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六日目の投票と夜時間

もう、終盤だ。

投票は、全て冴子に集まり、喜美彦でさえも冴子吊りを手助けする形になった。

そして、冴子は皆を睨んだまま、瞼を閉じることなく、追放されて行った。

敦が、何も映さない瞳を虚空に向けている、冴子を見下ろして、言った。

「…これで1狼。パワープレイもなく、庇う票もなかったことから、潜んでいる狼は分かっていて身内を切っている。もし、芽依さんが偽で今夜私が襲撃されたら、明日は芽依さんを吊って欲しい。そして、残りの狼は喜美彦しかないだろう。私は今夜、喜美彦を占う。白なら残して芽依さん吊り、黒なら喜美彦を吊って、終わらなければ芽依さんで終わりということだ。もう、盤面は確定している。」

光晴は、頷く。

「敦さんが噛まれたら、喜美彦は黒だと思う。どちらにしろ、喜美彦、芽依ちゃんの吊りきりで終わりだろう。村は満場一致で敦さん真進行に決めたんだ。どう転んでも、恨みっこナシだな。」

敦さんが噛まれることはないけどね。

久司は、思った。

ここまで来て自噛みはしないだろう。

とはいえ、敦がどう考えるのか分からない。

自噛みしても護衛成功が出て芽依の真が確定するだけなのだし、今何のメリットもないのだ。

数を減らすことが重要だった。

何しろ偶数進行なのだ。

しかし、徳光は投票結果を睨んで何やら、険しい顔をしていた。

久司は気になったが、しかし何も聞かずに、先にリビングを後にしたのだった。


もう、ここまで来れば作業ゲーだ。

そんなわけで、久司もあまり構えないままで、敦と対面し、リビングへと降りた。

リビングには、やはりもう冴子は居なかった。

医師達が、冴子を連れて行ったのだろう。

ソファに座ると、敦は言った。

「明日は厳しいことになるかも知れない。」

久司は、意外なことにえ、と思わず声を上げた。

「え、どうしてですか?今夜徳光さんを噛んで、6人になって…喜美彦を吊って芽依ちゃんを噛んだら終わりでしょう。」

しかし、敦は首を振った。

「徳光が気付いていた。この噛みをした弊害は、私が昨日言った事だけではなく、冴子さんにとってあまりにも不利過ぎることなのだ。その上、投票結果が問題だ。昨日、喜美彦と冴子さんが狼なら、この噛みをしたなら芽依さんを吊り推さねばならなかった。だが、2人は芽依さん吊りには言及せず、久司と私を吊ることに発言の大部分を使っていた。そして、占い師のランになることが決まってからも、喜美彦は冴子さんを庇うことなく、守らなかった。つまり、狼は自滅の道を自ら歩いていることになるのだ。」

久司は、わけが分からず言った。

「え、どういうこと?」

敦は、息をついた。

「冴子さんが狼ならば、私は真占い師だろう。その占い師を残して仲間の喜美彦を占わせるなど、吊ってくれと言っているようなものだ。昨日は何としても村を説得して、私を吊らねばならなかったのだ。」

久司は、反論した。

「でも!喜美彦が敦さんに媚びて生き残ろうと考えたってことにしたらどうなんですか?そう見えるでしょう?」

敦は、首を振った。

「だから、いくら媚びようと明日には黒結果が出て吊られるわけだろう。今さらなのだよ。それは序盤だからこそ使えることで、もう私のグレーなど芽依さんと喜美彦しか居らず、役職の芽依さんより必ず喜美彦を占うことは分かっていたはずだ。それなのに、媚びてどうする?占われなくても芽依さん白なら結局喜美彦吊りなのだ。明日は6人、残りの吊り縄は2本。縄が足りることは狼目線でも分かっている。昨日冴子さんを吊られたらもう勝負はついたようなものだ。狼は、何としても私を吊ろうと必死にならねばならなかった。なのに、身内切り投票までしているなど、不自然極まりない。こうなった後、狼が勝つためには、私を噛んで私からの喜美彦の結果を分からないようにして、君とのランに勝つこと。それとも、敢えて黒結果を落とさせて私と久司、そして喜美彦の信用勝負に持ち込むしかない。村にはまだ、選択する機会がある。私まで吊り切って、君と喜美彦の二択の最終日まで持っていくということだ。」

敦を吊る…。

久司は、首を振った。

「そんな!今夜徳光さんを噛んだら光晴、聖子さん、喜美彦、オレ、敦さん、芽依ちゃんの6人になるんですよね?それで敦さんが吊られたら、その夜芽依ちゃんを噛んで…次の日、喜美彦、オレ、光晴、聖子さん?そこで喜美彦を吊らないと、村に負ける?」

