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三日目朝の会議

焼き立てパンの匂いがする。

徳光が生きているからこそ、毎日焼き立てパンが供給されていた。

これがまた美味しいので、久司は急いで会議の前にキッチンでパンをがっついて食べた。

昨夜は結局何も食べていなかったので、今朝は腹が減って仕方がなかったのだ。

おまけに、朝からいろいろ考えてしまって、頭がパンクしそうだった。

敦が言うには、食事をしっかりととらないと、精神的にも肉体的にもバランスが崩れてしまって思考に影響するということなので、久司は必死にバランスを考えてサラダやチキンなども口に入れた。

チキンといっても蒸し鶏で、サラダの上に乗せたら難なく食べられた。

胃の調子は、かなり良くなっているようだった。


その体調とは対称的に、リビングの空気はまるでお通夜のようだった。

皆が皆、氷雨が襲撃されたことの意味を、考えているようだった。

久司も表情を引き締めて、その中に入って行って、ソファへと座った。

それを待っていたように、光晴が言った。

「久司はどう思う?氷雨は偽だから漂白噛みされたのか、それとも真だから襲撃されたのか。」

久司は、顔をしかめた。

「わからない。分かっているのは氷雨が襲撃された事実と、久子さんが残っている事実だけだ。」

辰巳が、言った。

「わざと残されているようにも見えるけどな。ほら、縄消費に使おうと思って。こうなったらこうして怪しまれるし、真智子さんの色も確定しなくなるだろう。狼からしたら、霊能者より占い師を噛む方が、村を混乱させられるって思ったようにも見える。久子さんを吊る意見も出そうだもんな。」

冴子が、言った。

「でも、久子さんは白なのよ。狂人か背徳者だったらわからないけど、少なくとも狼じゃないわ。吊りは狼に使うべきでしょ?まだ真の可能性もあるんだし、誰かを吊って色を見てもらうこともできるもの。」

狐の可能性もあるんだけどね。

久司は、自分も失念していたので、冴子の把握漏れは理解できた。

だが、こんな皆が集う場での把握漏れは致命的なのだ。

なので、言った。

「…あれ。冴子さんは久子さんが白のお告げだったわけだよね?狂人か背徳者って、狐は?無いのか?」

冴子は、顔をしかめた。

「狐だったらそもそもここに居ないじゃない。私は真占い師なのよ?呪殺できるわ。」

やっぱり把握漏れしてる。

久司が突っ込もうとすると、正高が割り込んだ。

「え、冴子ちゃんは占い師なんだろう。なのにどうして知らないんだ?説明にもあったし、ルールブックにも書いてた。初日のお告げは狐に当たることもあって、その場合は呪殺されないんだ。」

永宗が、何度も頷いた。

「そうだぞ!」と、尻のポケットから半分に折られたルールブックを引っ張り出した。「オレはきちんと全部読んでる!覚えが悪いから、占い師のことは全部把握しておかなきゃって!なんで占い師なのに、そんなことも知らないんだよ?」

永宗も知ってたのか。

久司は、驚いた。

あまり考察が伸びなさそうな永宗が、そこまで努力して占い師を騙っているとは驚きだった。

徳光が、言った。

「そうだ、占い師が役職のことを把握してないなんておかしいじゃないか。最初の説明の時も言っていたし、永宗が言うようにルールブックにも書いてある。オレでも知ってる。役職持ちの行動じゃない。」

久司も、追い討ちを掛けておこうと、言った。

「…だとしたら、狐じゃないな。なぜなら狐は、占われたら終わりなので占い師のことはしっかり把握しているはずだ。偽だとしたら、狼か狂人?」

しかし、敦は首を傾げた。

「いや…狐だからこそ自分は占われることはないと、たかをくくっていたのかもしれない。久子さんと背徳者ペアなら、分からなくもないしな。」

なるほど、状況次第でいろいろ怪しめるように幅を広げておくんだな。

久司は思った。

冴子は、顔を真っ赤にして立ち上がった。

「違うわ!私は真占い師よ!たまたまそこは聞いてなかっただけよ、私が昔やったゲームではお告げは狐に当たらなかったから!占ってるから、単純に狐はないって思い込んでいただけ!」

