昼から夕方
朝の会議が長引いて、昼に近くなったので、徳光は終わらせた後、次は夕方6時だと皆に告げた。
吊り先指定は喜美彦、正高、聖子の三人で、その中から今夜一人吊られる。
氷雨を偽で、その白先に狼が居ると発言していた久司からしたら、納得できない指定先ということになるが、それは明日でいいだろう。
とにかく、今夜は正高を守らねばならないのだ。
明日には恐らく拓也が、狩人として露出して、その後芽依との決戦に勝ち抜いたとしても、次の日は自噛みするしか選択肢はない。
敦が疑われるような状況は作り出したくなかったからだ。
拓也は、敦の白先なのだ。
とはいえ、もし敦GJとか言われたら、次の日噛まれないのはおかしくないだろうか。
まさか敦まで自噛みするとか言わないだろうな。
久司は、悶々と考えていた。
夕方まで部屋で考え込んで籠っていた久司だったが、誰も訪ねては来なかった。
さすがに心配になって5時頃降りて行くと、リビングには結構な人数が居て、そこで話していた。
空になったペットボトルがあちこちに転がっているのをみると、かなり長い間ここで話していたようだ。
…しまった、議論の流れを把握しておきたかったのに。
久司は、どうせまた誰か来るとか思って悠長に部屋に籠っていた自分に後悔した。
久司が入って行くと、徳光が振り返った。
「…ああ、久司か。」
久司は、言った。
「何か決まったことだったけど、納得行かなくて。部屋であの三人だったら誰が良いのかって、ずっと考えてて。」
光晴が、言った。
「…お前も?実はオレも。何が納得行かなかったんだ?」
久司は、明日にしようと思っていたことだったが、今自分の白印象のために意見を落とそうと言った。
「オレは、朝も言ったように氷雨は漂白噛みだと思ってるから。つまり白先に狼が居るんじゃないかって思ってるってことだけどね。芽依さんは狩人だとしても、だったら辰巳が指定先に入ってないのがなあって思ってしまって。聖子さんも同じような意見だったし、今夜じゃないなって思うし…でも、辰巳が黒なら冴子さんが偽ってことになるから、永宗は真だろ?その白先が二人共指定されてるなんて、なんかなあってさ。喜美彦を吊って色を見るしかないのかなって、結論出して降りて来たんだ。でも、狼票ってみんな正高とか聖子さんに入りそうだし、吊れないかもなって思ってる。」
徳光が、顔をしかめた。
光晴が、何度も頷いた。
「そう、それなんだよ。正高が白い狼とか言い出してるし、聖子ちゃんの意見はオレも納得してて、なのにそこを吊れって横暴だろ?喜美彦吊り安定だなとオレも結論付けてたんだけど、そしたら徳光がなんか早計だとか言い出して。だったら永宗偽で決め打ってることになるし、永宗吊りかって言ってもそれはないって言うし。どのみちどこを吊っても久子さんを疑い出したわけだから、色はわからないんだ。もう、ハッキリしてくれって思って、議論してたんだけどな。」
確白同士がやり合っていたのか。
久司は、それで分かった。
光晴は氷雨偽の世界線で話していて、徳光は氷雨真の世界線で話しているので、うまくいかないのだ。
その上、徳光は永宗偽だと決め打ってしまう勇気も出ないのだ。
なのに、その白先二人を挙げているので、光晴には納得できないのだ。
徳光は、言った。
「…だから、永宗が真だと思うなら喜美彦に入れてくれたら良いと思う。喜美彦を入れたのは、永宗の黒だからだし。とりあえず今は敦さんを真で置いてるから、そのグレーの中から選ぼうとしているだけなんだ。誰が偽だとか、今は判断がつかないからな。」
久司は、ため息をついた。
「まあ、そう言うなら仕方ない。徳光さんは氷雨真を追ってるから、辰巳が吊れないわけだろうし。夕方の議論で、喜美彦と正高、聖子さんの意見をまた聞いて決めたら良いよ。オレとしては、結論はもう出てるけどね。」