敦は、頷いた。

「そういうことだ。」と、ため息をついた。「君は先に部屋へ戻ったから知らないだろうが、徳光は念のため護衛先を敢えて私から外そうと言って、芽依さんに他からどこでも良いので守れと言いおいていた。冴子さんのグレーは聖子さんだけだったし、冴子さんを吊った以上、私以外の所を守ってもらいたいと念を押していた。つまり、もし私が狼だった場合に備えているのだ。私が真なら、狼は必ず私を襲撃する。無駄だと分かっていても、冴子さんが居なくなったのだからそれが一番良いだろうと徳光は言っていた。私は敢えて残して縄を使わせる方に持っていくのではと言ったのだが、徳光はそれならそれで良いと言った。また明日から村人が考えることだと言うのだ。その通りだし、それ以上は何も言わなかった。つまり、今夜の選択肢は二つ。私を自噛みするか、徳光を噛むか。仮にそれでも芽依さんが私を守っていて護衛成功が出ても7人、縄が増えて私を吊る余裕ができるので、恐らく明日は私を吊ろうと考えるだろう。その後、芽依さんを噛んで5人、君と喜美彦で君が競り買ったとしても4人、徳光を噛んで君、聖子さん、光晴の3人。恐らく聖子さんではなく君が吊られる。縄は増えたらまずいことになる。」

勝てない…。

ということは、必ず今夜は二択なら徳光だ。

徳光には昨日護衛が入っていて、連続護衛できないので護衛成功は出ず、縄は減り続ける。

もし芽依が徳光に逆らって敦を守っていたら、護衛成功が出て縄が増えてしまい、結局とりあえず敦が吊られる未来が見える。

だが、敦をだから真だと推せば…?

芽依も、徳光に逆らってまで護衛成功が出たら、敦を守ろうとするだろう。

仮に敦が明日吊られることになっても、最終日久司が喜美彦に競り勝てば、芽依噛みでゲームは終わる。

ここで護衛成功は出すわけには行かないのだ。

「…敦さんは、明日吊られるつもりですか?」

敦は、頷いた。

「そのつもりだ。一応吊られなさそうなら残る意見を出すつもりだが、しかし恐らく徳光の遺言を、光晴は聞いているだろうし、確実に最終日まで行けるようにと考えるはず。とはいえ、冴子さんが言うように私、君、聖子さんが狼なら、今夜徳光噛みでゲームは終わる。それがないのだから、狼ではないと主張はできる。私は村の意見に逆らわない方向で発言するので、君がそれを弁明に使うといい。ゲームが終わっていないのだから、自分達は狼ではないと。私は最後まで真らしくなければならないのだよ。そうでなければ、君が吊られる。村のためにと吊りを飲む。君は、明後日必ず自分の命のために喜美彦に勝つのだ。」

敦が居なくなる。

たった一人にされてしまうのだ。

だが、やらねばならなかった。

すっかり忘れていたが、自分は末期ガン患者で、本来こんなに元気ではないのだ。

自分と狼達のためにも、勝たねばならないのだ。

「…敦さんが吊られたら、その夜芽依さん噛み。次の日喜美彦にオレが勝てば良いんだね。聖子さんと、光晴の票を回収して。」

敦は、頷いた。

「その通りだ。君ならできる。大丈夫、そのために聖子さんに白を打ち、君は初日に光晴の信頼を得たんだ。道はある。君有利で。」

久司は頷いて、一人になる不安と、ここまで支えて来てくれた敦に感謝の気持ちとで、涙を流した。

「…敦さんで護衛成功が出たら、芽依さんとオレ、それに多分聖子さんの票も獲得できるし、きっと吊られないと思うんです。今夜、敦さん噛みで賭けてみませんか。そうしたら、7人残りでも喜美彦が吊られて6人、次の日芽依さんを噛んで5人…。」

そこまで言って、ハッとした。

そうなったら、敦が破綻する。

敦目線では、芽依も噛まれたことで狼が居なくなったことになるのに、ゲームが終わっていないのだ。

まだパワープレイができないので、いくら光晴でも気付くだろう。

敦は、苦笑した。

「そうだろう。」敦は、久司が気付いたのを気取って、苦笑して言った。「その場合芽依さんを狼に仕立てねばならないので、芽依さんは噛めない。が、猫又の光晴は守らず、私を守ることはないので、恐らく聖子さんか久司を守る。それで護衛成功が出たら、ジ・エンドだ。その道筋の方が面倒になる。ここは観念して、徳光を噛み、明日私が吊られないのを願って喜美彦を吊り推すか、私を吊ってお茶を濁して最終日君が踏ん張るか。もう二つに一つしかない。大丈夫、君はやれる。自信を持つのだ。」

久司は涙を拭いながら、頷いた。

「分かりました。できるとこまでやります。とにかく、明日は敦さんが吊られないように頑張ります。」

敦は頷いたが、もう何も言わなかった。

一人になりたくない…。

だが、光晴に怪しまれないためには、やるしかないのだ。

久司は、その夜自分の腕輪から、徳光の番号を入力したのだった。

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