辰巳が、言った。

「ごめん、オレもそれは知らなかった。だから冴子ちゃんの気持ちは分かるよ。そうか、じゃあもし久子さんが偽だったら、狐もあり得るわけだね。冴子ちゃんが真でも。」

オレもそうだから言ってることは分かるんだけど、あいにくオレは狼だから。

久司は、思いながらも冴子を疑うような目で見るのを忘れなかった。

光晴が、言った。

「庇ってるのか?辰巳。やっぱり氷雨は狂人かなんかで、漂白噛みだったのかな。」

徳光は、じっと考える顔をする。

拓也が、言った。

「…ってことは、永宗と敦さんが真ってことか?氷雨は芽依さんか辰巳を囲っているから、真に見せて確白位置に入るために噛んだって?」

敦は、息をついた。

「これだけで冴子さんを偽だと決め打つのはまだ早い。とりあえず、氷雨がなんだったかなのだ。とはいえ、私目線では私は真で、あと一人、氷雨かとも思っていたのだが、永宗の役職に向かう姿勢は今、白く見えた。冴子さんはわからない。判断材料がないからな。私が冴子さんの白先を占っていたなら、そこにも黒があったら疑えたのだが…とりあえず、まだ白いと思う要素が一つもないのは冴子さんだけだが。」

永宗は、首を振った。

「オレ目線じゃ、冴子さんは偽!だって、喜美彦に黒が出てるから!冴子さんは昨日、喜美彦に白を出してるから!」

喜美彦が、言った。

「オレ目線じゃお前が偽だ!冴子さんはオレに白を打ってるし、信じたい気持ちはある。だが、オレ目線じゃまだわからない。敦さんが断トツ白いけど、そもそも敦さんは真なのか?それもオレには分かってないぞ。」

遂に敦を疑う意見が出た。

光晴は、顔をしかめた。

「まあ…確かにな。だが、敦さんのことは疑う余地もないから、今のところ保留にして良いと思うけどな。白先にもおかしな所はないし、仮に敦さんが偽だったとしても、残りの占い師の中に必ず真と偽が居る。それを探すのが先だ。疑い先を広げるのは、人外の常套句だぞ、喜美彦。」

喜美彦は間違ったことを言っていないのに、村の総意に逆らうと、こうして疑われることになる。

結果的に冴子がもっと追い詰められるのだ。

敦が、言った。

「まあ待て。喜美彦は間違ったことは言っていない。私達は皆、同じ条件なのだ。誰も呪殺を出してはいない。だからこそ、私も含めた全員がしっかり発言する必要があるのだ。村に情報を落として、精査してもらわねばならない。黙っていては隠れたいように見える。話を聞こう。冴子さん、何か意見があれば、今話せばいい。」

冴子は、他ならぬ同じ占い師の敦に庇われているようにも思えたのか、敦に縋るような顔で言った。

「敦さん、私は本当に真占い師なの!永宗さんが偽なのは今朝分かったわ。あなたは公平に見てくれるから、きっと私の相方なのだと思う。だから、きっと氷雨さんは漂白噛みされた狂人か背徳者なのよ。把握漏れしていたのは申し訳ないけど、占い結果さえ落としていれば間違いないから…そう思って、ルールブックも読んでいなかったの。それは悪かったと思うわ。」

敦は、息をついた。

「君の弁明は分かった。私は最初から、そこまで決め打ってそれだけで君を疑ってはいない。確証がほしいのだ。私目線では何も見えていないからな。君は、ではどう思うのだ。今夜はどこから吊りたいと思う?私はそれが聞きたいのだ。」

冴子は、戸惑いながらホワイトボードを見た。

そして、そこにある結果を見つめて、言った。

「…氷雨さんが漂白噛みだと思うから、その白先を洗いたい。芽依ちゃんと、辰巳さん。辰巳さんは私のミスにも寛容だったし、白だから、狼があるとしたら芽依ちゃんかな。でも、永宗さんも偽だったから、白先の聖子ちゃんと正高さんも疑いたいわ。正高さんは初日からきちんと意見を落としてるから、そこまで怪しんでいないけど、白い狼も居るかもしれないもの。その辺りを、挙げたいと思う。」

遂に正高も挙がって来たか。

久司は、じっと黙ってそれを聞いていた。


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