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「オレは15号室、光晴(みつはる)だよ。歳は36歳。最近インターネットってのがメジャーになってるだろ?そのサービス全般をやる会社を作って、オレらパイオニアだから上手くやってたんだけどな、社員には健康診断やってたのに、オレはそんな暇なくて。気が付いたら倒れて、末期。とりあえずNo.2に後を任せて会長職に退いて、今ここ。金はあるけど、新薬使うって聞いてたし、家族も居ないし来てみようと思って。ここネット回線繋がらないから、ほんとに退屈なんだよな。ちょっと後悔してるとこ。」

社長だったのか。

久司は、そう言われてみたらそうかも、と威厳のありそうな様に見えて来た。

すると、徳光が言った。

「オレは16号室、徳光。40歳。よろしく。」

「徳光さんと光晴さんは、めちゃいろいろ知ってて話してると楽しいぞ。」若い男性が言う。「あ、オレ辰巳(たつみ)。18号室、27歳。ちなみに隣りの佐知(さち)はオレの彼女だよ。」

これまた可愛らしい女性が、顔を赤くしながら辰巳を軽く叩いた。

「もう、わざわざ言わなくても。あの、私は17号室、佐知です。歳は29です。よろしく。」

佐知さんの方が歳上彼女なのかあ。

久司は、思いながら頷いた。

「そうなんだな、ここにはカップルも居るんだ。もう、後は死ぬだけかって思ってたのに、なんだか明るい未来が見える気がする。」

拓也が、笑った。

「おいおい、お前もか?まあ、オレもなんだけど。敦さんが居るからなあ。みんな最初に見た時、敦さん敦さんって言うんだよ。それこそ舞ちゃんだって佐知ちゃんだって言ってたよなあ?」

それぞれの彼氏が、顔をしかめる。

舞が、慌てて言った。

「いえ、あれはアイドルみたいな感覚で!ほら、すごく綺麗なお顔でしょ?芸能人みたいだもの。」

佐知も、何度も頷いた。

「そうそう!芸能人感覚だったの。」

敦は、黙っている。

久子が、言った。

「ああ、敦さんは最初に見た時、この人はダメね、って分かったから私は言い寄ろうとは思わなかったな。」

久司は、敦そっちのけに進む会話に、割り込んだ。

「え、それはなぜ?」

久子は、苦笑した。

「目よ。それから態度を見たら分かった、この人他を受け入れる気持ちは全くない人だって。伊達に水商売で稼いでたわけじゃないのよ。多分、あまりに寄って来すぎて嫌になったクチじゃない?私もそうだから分かるのよね。」

確かに二人はちょっと見ない美男美女だ。

特に敦は、すらりと高い背で程よい体格だし、何より顔が凛々しく男の自分でも美しいと感じてしまう造形なのだ。

敦は、ため息を付いた。

「…私は妻以外など興味もないのだよ。それ以外は鬱陶しく感じて仕方がないのだ。ここへ来て、一番困っているのは妻になかなか会えないことだ。なんなら一緒に来て欲しかったぐらいだが…子達のこともあるし。」

え、妻帯者か。

皆が驚いている。

よく見ると、左手には結婚指輪が嵌められていた。

「あれ、そうか指輪!」拓也が、言った。「なんだ、結婚してたのか敦さん。」

正高が、答えた。

「そう、こいつは自分のことは何も話さないから、みんな知らなかったんだろうけど結婚してて子供は5人。いつまで経っても奥さん命。」

5人?!

「え、確か敦さん29でしたよね?5人?」

敦は、答えた。

「私が18の時に無理を言って妻に結婚してもらったので、そこから年子でね。一番上の子はもう11歳になる。」

それは凄いな。

さすがの久子も、それを聞いてドン引きしていた。

皆が黙り込んだ時、それまでどうやって付けるのだろうと思っていた暖炉の上のモニターが、パッと付いた。

え、と皆が固まっていると、男声が聴こえて来た。

《皆様、ご体調は良いようですね。》

誰の声…?

皆が思ってモニターを見上げると、真っ青な画面のまま、声は続けた。

《皆様に投与した薬は、新薬でまだ一般には出回っておらず、一度の投与に時価にして数千万円の代物です。それが効いたということは、皆様にはこのまま継続して使えば、寛解も夢ではないということになります。》

寛解…?!

