振り返り
正高が、言った。
「まず、狼は敦、オレ、久司、拓也の4人だった。狂人はわからない。なので、とりあえず敦が占い師に出て、久司は猫又、拓也は狩人に出られるように準備はしていた。後は状況を見て判断しようということになったんだ。」
永宗が、言った。
「オレは狂人だった。狼位置が全くわからないし、敦さんが真だと開示されるまで思っていた。」
冴子が、言った。
「私が真占い師。だから、氷雨さんが相方だったのよ。」
氷雨は、頷く。
「そう。噛まれて四階に行ってなんでオレなんだと思ったな。さては狂人か背徳が誰か囲って狼目線で真が確定してたのかって思ったよ。」
武が、ため息をついた。
「オレが霊能者。相方は佐知ちゃんだった。」
久子が、言った。
「私は妖狐。背徳者は舞ちゃんよ。本当は占い師に出ようかと思ったんだけどね。なんか4人居た時点で出そびれちゃって、白が上手く占い師のお告げに当たって出てたから、仮に冴子さんが偽でもラッキーだって思って出たの。ローラーされるかもだけど、占い師なら相互占いされても霊能者ならそれがないわ。何とかローラー回避できたら、生き残れると賭けに出たの。結果、確定した時はホントに嬉しかった。もう勝った気持ちで居たわ。甘かったけどね。」
舞ちゃんが背徳者だったのか。
久司は、納得した。
思えば久子は、舞のことを庇っていたのだ。
結局、切るしかない状況になったので、切ってしまったのだろう。
舞が、言った。
「いきなり吊られるのはって、あの時騙ってしまったけど、武さんが後からフォローしてやるからって、次の日撤回するつもりでCOしたのは本当よ。でも、武さんが噛まれてしまって…私、本当に困ってしまって。」
武は、顔をしかめた。
「背徳なんて思わなかったし。次の日、オレは確定霊能者の一人だったから、撤回してもオレの指示だったっていえば何とかなると思ったんだ。まあ、オレは噛まれて正解だったかもな。最後まで庇ってしまっただろうから。」
舞は、武を見た。
「あのままだったら耐えきれずにきっと私は、打ち明けてしまったと思う。武さんに信じられるのって、とてもつらかったから。騙してるのは、心苦しかったもの。」
久司は、言った。
「それで、真狩人は芽依ちゃんだよね。猫又は光晴。パン屋は徳光さんだ。」
芽依は、頷く。
「そうよ。襲撃されて四階で真実を知った時には絶望したわ。でも、まだ勝てるって思ってた。その後、もう治ってるからゲームの勝敗は関係ないって聞かされて、安心して見てられたんだけどね。」
徳光は、言った。
「狼目線の話が聞きたいんだ。氷雨を噛んだのはなぜ?」
正高が、答えた。
「護衛が入ってなさそうだからだ。あの朝、永宗がオレに白を打ったから永宗偽は確定し、狼目線じゃあ真占い師は確定していた。護衛のない所、しかも占い師を抜くのが目的だ。それが漂白なのか真だからなのか、村人にはわからねぇだろう。ちなみに武を噛んだのは、久子さんが偽だと分かったからだ。その日、前日に追放された真智子さんに黒を出したことから、狼目線武と佐知さんで霊能者は確定していた。ただ、久子さんと永宗の中身まではわからない。狂人なのか背徳なのか、はたまた狐なのかってな。永宗が次の日喜美彦に黒を打ったのも、背徳者か狐なら思いきったなと思った。それでもまだわからないから、永宗には声を掛けていなかった。」
永宗は、顔をしかめた。
「オレはめっちゃ困ってた。誰が狼なのか全くわからないし、冴子さんと話す機会が多くて真っぽいなと思ったから、その白先に黒打ってたら問題ないだろって思って。でも後から誤爆したかもって悩んだよ。敦さんと対立し始めたからね。まさか正高が狼で、囲えてるなんて思ってもなくて。」
光晴が、言った。
「久司がオレを庇ってると思ったのは、猫又を騙るかもしれないから布石を打ってたのを誤解したからだったのか。でも結局騙らなかったな。」
