昼の会議
昼の会議は、全員が集まるのは遅かった。
時間ギリギリに一斉に集まって来て、先に来ていた久司は、イライラしている徳光にハラハラしながら待っていたので、皆が集まって来た時にはホッとした。
全員が椅子に収まったのを見てから、徳光は言った。
「今夜は、舞ちゃんを吊る。」皆の視線が徳光と舞に交互に集まった。徳光は続けた。「理由があるんだ。久司から、どうして光晴が猫又だと思ったのか話を聞いた。思えば、昨日最初から光晴は、目立つ発言をして怪しまれるようなことをしていた。それを、怪しまれても回避できる役職を持ってる村人だと思ったらしい。言われてみたらそうだとオレも思った。それから、猫又のような発言でわざと舞ちゃんを攻撃する久司に完全に同意したことから、ならば光晴は猫又だと思っていたそうだ。つまり行動から、光晴は真猫又でしかない。だから、対抗している舞ちゃんは猫又ではあり得ないと判断した。狂人か背徳者かもしれないが、人外なのは変わりない。なので、吊ろうと思っている。」
徳光には珍しく、きちんと論理的に説明していて、村には分かりやすかったようだ。
皆、うんうんと頷いていて、納得しているようだったのからだ。
舞は、ふるふると震えている。
敦が、言った。
「…そこまで見ていてきちんと理由があるのなら、それを信じよう。納得できたので、君の指示に従う。」
敦から見ても、それなら良いと思ったようだ。
まあ、狼なので村のためというよりも、狼のためにもそれでもいいという事なのだろう。
徳光がホッとしたような顔をした時、舞が、いきなり叫んだ。
「違うの!」え、と皆が驚いて舞を見る。舞は続けた。「私は、村人なの!本当は今朝、明かすつもりだった。なのに、武さんが襲撃されて…提案して来たのは、武さんなの!」
どういうことなのだ。
皆がワケがわからないという顔をしている中で、正高が言った。
「待て、それって、村人なのに猫又を騙ってたってことか?吊られないために?」
舞は、頷く。
「そう。私が投票対象に上がった時に、武さんが言ったの。村人なんだから、とりあえず今夜は吊られないようにしようって!オレがサポートするからって…なのに、襲撃されて…どうしたら良いのか分からなくなって、黙ってたの!私は、村人なのよ!」
そんなことがあるんだろうか。
いや、狼目線ではあり得る。
何しろ舞は白なのだ。
どの白なのかわからないが、とにかく白で、久子も人外だとわかっているが、白。
そして、占い師の中の永宗は、狼目線で偽だが、白。
つまり、この村に居るはずの、白人外が全部露出していることになっていたのだ。
舞がなんなのか、とにかく分からなかったが、真猫又である可能性もあった。
だが、光晴が出たことであり得なくなった。
どちらかが、白なのに偽だからだ。
村目線では、役職者の誰が黒なのかも全く分かってはいないが、狼からは仲間が分かる。
占い師には敦が出ていて、もう一人の人外は、正高に白を打った永宗だが白で、そこが狂人なのか、背徳者なのか、狐なのか狼にはわからない。
そして、真智子に黒結果を出した久子は村目線では真置きされているが、狼目線では偽。
そして白なのだ。
その上舞もとなると、白人外全露出にも見えてしまって、狼目線ではどういうことだとなる。
舞が村騙りならば、なのでスッと腑に落ちた。
とはいえ、村目線ではまだ何も分かっていないので、久司は言った。
「村騙りなんて、完全に吊られそうだからやけになってついた嘘にしか見えないよ!だったら舞さんだって完全グレーなのに、占い指定にも入ることもなかったし、これまでの議論が無駄になったじゃないか!狂人じゃないの?!だからとにかくCOして、生き残ろうとしたんだ!そうとしか思えない!」
村目線でもそう思うのか、皆が頷いているのが見える。
敦が、ため息をついた。
「…ということは、光晴で猫又が確定したということだ。となると、今日の完全グレーは久司と舞さん。この二人のランダムで良いんじゃないか?残った方は占って、色をつけて行こう。どうせ明日は、お互いの白先を疑って自分の結果を出して行かねばならない。それで呪殺も出る可能性があるしな。」
徳光は、頷く。
「…もう、こうなったらそうするしかないな。猫又も露出してしまったし、こうなったら狩人だけは生き残ってもらわねばならない。そこに黒を打った占い師は偽だしな。頑張って潜伏して欲しい。今夜の護衛先は、オレか久子さん。守れるところを守ってくれ。」
