子で、わがままが少なくて……だから、たまの願いくらい叶えてあげたかったのです。なのに、こんなことになってしまって……」


 お父さんは「すみませんでした」と頭を下げる。


「ルルも……辛い思いさせて、ごめんな。お父さんが目を離してしまったせいで」

「ううん、ルルも勝手に離れてごめんなさい。それに、辛い思いはしてないよ。ジゼルちゃんたちと一緒にいれて、楽しかったから!」

「ルルちゃん……」


 ルルちゃんの言葉にじーんと嬉しくなる。


 けれど、彼女の父親が見つかったということは、お別れの時間が近づいているということだ。


 私は、ルルちゃんの前にしゃがみ込んだ。


「ルルちゃん……えっと、」


 言葉が続かない。ルルちゃんとの別れが悲しくて、何と言うのが正解なのか分からないのだ。


 そんな私の頭を、ルルちゃんがそっと撫で始めた。


「ルルちゃん……?」

「ジゼルちゃん。大丈夫だよ。また絶対に会えるよ」


 ルルちゃんは、にこっと笑った。


「今日、ジゼルちゃんに会いに来た人がたくさんいたよね? みんなジゼルちゃんと一緒にいて楽しかったから、会いに来たんだよ。ジゼルちゃんが大好きだから、会いに来たんだよ」


 ルルちゃんの言葉にハッとする。


 今日会いに来てくれた人たちは、少ししか関わったことのない人だ。あえて行動しなければ、二度と会えなくてもおかしくない人達。


 それでも、また会うことができた。


 楽しかった思い出がある限り、相手を想い続けている限り、もう一度会うことは不可能じゃないんだ。


「ルルも、ジゼルちゃんに会いに行くよ。だって、ジゼルちゃんのこと大好きだから。……ジゼルちゃんは、ルルこと好きじゃない?」

「好き。大好きだよ、ルルちゃん」


 私はルルちゃんをギュッと抱きしめた。


「だから、また会いたい。絶対に会おうね」

「うん。絶対に会えるよ!」


 私たちの元にアベラルド様がそっと近寄る。


「俺も、ルルに会いたい。いいか?」

「うん! ルル、アーちゃんにも会いたいよ!」

「うん。会おうな、絶対に」


 私達は三人で抱きしめ合った。涙は流さない。


 だって、ルルちゃんと再会の約束をしたから。これは、悲しい別れじゃない。


 一頻り抱きしめ合った後、ルルちゃんはお父さんの元へと戻って行った。


「それでは、ありがとうございました」


 お礼もそこそこに、ルルちゃんのお父さんは、私の手を取った。


 そして、何故か私の指先にキスを落とした。


「⁈」


 思わぬ行動にびっくりしていると、後ろからアベラルド様が私の肩を引いた。


「……俺の妻に何をしているのですか?」

「何って……感謝の意ですが……」


 ルルちゃんのお父さんは、不思議そうな顔をしながら、そのままアベラルド様の指先にもキスを落とした。


 謎行動に混乱していると、ルルちゃんのお父さんが「あ」と何かに気づいたようで焦り始めた。


「すみません。これは獣人族のみの挨拶でしたね。うちでは、感謝している時に指先にキスするのが慣わしでして!」

「あ、あぁ! なるほど!」


 なるほど、文化の違いがあったということかぁ。


 私達が納得していると、純粋なルルちゃんが爆弾発言をした。


「ジゼルちゃんとアーちゃんはね、まだチューしたことないから、びっくりしちゃったんだよ」

「ルルルルルルルちゃん?!?!?!」


 私達の顔が一気に赤くなる。


 そして、隣で私達を見守っていたイアン様は、信じられないものを見るような目をこちらに向けてきた。「まだそこ……?」とでも言いたげだ。


 私達がアタアタしていると、ルルちゃんのお父さんが恐縮しながら口を開いた。


「こら、ルル。プライベートなことを言うものじゃないよ。……すみません。幼いルルに気を遣って、キスしてないと言ったんですよね? ご夫婦なのに、そんなわけないですもんね」


 ルルちゃんのお父さんの悪意なき言葉が、グサグサと刺さる。


 うっ、なんかすみません。なんかすみません。


「それじゃあ、またねー! ジゼルちゃん、アーちゃん!」

「う、うん! またね、ルルちゃん!」


 「また」と言ってくれる言葉が嬉しくて、私は笑顔でルルちゃんとお別れをできたのだった。


 こうして、私達はルルちゃんとお別れをしたんだけど……。


 私達の間に微妙な空気が流れる。


「あー……まあ、俺は先に退散するね」


 イアン様がアベラルド様の肩をポンポンと叩いて、去って行った。


 残されたのは、私とアベラルド様だけだ。


 どうしよう、この空気⁈




明日で最後です!

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