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四日目の投票と夜

とはいえ、遊んでばかりもいられない。

久司は皆が去ったキッチンに、一人入ってそこでモソモソとおにぎりを食べ、夜に備えた。

狼目線でも、今夜久子を吊れば狐が処理され、明日の朝は背徳者が生きていたらそこが犠牲となって見つかるだろう。

それが永宗だったとしたら、そこが居なくなるはずだった。

そして、村目線でも狐が処理されたことが確定するので、できたら永宗を噛み合わせておくのが安牌ではないだろうかと思われた。

今は12人、残りの吊り縄は5本。今夜久子を吊って4縄、11人。

1人襲撃されて10人となるはずだった。

残っているのは喜美彦、久司、永宗、徳光、冴子、聖子、芽依、敦、久子、拓也、光晴、辰巳だ。

完全グレーはもう居らず、冴子の白は久子、喜美彦、辰巳。永宗の白が聖子、黒が喜美彦、氷雨の白は芽依、辰巳、敦の白が拓也と久司となっている。

村目線、敦真だとしたら、残りの冴子が黒で、永宗、喜美彦、聖子、芽依、辰巳の中に多くて狼3人、狐1人背徳者1人狂人1人が居る事になる。

もちろん、白先に背徳者、狂人が紛れている可能性も考えられる。

普通に考えて、いくらなんでも白人外ぐらいは処理できているだろうと村は考えるはず。

そうでなければ、狂人と狼4人でランダムパワープレーになるので、村の勝ちはない。

反対に、冴子真の場合、明日確実に敦黒を見るので、敦と、永宗、久司、拓也、聖子の中に最大狼3人と狐が居る。

氷雨が相方になるので、芽依狼は考えられないのだ。

つまり、冴子目線必ず敦による囲いが発生していると分かるのだ。

その場合、狼狼で占い師に出ているとは考えづらいので、拓也、久司、聖子が狼だとほぼ確定となるのだ。

とはいえ、久子が真結果を出していたと考えて真智子が狼だった時には、冴子のあの様子だと久司は除外されるだろう。

…どうなるかわからないな。

久司は、顔をしかめて考え込んだ。

永宗さえ狂人で生きていてくれたら、吊り縄に使える可能性があるので狼勝ちが近付くのだが、それは明日になるまで判断がつかないのだ。

どんどん盤面が詰まって来る中で、明日は狩人か占い師の決め打ちだろう。

どちらにしろ、戦いだなと久司は今夜よりも明日の心配ばかりしていたのだった。


その夜の投票は、満場一致で久子となり、久子は追放された。

久子は憔悴しきっていて、それは狐陣営の負けを意味し、死刑宣告と同義なので、その気持ちは分かった。

村人や狼とは違い、自分の追放=陣営負けと確定しているので、他の人に比べて一気に何歳も歳を取ったようになってしまっていた。

ぐったりとソファに横たわる久子を見て、光晴が言った。

「…これ、狐だったんじゃないのか?」皆があまりの憔悴っぶりに戸惑っている中で、光晴は続けた。「村人ならこうはならないだろう。吊られても、陣営が勝てば良いわけなんだから。でも、久子さんはあまりにも必死で、回避できないと悟ってからはもう、脱け殻のようだった。オレの所に何時間も居座って必死に吊らないで欲しいって訴えてきてたんだ。」

マジか。

久司は、驚いた。

つまり、久子は確定村人の光晴を説得して、何とかしようとしていたのだ。

徳光も、言った。

「お前の所にもか?オレの所にもなんだ。昼からずっと居て、オレの気持ちは覆らないと思ったら、出て行ったからあきらめたのかと思ってたのに。お前んとこに行ってたんだな。」

久子は、生き延びたいと必死だった。

目を閉じる久子の顔に、久司は同情した。

しかし、永宗は言った。

「…でも、狐だったなら村にとっては良かったじゃないか。これで狼だけ吊れば良いわけなんだし。縄がギリギリ足りるだろ?仮にどこかに背徳者が居て道連れになっても、偶数進行になってるから縄は減らないし。それより、今夜はどこを占ったらいい?狐が居なくなったんなら、勝手にやっていいのか?」

