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五日目の夜と六日目の朝

久司は、たった二人になってしまった夜時間のリビングで、敦と向き合っていた。

昨日までは拓也が居た…いや、さっきまでは確かに居たのだ。

もしかしてとリビングへ降りて来たが、そこで追放されて気を失っていた拓也は、もうどこかに運び出されてそこには居なかった。

…勝たなきゃ。

久司は、心底そう思った。

拓也は、吊られてしまったのだ。

全部託されたのだから、自分達残った狼が、頑張るしかないのだ。

敦が、言った。

「明日は聖子さんに白を出す。」敦は、もう決めていたのだろう、矢継ぎ早に言った。「私を噛む必要も出て来るかもしれないが、とりあえず今夜はやめておこう。君は拓也を失って動揺しているだろう。その上私を失って、冴子さんから黒を打たれてとなれば、つらいことになる。今夜、君はどこを襲撃しようと思う?」

久司は、答えた。

「昨日の夜言ってたのは永宗を噛んで、永宗真進行になるようにしようとかだったけど、こうなって来るとそれもヤバいかな。噛みが冴子さん偽って言ってるみたいになってるから、それで敦さんが疑われる事になってる。結果的に冴子さんの思い込みと失言に助けられて何とか持ち直してるけど…徳光さんは噛めないし…どこがいいんだろう。」

敦は、久司の思考を伸ばそうと思ったのか、状況を整理した。

「拓也が吊られて今残り9人だ。徳光、光晴の確定白と、芽依さん、私、冴子さん、永宗の役職、そして君、喜美彦、聖子さんの村人候補。グレーは手に掛けられない。狼として吊る必要があるからだ。本来、ここでは徳光か光晴を噛みたいところだが、徳光には護衛が入り、光晴は猫又。どちらも今夜は噛めないとなると、襲撃先は自ずと芽依さん、永宗のどちらかになる。君が言ったように、永宗を噛むのはあまりにもあからさまだ。私が冴子さんなら、そこは噛まないだろう。となると、やはり芽依さんしかない。順当に狩人を噛んだと見るか、それとも狂人を切り捨てたのか、自噛みで真を取ろうとしたのかは村人目線では分からない。とはいえ、永宗を噛めば、また陥れられているとか言い出して、またそれかと自分で仕組んだようにもなるかと思うが…どちらがいい?」

久司は、悩んだ。

そうなると、昨日の冴子の発言のうち、皆にもしかしてと思わせた部分は逆に、怪しい要素となって敦真はより信憑性が増す。

だが、芽依を生かして敦を守らせるという選択肢を取り、次の日敦が噛まれない違和感を軽減するという進行を取らない限り、芽依吊り→敦自噛みのルートを変えられない。

それに永宗が居なくなると、パワープレイが一日遅れることになるのでは。

「…どうなるんだろ。永宗を噛んで、明日8人、その夜生き残っている芽依ちゃんを吊って7人、徳光を噛んで6人じゃ、まだパワープレイできないし、敦さんが襲撃されない違和感が出ないかな。」

敦は、首を振った。

「いや、そうなったらまず、徳光の進行だと芽依さん最後ということなので、残して私を守らせようとするだろう。冴子さんを吊らない限りは、私が噛まれなくても怪しまれないと思う。それより、明日は君に黒が出るので、永宗が噛まれた事によりその黒の喜美彦と君のランダムになりそうな気がする。あるいは、私と冴子さんの二択。芽依さんを噛むのは明後日でも良いかもしれないな。」

久司は、眉根を寄せた。

「…そうなると、冴子さん吊りだとして今夜徳光さんを守っているから、明日は守れない徳光さんを噛んで6人、次の日生き残っているのが違和感だと言って芽依ちゃん吊りか、それとも喜美彦吊り?」

敦は、頷く。

「冴子さんを吊ったら真切り進行になるので、私が次の日喜美彦黒を出せば安定で喜美彦吊りになるだろう。それで5人、その夜芽依さんを噛めばゲーム終了となる予定だ。」

つまり、冴子の真を切らせねばならない。

久司は、頷いた。

「じゃあ、今夜は永宗噛みにしよう。きっと、冴子さんはまた自分不利な噛みだと主張するから、それで偽を演出できる。」

敦は、頷いた。

「じゃあ、永宗で。」と、息をついた。「…その場合、私の狼位置なのだが…冴子さんは、一日目から私と同じ所に投票していて。真智子さん、舞さん、違うのは正高吊りの日と今夜の拓也吊りの票ぐらいか。本来、ここでは聖子さんに黒を打つべきなのだろうが、今夜聖子さんは冴子さんと対立していた。この人数になると、その一票は大きい。君に黒が出ることを考えても、明日確実に冴子さんか喜美彦を吊るには、聖子さんに白を打っておかねばならないのだ。最悪私が吊られたとして、君が最終日戦うためには、聖子さんの票は確保しておきたい。そんなわけで、冴子さんが初日から身内切りを続けて来たという考えの下に、真智子さん、そして舞さん辺りに狼が居たと提示せねばならないな。内訳は、私、永宗真占い師、氷雨背徳者、久子さん狐、冴子さん、真智子さん、舞さん、喜美彦が狼、狂人は拓也か芽依さんのどちらかで提出するしかない。」

明日は8人、久司、敦の2人が狼陣営で、残りの6人は村人だ。

拓也さえ守れていたなら、永宗を残して明日パワープレイができていたのだ。

そして、明日は冴子から久司黒が落ちる。

黒が出ているのは、喜美彦と久司の2人になるので、その二択か、それとも占い師の二択かになるだろう。

一気に追い詰められた形になるが、やるしかなかった。

これまでやって来たことが、村に評価されているのか勝負のしどころだった。

「…オレ、頑張ります。」久司は、言った。「永宗と敦さんから白をもらってるし、喜美彦との二択にされるかもしれない。でも、喜美彦より発言は多くしてきたつもりだし、その二択なら勝てる自信がある。やります。」

