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光晴は、言った。

「だったら、今日は久子さん一択だな。」皆が久子の弁明を聞こうと待っている時だったので、え、と光晴を見る。光晴は続けた。「狐もあるんだろ?だったらもう、疑うのに置いておく必要はない。冴子さん目線でも、久子さん狐はあるんだ。初日のお告げなんだからな。その上で敦さんを今夜占えば良いじゃないか。狐なら消える。背徳者も共にな。仮に敦さんが噛まれて呪殺を装おうとしても、道連れが出ないから分かるじゃないか。そしたら冴子さんを吊れば良いわけだ。分かりやすい。」

しかし、冴子が言った。

「待って、もしもう背徳者が居なかったら、呪殺しても狼の噛み合わせがあったら敦さんしか犠牲は出ないわ!それでも私を吊るつもり?!」

敦は、言った。

「だったら君は、背徳者がどこに居ると思うのだ?氷雨は真だろう。永宗は背徳者ではないのだとしたら、拓也だと言っていなかったか。拓也が道連れになったら村には分かるはずだ。何を恐れているのだ?」

冴子は、敦を睨んだ。

「もし拓也さんがたまたま囲われた狼だったりしたら、困るからよ!舞ちゃんだって、あからさまに怪しかったし…背徳者ってあり得るじゃない!」

徳光が、言った。

「…だが、敦さんは全く舞ちゃんには我関せずだったぞ?投票もしてる。それを言うなら君達女子は、みんなで舞ちゃんを庇ってたんだから舞ちゃんが背徳者だったなら、そっちの方が怪しい。とにかく、今夜は久子さんだ。どんな弁明をしても、生き残ってる事実は重い。仮に武が生きてたら、この限りではなかったが、初日に噛まれてるからな。残されてる意味を考えたら、久子さん吊りだ。今夜はそれで、占い先はまた投票後に言う。今夜はもう、7時の投票前にここへ来てくれたらいい。もう疲れたんだよ。」

久子が、言った。

「待って!私は真霊能者よ、狼の思うツボよ!」

しかし、徳光は手をふって解散の意を皆に知らせて、立ち上がってキッチンへ向かった。

もう、徳光も精神的に限界が近付いて居るようだった。


とりあえず、狐は今夜処理できる。

久司は、思っていた。

それでも村目線では、もし背徳者がどこかで落ちていたら誰が狐だったのか、全くわからないので狐を探すことになるだろう。

敦には、明日冴子から黒が出るだろうが、敦でGJが出ていると思っている村目線では、受け入れられない結果だろう。

早ければ明日、占い師の決め打ちとなりそうな感じだった。

それとも、狩人の決め打ちなのか、どちらかだろう。

一人でリビングの大きな窓の側のソファに座って考え込んでいると、冴子と芽依が、そこへやって来た。

…この二人が来るなんて珍しいな。

久司は思ったが、二人を見て言った。

「どうしたんだ?何か聞きたい事でも?」

久司が言うと、冴子が頷いた。

「まだ、迷ってるって言ってたから。光晴さんは猫又なのに私から見たら思考ロックしていて話にならないし、だったら久司さんと話そうと思って。皆を説得して欲しいの。」

久司は、顔をしかめた。

「オレは今夜久子さんを吊るのは妥当だと思ってるし、占い師はわからないだけでまだ、誰が真とか決め打てないだけだ。占い師吊りの説得はできない。」

せっかく狐が吊れるのに。

久司が言うと、冴子は首を振った。

「違うわ。久子さんは確かに私目線でも人外があるから、敦さんも勧めてるっていうのが気にいらないけど、敦さんが狼で、久子さんが狐陣営か狂人だったら吊ろうと言うのも自然だからそれは良いの。明日からのことよ。明日は、占い師の決め打ちになりそうだと思う?それとも、狩人かしら。」

久司は、ため息をついた。

「分からない。結果次第だと思うけど。もし君が言うように、敦さんが呪殺でもされたら、どこかに背徳者が残っていたら道連れになって一気に数も減るし、それが拓也だったら芽依さんが真で決め打ちになって君は真占い師になって、永宗偽まで透けるだろ?そうなったら、グレー詰めって事になるんじゃないかな。残りの縄は、君と氷雨のグレーに使う事になるんじゃないのか。」