徳光は、あまりにもあっさりと言う永宗に、少し躊躇ったが言った。

「あ、いや指定する。冴子さんは敦さんを占いたいんだろう。じゃあ、永宗は…久司。敦さんは…そうだな、辰巳で。」

3人は、頷く。

久司は、今の反応から永宗は背徳者ではない、と確信した。

恐らく明日は、永宗が居なくなることはない。

つまり、永宗は狂人なのだ。

そう、信じようと思った。

敦が、言った。

「護衛先を指定した方がいい。もしどちらかが人外で、狂人だとしても狼と繋がっていたら話し合って何をするかわからないしな。」

徳光は、頷いた。

「じゃあ、拓也はオレ。芽依ちゃんは…光晴は噛まれるわけないし、白い所ってどこだろう。」

「久司さんにするわ。」芽依が、言った。「唯一平等に見てるから、狙われるかもしれないもの。」

オレか。

久司はおかしな気持ちだったが、徳光は頷いた。

「じゃあそれで。狼は噛む場所がなくなるから困るだろう。それじゃあ、解散だ。」

皆が、一斉に立ち上がる。

もう慣れたもので、目を閉じる久子を気遣う者は誰一人居なかった。

結局は、皆自分の身に危険が迫って来て、それどころではないのだ。

誰にもかえりみられない久子に同情しつつも、久司は明日からの事に集中しようと振り返らずにそこを後にしたのだった。


その夜、相変わらず拓也と敦と共に、久司はリビングに居た。

…今夜は、どこを噛むつもりだろう。

久司は、思った。

徳光はもう要らないが、拓也に護衛指示が出ているので噛むことができない。

となるとグレーなのだが、そこには黒候補がこれでもかと居た。

上手いこと疑われ位置は残しておきたいので、噛み先には悩む。

久司には今夜護衛が入っているので、噛まれなくても怪しまれる事はないはずだ。

残り、喜美彦、聖子、辰巳の中から吊る必要があった。

敦は、言った。

「君達はどこを襲撃すべきだと思う?」敦は、これまで決めて来ていたのに、今回は聞いた。「意見を聞こう。」

拓也が、言った。

「芽依さんじゃなければどこでも。敦さんのグレーばかりだし、噛んだら選択肢が狭まるよね。今夜辰巳に占い指定が入っていたし、そこを噛むのも手だよ。グレーが詰まらないから、噛んだって事になるし。」

久司も、それはいい考えだと頷いた。

「いいかも。辰巳には黒を出したらって思ってたけど、それでも良いよね。だったら喜美彦と冴子さんが狼で行くってこと?あと、聖子さんか。それで3狼、もう一人は真智子さんで行く?」

敦は、頷く。

「それでもいい。別に、久子さんを吊った事で村は真を切った事になるし、正高を黒とみても全然いいだろうしな。私は、ここは永宗をあきらめて襲撃して、仮に背徳者だったとしてもわからないようにしようかと思ったのだが、明日拓也を自噛み選択しないためにも、狂人は今夜残すか。」

久司は、言った。

「永宗は背徳者じゃないと思う。だって、久子さんが吊られても平気な顔をしていたし、全く庇う様子もなかったもんな。」

敦は、頷く。

「私もそのように。恐らく狂人だろうが、冴子さんを追い詰めるためにも良いかと思っただけ。では、今夜は辰巳で。明日は狩人の決め打ちに持って行きたい。芽依さんが吊られれば、その夜拓也自噛みで真確定させてと思っていたのだが、仮に芽依さんが吊られた場合、村の人数は9人。その夜確実に徳光を噛めば8人で、私、久司、拓也、永宗でパワープレイに持ち込める。ルールでは、同票の場合決戦投票二回で決まらなければ吊りナシになる。その夜襲撃して、7人。次の日狼3人、村人4人だが永宗がこちら側なので、村人を吊って勝ちだ。ゲームは終わる。ただ、明日拓也が吊られたらまた変わって来る事になる。」

久司は、考えながら言った。

「…ええっと、芽依さん噛みで8人残り。敦さん、オレ、永宗ではまだパワープレイに持ち込めないから、もう一人村人を吊る必要があるな。いっそ、永宗噛みで芽依さん残し、その日芽依さんを吊って、永宗真を追わせて喜美彦まで吊らせた後、永宗と対抗していた冴子さん吊りを推して、オレと敦さんで最終日?」

敦は、頷いた。

「拓也が吊られたら永宗噛みが安定だろう。それで真を追わせて噛まれない芽依さんを吊り推すことで、私、冴子さん、喜美彦、徳光、光晴、久司の6人盤面の時に喜美彦か冴子さんを吊れたらその夜残った方を襲撃して終わりだ。もし明日占い師吊りになったら、私は吊られなくても次の日自噛みしなければならなくなる。残っていては不自然だからね。そこからは、また君達で考えるといい。ここまで来たのだから、もう私抜きでも大丈夫だろう。」

だが、拓也が言った。

「生きててもらわないと困るよ!オレだって頑張るつもりだが、詰めが甘かったらまだ覆りそうな盤面じゃないか。久司がまだ、距離を置いてくれてて信用されてるから、生き残ってくれるかもしれないけど…一人はつらいだろ。」

久司は、何度も頷いた。

「覚悟はしてるけど、それでも重いよ。頑張ろう。」

敦はうっすら微笑んで頷いて、言った。

「では、また明日。あと少しだ。気を引き締めて頑張ろう。」

そうして、3人は襲撃先を入力して、部屋へと帰った。

どうなるのかは、まだ全く分からなかった。

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