久司は、頷く。
「敦さんが騙るなって言ったから。オレもその方がいいと思った。猫又を確定させたら最後まで残ることになるから、それだったら光晴の心象を良くして最終日生き残ることに賭けてたんだ。狩人まで確定させるわけにはいかなかったから、まだ芽依ちゃんが人外に見えるように拓也は騙りに出た。拓也が吊られても、芽依ちゃんを噛まずに置いてたらそのうちに人外を疑われるだろうし、SG位置にできるだろうって。正高が狐容疑で吊られたのは誤算だったけど。」
正高は、苦笑した。
「まあ、あのままじゃ一方的だったし、吊られてもいいかと思ってた。オレは別に命が懸かってないのは知ってたしなあ。その方がゲームがおもしろくなるだろ?敦はチート級に頭がいいからな。村人は気の毒だと思ってたんだよ。」
留学しまくりの医者だもんな。
久司は、思って聞いていた。
すると、背後から声がした。
「あれでも一応、君たちの考えで動かせばと意見を尊重していたつもりだがね。」
振り返ると、そこには敦と、髪も肌もまるで人形のようにツヤツヤの女性が立っていた。
「敦さん!戻って来たんですか。」
敦は、頷く。
「最後まできちんと話さなければと妻が言うから。」と、隣りの女性を見た。「紫貴。私の妻だ。」
これが。
皆が、まじまじと紫貴を見つめる。
紫貴は、居心地悪そうな顔をしたが、言った。
「主人がお世話になりました。途中ゲームを放り出そうとして…ご迷惑をお掛けしてしまいましたわ。久司さんには、ご無理を言って。」
何やら品がいい。
なんと言うか、顔立ちが飛び抜けて美しいというのではないのに、髪と肌が整っている上に、雰囲気がおっとりとしていて、包み込むような癒しを感じる話し方だった。
久司は、顔を赤くした。
「え、ええっと…いえ、こちらの方こそお世話になりっぱなしで。」
正高が、からかうように言った。
「なんだよ、顔が赤いぞ?綺麗な人だろ、紫貴さんは。別に上流階級とかでもないのに品がいいからなあ。」
敦が、眉を寄せた。
「お前が言うな、博正。身内でもないクセに。」
博正とは誰だろう。
久司も皆も思っていると、紫貴が咎めるように言った。
「まあ彰さん、もう身内のようなものだと仰ってましたのに。いつもお世話になっているのに、そんな言い方はいけませんわ。」
ん?彰?
皆が混乱していると、正高が言った。
「こら、みんな混乱してるだろうが。まあ、オレ達は偽名使ってたの。ホントに居る患者のカルテを使ってここに来たから。まあ、名前だけ借りても誰も気付かないとは思ったけどよ、側で見守るためには同じ患者の方がみんな構えないと思ってね。だからオレは博正で、敦は彰。そう変わらねぇだろ?どっちでもいいよ。」
良くない。
久司は思ったが、光晴が言った。
「偽名か。さっきモニターからも敦さんをジョンって呼んでたから、なんでだろとは思ってた。いろんな名前があるんだなって。」
正高は、答えた。
「ああ、うちの病院の医師って外国人ばっかだから、外国人名ってのもあるやつ居るからな。彰は面倒だからジョンって簡単に考えた名前なんだよ。呼びやすいだろ?」
そんなものなのか。
敦が、割り込んだ。
「博正。」
正高は、言われて少し、やっちまった感のある顔をした。
「ああ、分かってる。何でもペラペラ言うなってか。ま、そんなとこだ。」
敦が、言った。
「まあ、これでお開きだ。積もる話はまだまだここで療養するんだし、その時にするがいい。君達は食事をして、しっかり寝て体を動かすのがこれからの仕事だ。もう9時も近い、続きは明日にするといい。体を休めよう。」
医者の言うことには逆らえない。
まだまだ話し足りなかったが、皆は仕方なくそれで会話を終えて、それぞれの部屋へと戻って行ったのだった。