敦は、うっすら笑って頷いた。

「君なら勝てると思っているよ。」

そうして、敦が永宗の番号を入力するのを見守った。

明日は、正念場だった。


朝、二階で廊下に出て来たのは、喜美彦、久司、芽依、冴子、聖子、敦の6人だった。

永宗に、襲撃が通ったのだ。

聖子は、ため息をついて言った。

「…私が見てくるわ。」

聖子は、永宗の部屋の扉を開いて中へと向かった。

それを見送っていると、三階から徳光と光晴が降りて来た。

三階には、もうこの2人しか居ないのだ。

「…永宗か?」

光晴が言う。

久司は、頷いた。

「そう。今聖子さんが見に行ってくれてる。」

光晴は、黙って頷く。

冴子が、言った。

「…みんな、騙されてる!私も騙されていたわ!久司さんが黒、人狼よ!」

皆が、その叫びに固まった。

久司は、慎重に演じようと思い、少し驚いたような顔をしてから、言った。

「…そうなんだ。オレに黒を打って来たか。そうだよな、そろそろ黒を出さないと破綻だもんな。昨日指定されたのがオレだから、オレに黒を打つしかなかったわけか。思いきったよな。」

光晴も、苦々しい顔で言った。

「ここは久司を確白にして、村の信用を回復させるべきだったと思うぞ。それとも、これ以上確白が増えたらまずいからか?」

冴子は、ブンブンと首を振った。

「だから!私は真なの!私だって久司さんは白だと信じていたわ!でも、人狼だったんだもの!きっと人狼は、敦さん、久司さん、拓也さん、それに聖子さんなんじゃないの?!」

聖子が、永宗の部屋から出て来たところだった。

「…なに?永宗は追放されていたわ。それより、冴子さんは指定されてないのに私を占ったとかなの?」

敦は、首を振った。

「違う、久司が黒なのだと。私は、聖子さん白だ。私が占って良かった、SG(スケープゴート)位置にされるところだったよ。私目線、なので永宗は限りなく真の相方かな。久司は村目線でもかなり白いだろうし、本来白を打ちたかっただろうが、私が聖子さんに白を打ち、永宗真を追うのが分かっていたから、喜美彦を庇うためにもどうしても黒を打たねばならなかったのだろう。すぐに読めるような手だ。」

冴子は、叫んだ。

「違う、私は真よ!どうして信じてくれないの、久司さんと敦さんは黒なのよ!狼の数を考えても、聖子さんも黒でなければ合わないわ!永宗さんが狂人、敦さん、久司さん、聖子さんが狼で決まりよ!」

光晴が、言った。

「…ということは、君目線じゃ人狼が狂人を噛んだってことか?パワープレイできるのに?」と、指を立てた。「今8人。狼陣営が3人だろう。永宗を生かしておけば、今日はパワープレイで、今夜狼は絶対に吊れない。村に勝ちはなかった。なのに、狼はその勝ち筋を捨てて、狂人を噛んだって?久司、どう思う?お前が狼だったら、何で狂人の永宗を噛んでわざわざ確定勝ちを逃したんだ?」

久司は、顔をしかめた。

「残りの狼の数なんか分かるもんか。オレは村人だし、こうなったら敦さん真がオレ目線では確定だから、冴子さんが狼、その白先に黒を打ってる永宗は真、だから喜美彦が狼。聖子さんは白だ。だからパワープレイじゃないよ。だったら冴子さんはこんなに必死になってオレに黒を打たなくても良かったじゃないか。」

つまり、冴子が狼目線のパワープレイということだ。

徳光が、言った。

「…芽依ちゃんが黒だから、その色を見せたくなかったとも考えられるな…仕方ない。とりあえず、今夜は黒が出ている喜美彦か、久司の二択で行こう。芽依ちゃんが真であろうと偽であろうと、オレは襲撃されるだろうし、光晴に進行を任せる。が、今夜は多分、この様子だと喜美彦かな。久司と発言量が圧倒的に違い過ぎるんだ。ずっと潜伏してるように見えていたし、どのみちパワープレイが起こらなければ、吊ろうと考えてた。狼はどこかで落ちてるんだ。それは間違いない。それがどこかだが…敦さんと冴子さんの投票はいつも同じだったし、違ったのは正高と喜美彦のランダムの時ぐらいだった。正高は白かったから、恐らくそこまで身内切りして票を入れて、仲間が吊られてしまったから慌てて喜美彦だけは守っていたようにも見える。敦さんが圧倒的に真置きされていたからね。合わせていたら、吊られてしまったんだろうなと推測してる。」

冴子は、また叫んだ。

「違う!違うのよ!こんな噛みおかしい!私を陥れようとしている噛みじゃないの!」

「とにかく」徳光は、面倒そうに手を振った。「君は破綻発言が昨日も多かったし、とにかく思い込みが激しい印象なんだ。分かりやすく言って欲しいよ。なぜ占ってないのに聖子さんが黒と確信しているのか、永宗が狂人なら噛まなければ今頃パワープレイなのに噛んだのは何故なのか。また、後で会議だ。それまでにまとめて来てくれ。」

光晴が、言った。

「なあ、オレに進行を任せると言ったな?だったら今夜は、冴子さんか敦さんにしよう。まあ、オレは敦さんは残すつもりだがな。喜美彦の色は、敦さんが今夜占えば分かるだろ。それで行こう。」

徳光は、もうどうでもいいのか頷いた。

「じゃ、それで。お前に任せる。」

そして、その場は解散になった。

今夜は占い師の決め打ちになりそうだった。

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