1日目朝の会議
「私は、佐知さん白。」
敦が、真っ先に言う。
続いて永宗が言った。
「オレは聖子ちゃん白。」
冴子が、戸惑いながら言った。
「私は久子さん白。」
氷雨が、言った。
「オレは芽依さん白。」
…襲撃された先がお告げって、怪しまれないか?
久司は、いくらでも別の所に白を出せたのに、それをしなかった敦に眉を寄せた。
すると、正高が言った。
「…うーん、占い師は二人だろ?こうなって来ると、白先精査とかになるんだろうが、今のところ襲撃された佐知さんに白を重ねてる敦が一人、飛び抜けて怪しく感じるな。」
オレもそう思った。
久司は思った。
そして自分は、正高に意見を合わせろと言われている。
なので、言った。
「オレもそう思った。他はわからないけど、佐知さんに白ってなんか人外っぽいよね。」
たが、拓也が言う。
「でもさ、そんなの分かってることだろ?人外だったら逆に他の所に白出して、白稼ぎしようと思うもんじゃないか。そこに白だったから、そう言うよりなかったんだとオレは逆に白く感じたけどな。」
案外、上手いこと言う。
久司は、拓也が怪しまれると言っていたのが嘘なんじゃないかと思った。
徳光が、顔をしかめて自分が書いた結果を睨んだ。
「そうだなあ…オレ的には拓也の意見の方かな。人外だったらどこにでも白は出せるし、わざわざ怪しまれる位置に白を出す必要はない。少なくとも囲ってはいないってことになるしな。」
ふーん、そうなんだ。
久司は、思って聞いていたが、黙っていた。
すると、敦が言った。
「私は拓也が言ったように、そこに白が出ていたのでそう言うよりなかっただけ。それをどう感じるかは君達次第だ。今日はグレー詰めか?占い師を吊るつもりはないんだろう。」
徳光は、首を振った。
「占い師はギリギリまでこのまま行くつもりだよ。今、グレーは…ええっと、何人になる?」
敦は、ため息をついた。
「ならば私が整理しよう。今朝は一人減って17人、吊り縄は残り8本だ。人外は恐らく、佐知さんが狂人か背徳者でなかったなら全生存なので7人。占い師に4人出て、徳光がパン屋なので残り12人。その中で白先が3つ生存しているので、グレーは9人。ここに、猫又、狩人、霊能者2人が混じっているので、実質グレーは5人にまで絞れることになる。騙りが出たらもっと減る。もちろん、佐知さんが役職でなく、尚且つ白先に囲われていなければの話だがね。しかし、その5人の中に確実に人外は居ることになる。」
めっちゃ分かりやすい。
分かりやすいが、そんなに村人目線をクリアにして良いのだろうか。
久司はハラハラしていたが、顔には出さなかった。
徳光が、感心したように言った。
「さすがだな。凄く分かりやすい。ということは、占い師に人外が確実に2人居て、グレー5人が全部残りの人外ってこともあり得るわけだ。」
敦は、頷いた。
「まあ、その通りだが囲っていないとは思わないがね。それに、猫又や狩人を出すわけには行かないだろう。特に猫又は、吊ってしまうとどこを持って行かれるかわからない。良いのか。」
良いわけはない。
こちらからしても、偶然狼を連れて行かれてはたまったものではないのだ。
徳光は、顔をまたしかめた。
「確かにな。じゃあとにかく、霊能者だけでも出そう。2人居るはずだ。3、2、1、」
「「はい!」」
きっちり2人の声と、手が上がった。
…佐知さんは役職じゃなかったのか…?それとも、狂人?
