第一話 争いの無い世界を求めて1
火薬の匂い、煙のむせかえる匂い、そして、先ほど敵兵に殺された仲間の血生臭い匂い、ここは地獄以外のなんと呼ぶのか。
私は現在、旅順要塞攻略のため203高地の山を死に物狂いで登って行ってる。
数秒もすれば目の前に見える仲間のように、敵兵の砲撃で肉塊と化すかもしれない、昨日まで家族のことや将来の夢を語り合った仲間が次々と死んでいく。
「っぁあああぁぁあああぁあああああ!!!!!!!」
「死ねっ!! 死ねっ!! 死ねぇぇぇ!!!!!」
殺した、、何も考えず、迷えば殺されるから、
戦場は血の海と化した、
一体何人仲間を失えば!!、一体何人殺せば!!どれだけの屍を築けば!!明日を迎えることができる?
「家に帰りたい、」そう思った時だった、
「機関銃だああぁ!!」
そう味方の声が聞こえた瞬間、右の脇腹あたりを何かが貫いていった。
あぁ、、、撃たれたのか、
徐々に撃たれた箇所が痛く、そして熱くなった、
肝臓をやられた、、、もう助からないだろう、いっぱい殺したのに家に帰りたいなんて虫がよすぎたんだ。
先程までの騒音も段々と聞こえなくなっていき、視界もボケてきた。
(やり直したい、争いのない世界で平和に暮らし直したい。)
、、、、、、、、、、、、。
(チュン、チュンチュン)
?!
なんだ?スズメの囀りのような音が聞こえる。
私は生きているのか?、戦争は?、勝敗は一体どうなったんだ?
そう思いあたりを見回した瞬間、私は状況を理解するのに戸惑った。
全く見覚えのない森の中に放置されていたのだ、
「ここは日本なのか?、それとも露西亜か?」
「それとも、、、、ここが、あの世なのか?」
そう考えていると木々の奥から何か凄まじい雄叫びが聞こえた、
この声を辿っていけば、ここが何処なのかわかるかもしれない!
すぐさま歓声や雄叫びの聞こえる方へ木々をかき分け向かった、そして森を抜けた先で私は目の前に見える情景にまたも驚愕した。
ヒトと獣のような謎の生物達が戦をしていたのだった。
なんなんだ!?私は一体何処にきてしまったというのだ?
いくら世界の情報をあまり知らない私でもこれだけは言える、
ここは私のいた世界では無い!おぞましい化け物の軍勢が、ここが地球では無いという考えを加速させる。その時だった、
「おいっ!貴様そこで何をしている!」
背後から怒号が聞こえたと同時に、声の主が人であることに気づくと安堵し、助けを求めた。
「良かった、いきなり知らない土地で目覚めて、」
「近づくな!」
振り返った瞬間、銀色に鈍く輝く剣先が喉元に突きつけられた、
「な、なにを!?」
急な状況に混乱する私に目の前の男は続けて言った、
「なにを?だと、貴様魔族の分際で俺達を舐めているのか?」
「魔族?、一体何のことを?」
「はっ、そのまま何も分からないフリをし続けておけ、
今殺してやる。」
勢いよく振り下ろされた長剣を私は間一髪で避け、そのまま近くの雑木林へと逃げた、
「魔族が一匹逃げたぞ!、追え!」
日本語が通じたのが幸いだが、肝心な会話が全く成り立たない、とにかく今は彼らから逃げることだけを考えた。
違和感、、、、、、、。
私は必死で逃げた、体がやけに軽いみるみる兵士達と距離を離し、長い雑木林を抜けたその瞬間、ふと足元の感覚が消えた。
「おわっ!?」
雑木林を抜けた先は崖となっておりその下には、川が流れていた、
「あっぶねぇ、、、、。」
間一髪落ちそうになったところを、近くの木の根を掴むことで事なきを得た、だが同時に嫌な考えが脳裏をよぎった
「行き止まりか、」
近くに橋のようなものも見当たらないため、必然的に今逃げてきた道を戻るということになる、そうなれば先ほどの人達に、また遭遇することになる。
「何もわからずに、死んでたまるか、」
俺は戦うことを決心した。