久司は思わず身を乗り出したが、他の人達もそうだった。

「え、ということは、助かる?!」

声を上げたのは、徳光だ。

声は、答えた。

《はい。効いたということは、その可能性があります。元々その治験に参加してもらおうと思い、こちらを設立致しました。投与から一週間、皆様が問題なく立ち上がれるようになり、お体の調子も改善しているようですので、今はとても良い状態。ただ、このお薬は決まった容量を分けて投与しないと、寛解には至らないので、引き続き投与し続けなければその状態を維持することはできません。》

あれから、一週間…。

久司は、徳光が言っていたことが間違いではなかったのを知ったが、それよりたった一週間でここまで劇的に改善する薬というのにも驚いていた。

拓也が、言う。

「それは、続けなければ逆戻りってことか?」

声は答えた。

《はい。また元に戻ると思われます。なので、継続投与をご希望される方を募ろうかと。お薬の在庫の関係上、全員は無理なので、希望者の中で決めたいと考えております。》

全員が、体を固くした。

つまり、投与されない者も出るということだ。

「そんなの、みんな投与してもらいたいに決まってるじゃねぇか。」正高が言った。「どうしたら良いんだ。」

全員が、その問いの答えを待ってじっと何も映っていないモニターを見つめる。

声は、言った。

《でしたら、ゲームを提案します。》皆が思ってもなかった答えに、驚いた顔をする。声は続けた。《こちらには今18人の患者様が居ます。お薬の在庫は最大で11人分。こちらもそんな事態を想定し、皆様にご提案があります。》

敦が、むっつりと無表情な声で言った。

「提案とは?」

すると、パッとモニターに『人狼ゲーム』という文字が現れた。

《人狼ゲームをして頂きます。勝利陣営の報酬は、新薬。勝利陣営の方は、漏れなく治療を受けられますが、敗者の方々は申し訳ありませんが、引き続きこちらで緩和ケアを続けさせて頂きます。》

人狼ゲーム…!

久司は、身を固くした。

一時期流行った遊びで、学生の頃にやった記憶がある。

それを、命を懸けてここでやれと言うのか。

全員が黙り込む中、モニターには役職の名前が映し出されて行った。


《ご覧の通り、人狼4、狂人1、妖狐1、背徳者1、占い師2、霊能者2、狩人1、パン屋1、猫又1、村人4で戦って頂きます。人狼陣営の勝利で5人、妖狐陣営の勝利で2人、村人陣営の勝利で11人が治療を受けられるということになります。皆様、ご参加でいいですか?もし、参加されないということならレギュレーションも変える必要がありますし、今申告してください。》

誰も、声を上げない。

つまり、全員参加するということになる。

声は、続けた。

《それでは、ご説明を続けます。》と、画面が変わった。《役職のご説明です。人狼は、夜に誰か一人を襲撃することができます。最後に、村人の数と人狼の数が同数になれば人狼陣営の勝利です。ちなみに噛みナシ、つまりは襲撃ナシを選択することもできます。そして、人狼自身を噛む自噛みという行為も選択できます。》

知っている。

知っているが、噛みナシも自噛み選択もあるのは厄介だ。

久司は、思ってモニターを睨んでいた。

声はまた続けた。

《狂人は、人狼陣営です。占われても白、村人という結果が出ます。狼を助けて陣営勝利に貢献するのが務めです。次に、村役職の占い師。占い師は、毎晩一人を占うことができます。その相手が人狼か人狼でないかを知ることができます。次に霊能者。霊能者は、昼に追放された人が人狼か人狼でないかを知ることができます。そして、狩人。狩人は、毎晩一人を人狼の襲撃から守ることができます。が、自分を守ることはできません。そして、同じ人を連続で守ることはできません。一度別の人を守れば、また次の日に前に守った人を守ることは可能です。》

連続護衛ナシ…。

久司は、心に刻んだ。

声は、淡々と続けた。

《それから猫又。猫又は、襲撃されたら人狼を一人道連れにできます。昼に追放されたらランダムに誰か一人を道連れにします。次にパン屋です。パン屋は、何の能力もありませんが、村人だと確定しています。生きている間は毎朝キッチンに焼きたてパンが供給されます。》

パン屋騙りはできにくそうだな。

久司は、そう思った。

画面は、入れ替わる。

《それから妖狐。妖狐は人狼の襲撃では追放されませんが、占われると白と出て溶けます。呪殺ということですね。村役職の行使時間に、腕輪の通信機能で背徳者と会話することができます。背徳者は、妖狐陣営で占われても白と出て、溶けることはありません。が、妖狐が追放されると道連れになります。最後に、村人。村人は何の能力もありませんが、役職達が出す情報を元に人外陣営を探し出し、追放して勝利に貢献しる役目があります。以上、役職の説明でした。何か質問はありますか。》

喜美彦が言った。

「役職は?どうやって決めるんだ?」

声は、答えた。

《これよりこちらからランダムに役職を配布致します。腕輪のカバーを開いて、液晶画面を見てください。そこに、人外陣営の方々には、狂人以外には仲間の番号も現れますので、しっかり覚えてください。では、隣に見えないようにしながら、液晶画面をご覧ください。》

久司は、慌ててカバーを開いて、液晶画面を手で隠した。

そこに、パッと役職が現れた。

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