光晴も、軽く徳光を睨みながら頷いた。
「オレも出てる。パン屋が言うんだし仕方ないな。」
徳光は、二人から言われて言い訳のように言った。
「結局、芽依ちゃんの色なんだよ。敦さんも光晴も、対抗が居ても出るなとか言うから、芽依ちゃんが真狩人かどうか今の時点じゃわからないじゃないか。他に居たら、芽依ちゃん偽だって追えるし、そうなったら氷雨偽かと考えたけど、出てない今は芽依ちゃん真で置くしかない。だとしたら、氷雨は少なくとも芽依ちゃんを囲っていないわけだし、真だって考えるのが妥当だろうが。今の時点でこうなるのも、仕方ないと思って欲しい。」
側で聞いていた、拓也が言った。
「あんなのどう考えても偽だよ。敦さんが狩人は今夜は踏ん張れと言ったじゃないか。なのに、あっさり出てしまって。村のことを考えてない、誰が見ても吊り逃れのCOだったのに。氷雨は偽だよ。オレはそう思う。」
拓也は、頑張っている。
久司は、思った。
明日に向けてしっかり準備しているのだ。
芽依が偽だと知っているかのように振る舞って、村に印象付けてからCOして真を勝ち取ろうとしているのだ。
正高が、言った。
「…まあ、とにかくここはパン屋の言う通りにするのが一番だ。確定村人なんだからな。疑う余地はないだろう。仮に芽依ちゃん偽でも、辰巳が白の可能性だってあるし、冴子ちゃん真、永宗偽の世界線だってある。オレは自分が白なのを知ってるが、もしかしたら聖子ちゃんが狼かもしれないからな。狼だって、全員囲えているかはわからないだろう。真智子さんが黒だったり、霊能者が偽だったりでそもそもグレーにそんなに黒がいない可能性まであるからな。村人同士で争うのはヤバいぞ?狼の思うツボだ。」
光晴は、バツが悪そうに言った。
「まあ…確かに。徳光を敵だと思ってるわけじゃなくて、意見が違うから間違ってると思ってしまって議論になるんだ。オレだって同じ確定白だし、村を勝たせたいと思っているのは同じだ。命が懸かってるから、熱くもなるんだよ。自分の意見で負けるなら納得もできるが、間違ってると思ってる他の意見で負けるのは納得がいかないからな。」
久司は、ため息をついた。
そう、自分が招いたことなら仕方がないと思えるが、他の意見で助からないとなれば、責めたくもなるだろう。
それを避けたいからこそ、言い合いにもなるのだ。
久司だって、あきらめたはずの命を取り戻せるとなれば、必死に戦う。
今は、狼なのである程度ゲームメイクに関われるので、精神的にそこまで辛くはないのだ。
そこへ、敦がやって来て、言った。
「そろそろ夕食を摂らねばと降りて来たが、君達は議論していたのか?もう5時半になるぞ。6時から会議なのだろう。少人数でやり合っても答えは出ないぞ。」
時計を見ると、確かにもう5時半になろうとしている。
徳光が、言った。
「…分かってる。飯でも食って切り替えよう。光晴は猫又だし、確定村人同士で言い合っても仕方ないのは確かだ。」
拓也が、言った。
「キッチンにはまた何人か入ってくのを見たから、他のみんなが居るんじゃないか?」と、久司を見た。「久司も、飯食いに来たんじゃないか。こっちの議論に巻き込んじまって。」
久司は、首を振った。
「良いんだよ、別に腹が減ってたわけじゃなくて、煮詰まったから降りて来ただけだし。でも何か食べなきゃなあ。」
相変わらず、昼食をたくさん食べてあんまり空腹ではなかった。
しかし、拓也はまた相変わらず食欲はあるようだった。
「オレはもう腹減った。行こう、冷凍のめっちゃ旨そうな鍋焼きうどん見つけたんだ。あれなら多分久司でも食べられるぞ。」
うどんならいけそうかな。
久司は言われるままに、キッチンへと向かったのだった。