なるはずがないが、そうなったらかなり狼は大変な事になるだろう。

久司が思いながらも言うと、冴子は、ため息をついて頷いた。

「そうね。確かに。だったら、やっぱり明日の結果次第だってあなたも思うのね。」

久司は、頷いた。

「そう。今の時点では、オレにも誰が真なのか分からないよ。敦さんのことすら、分かってない。君が言うように、確かに狐だったら村勝ちを目指して最後まで生き残ったら勝ちをさらえるから、あり得ることだと思うしね。今夜はとにかく、君には敦さんを占ってもらって、他の二人にはグレーを占ってもらうってことで良いかなと思うよ。君が真なら、それを証明して欲しいと思ってる。」

冴子は、頷いた。

「分かったわ。だったら、明日になったらまた話す。あなたぐらいしか、話の分かる人が居ないんだもの。確定白のはずの徳光さんも、光晴さんも今朝の結果から敦さん真を確実みたいな話し方をしているし。氷雨さんの白だから、芽依ちゃんだって白で真狩人だと思うのに、誰も彼もが不審者を見るような目で見るの。落ち着いて食事もしていられないわ。」

そうか、キッチンにみんな今、居るから。

久司は、思った。

自分は考えたいからと、一人ここに残ったが、朝の会議の後、もうお昼も近くなっていたので、皆が皆キッチンへと入って行ったのだ。

そう思っていると、キッチンの扉が開いて、何やら話声が聴こえて来た。

冴子と芽依の二人は、そちらを振り返ってから、またこちらを見て、言った。

「…私達は一旦部屋へ帰るわ。じゃあ、また明日落ち着いて話を聞いてね。」

久司は頷いたが、冴子の求めに応じるつもりは微塵もなかった。

そんなことを知る由もない二人は、さっさと皆から逃れるように、リビングを出て行ったのだった。


拓也が、二人が去って行くのを見ながら、こちらへ寄って来た。

「…何かいちゃもん付けられたのか?」

久司は、首を振った。

「逆だよ。話が分かりそうだからって。別にオレも、冴子さんを信じてるとかじゃないんだけどな。誰を信じていいのか分かってないって言ってるだけだ。」

辰巳が、後ろから歩いて来て言った。

「まあ、キッチンでも強い調子で敦さんが偽だからとか言って、飯食ってるのにうるさいから、敦さんがさすがにキレたんだよ。食事は静かにしたいんだってさ。」

久司は、驚いた顔をした。

「え、敦さんがキレた?」

確かに、真顔になるとかなりキツい顔をしているので迫力があるのだが、だからといって敦は物静かな方で、キレるとか感情的になるような事を一切なかった。

それが、キレるというのが想像もつかない。

光晴が、言った。

「そう。怖いぞ、怒鳴るんじゃないんだ、強い口調で正論をぶちかます感じ。声が良く通るから、そこに居た全員がシンとなってさ。二人も、居た堪れなくなって出て行った。あの顔で本気で睨まれたら、オレなら泣くかもしれない。別に怒鳴られてないのに、殺されるかと本気で思うほど迫力があるんだ。」

後ろから来た、敦がため息をついて言った。

「別に殺しはしないと言うのに。ただ、食事をしている時ぐらい、おとなしくしておかないかと諫めただけだ。うちの子達でもおとなしく食事を摂るのに、どんな教育をしているのかと憤ってしまってね。君達の反応を見たら、言い過ぎたのかと今は反省している。」

敦さんの子供って、いったいどんな感じなんだろう。

久司は、さらりと自分の子供のことを口にする敦に、どうにも子持ちには見えないのに困惑していた。

それなのに、こうして子供の事を言えるということは、それなりに子育てにも携わっているのだろうが、そんな感じが欠片もないのだ。

徳光が、後ろから言った。

「敦さんの子達って、奥さんに任せてるんじゃなくて敦さんも育ててるのかな?どうにも子育てしているようには見えないんだが。」

同じ感想の久司が激しく頷くと、敦は答えた。

「私はまだ赤ん坊の時から夜泣きの対応もしていたぞ。何しろ年子で五人だから、妻とメイドだけに任せていたら寝ている暇もないのだ。妻を寝かせるためにも、手を貸すよりないだろう。それこそ先入観というものだ。」

これで愛妻家なんだなあ。

久司は、意外な敦の一面に驚きながらも、そのままゲームに関係のない話に花を咲かせてそこに居たのだった。

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