久司は内心落胆した。
手を挙げている、武が同じく手を挙げている久子を見た。
「なんだ久子さんが相方だったのか。良かった、確定だな。」
久子は、頷いた。
「武さんだったのね。私も昨日から、誰だろうって思っていたの。」
舞が、2人に挟まれて何やらバツが悪そうな顔をしている。
正高が、言った。
「お、舞ちゃんは何かあるか?」
舞は、え、と慌てて首を振った。
「え、いえ。なんか、武さんが昨日から誰だ誰だって言ってたから…久子さんだったんだなって。」
武は、舞に明かしていたのだ。
徳光は、眉を寄せた。
「COするなって言ったじゃないか。彼女だって人外かもしれないのに。」
武は、急いで言った。
「いや、舞は信用できると思ったから!ほら、それなら昨日の夜はオレ襲撃だったはずだろ?でも、佐知さんだったんだから舞は白い!証明できたじゃないか。」
光晴が、言った。
「…でもさ、それなら佐知さんは?」え、と皆が光晴を見る。光晴は続けた。「噛まれてるじゃないか。グレー吊りだと言われてるのに、人外が霊能者の騙りに出ないのはおかしいだろ。もしかしたら辰巳が狼で、佐知さんが真霊能者だって知ってたんじゃないのか。だから噛んだ。今ので武か久子さんが狂人とか、あり得ると思うぞ。」
皆の視線が一気に辰巳に集まる。
辰巳は、慌てて言った。
「なんでオレが佐知を襲うんだよ!だったら朝からそんなに怒ったりしないっての!オレは村人だ!素村なんだよ、お互いに役職なんか話してない!」
喜美彦が、真面目な顔で言った。
「…そう言われると、朝のあれも芝居臭く思えて来たぞ。死んでもないのにどうしてあんなに怒るんだよ。自分が噛んだんじゃないってアピールしたかったようにも思えて来たぞ。」
敦が、フッと肩で息をついた。
「…何にしろ、佐知さんが狂人だった可能性もあるし、辰巳をそこまで怪しいとは私は思わないが、しかし初日は役職を吊らなければ良いと私は思っている。狩人も、猫又もまだ出すべきではないしな。今、辰巳は役職がないことを皆に露呈させた。ならば辰巳でも良いかと、今の時点では思ってしまうな。」
パン屋にだけ、役職を明かすように提案するとか言ってなかったか。
久司は思ったが、まだ誰もその方法に気付いていないようなので、ここは黙っていた。
それにしても、僅かなことで怪しまれるのだ。
久司は、本当に気をつけなければ、と、思って聞いていた。
「…でも、昨日永宗さんだって明かしてたよね。」冴子が、口を開いた。皆が冴子を見る。冴子は続けた。「私は自分が占い師だったし、絶対知られちゃダメだって必死だったんだけど、みんなが居るところで言ったのよ。なのに噛まれてない。ということは、あの時あの場に居た人達ってみんな白く見えるわ。それとも、永宗さんが人外で、噛めなかったとかかしら。」
永宗が、う、と言葉に詰まる。
徳光は、知らなかったことなので一気に険しい顔をした。
「なんだって?みんなの前でか?」
それには、正高がため息をついて答えた。
「そう。どこで人外が効いてるかわからないから、言わなかったけど、9人居たな。女子達は佐知ちゃんと舞ちゃん以外の全員。男はオレ、久司、敦、拓也がそこに居た。あの中に人外がいないってなるとかなり怪しいから、そうなると噛めなかったが正解かな。」
氷雨が、眉を寄せて言った。
「…ってことは永宗は狼で、聖子ちゃんを囲ってるとかあり得るのか?」
情報が錯綜している。
狼から見たらどれも濡れ衣なのだが、有り難い話だった。
ここらで意見を落としておこうと、久司は言った。
「…どうする?霊能者は2人居る。今夜誰か吊ったらどっちが噛まれたとしても結果は残る。誰かの白先を吊るってことは、その占い師の真を切るってことになるけど。オレはまだ早いと思うから、オレも含めたグレーの話を聞いて、そこから吊るべきだと思うけどな。今霊能者が出てくれたから、グレーは7人まで絞られたんだろ?」
敦が、首を振った。
「いや、冴子さんの白先が霊能者に当たっているので、まだ8人。喜美彦、久司、真智子さん、正高、舞さん、拓也、光晴、辰巳。猫又と狩人がこの中に居るとなると、やはりそこだけは避けたいので君の言うように、しっかり話は聞いておきたいな。占い先のこともあるし。」
徳光が、言った。
「じゃあ、順番に話を聞いて行こうか。まずは、喜美彦から何かあったら頼む。」
喜美彦は、渋い顔をしたが頷いて、口を開いた。