拓也が、言った。
「…じゃあ、混乱はあったけど今夜は久司と舞ちゃんで。ここからは占い師の話を聞かないか?でないと明日からの精査が進まなくなるだろう。」
徳光は、頷いた。
「そうだな。敦さんはここぞという時に発言してくれているが、他の三人があまり意見を聞けてない。まず…そうだな、氷雨の話から聞きたい。一番疑ってる位置なんだ。」
氷雨は、息をついた。
「昨日オレとオレの白先の二人が喜美彦に入れてるからか?そんなの、わからないだろうが。たまたまそこに入れただけ。そもそも徳光さんは、思考ロックしてる気がしたんだ。それで危険だと思って、反対側に入れただけ。それなのに怪しまれるなんて、理不尽だと思うぞ。だいたい、同じように喜美彦に投票してる武は噛まれているんだぞ。オレから見たら、そこに白を打ってる冴子さんの方が偽に見えてる。明らかに白い久司がグレーに残されて、こうして投票対象に上がるのは目に見えてたはずだ。そこから喜美彦を助ける占いだと思ってるけどな。オレは辰巳を、白なら逃してやろうと思って占ったからな。」
冴子は、反論した。
「そんなの、喜美彦さんで黒が出るかもと思ったから占っただけよ!久司さんは白いから、そこに白を打っても人外が分かりやすいところに白と言ったみたいに見えると思ったから!私には、今日グレー吊りなんて分かってなかったわ。誰かが黒を出したらそこを吊ったんだろうし、そんなの見えてもいないもの。真智子ちゃんが白だったらって考えるじゃないの。残された対抗の喜美彦さんを占うのは自然なことだと思う!」
敦が、言った。
「どちらの言い分も間違ってはいない。思ったことと占い先に矛盾がないからな。どちらが人外なのか、それとも両方人外なのか、私にもわからない。」
徳光が、言った。
「敦さんはどうして拓也を?光晴ではなく。」
敦は、答えた。
「昨日も言ったように、目立つ発言をしていたからだ。久司が言ったように役職でもおかしくはないし、無駄な占いはしたくなかった。昨日、光晴が役職なのではと言わなかったのは、役職には狩人であろうと猫又であろうと潜伏した方が利があるからだ。まあ、出てしまうことになったがね。私は久司と光晴のランダムならば、どちらにしろ役職COを募るしかないなとは思っていたよ。」
徳光は、渋い顔をした。
「…敦さんも気付いていたのか。オレが鈍感で、露出させてしまったな。」と、永宗を見た。「永宗は?どう思う。」
永宗は、困ったように徳光を見た。
「オレからしたら、敦さんが相方に見えてるから、他の二人は人外なんだ。その二人がやりあってるから、狐と狼の争いなのかなと思って見てた。今日は各占い師の白先よりも、お互いに占った方が良いんじゃないか?その方が、呪殺が出る可能性が上がる気がする。一刻も早く真占い師を確定させるためにも、その方がいい気がするんだ。」
…ほう。
久司は、それを興味深く聞いた。
永宗は、占い師同士の相互占いがしたいのだ。
ということは、お前は狐ではないな?
きっと、狼は全員そう思ったことだろう。
だが、徳光は言った。
「…確かにな。狐は、そのままだと呪殺か吊りで始末されるし、占い師に出るのが一番逃れる方法だ。としたら、占い師の中に必ず真が二人居る今、お互いに占って色を出しておいたら、後が楽になる。真占い師が確定したら、次の日までは護衛が入れられるから結果を残せる。楽になるような気がしないか。」
しかし、氷雨が言った。
「…だが、オレ目線人外の可能性が高い永宗からその意見が出るのがな。永宗は、狂人か背徳者なのかも知れないぞ。それで白先に狐を囲ってるから、何とかしてそこを守ろうとしてるんじゃ。」
敦が、頷いた。
「確かにな。まだ久司か舞さんはグレーに残るのに、占い師同士の相互占いなどしている暇は今はない。したとしても明日以降、完全グレーが消えてからだ。まずは村人から、私は色を見ておきたいのだよ。そのうちに、真占い師は噛まれるだろう。一人減ってからでも遅くはない。」
でも、真占い師が呪殺をしたら、永宗が背徳者なら根こそぎ死んで透けるよね。
久司は、どうしたものかと思った。
もし、永宗が囲っているのなら、白先は聖子と正高だ。
つまり、聖子以外にあり得なかった。
舞が狐でない限り、まず聖子で間違いないだろう。
舞が吊られそうになっていても平気な顔をしているのだから、それはあり得ない。
久子は、真占い師の冴子から白が出ているので狐だけはあり得ないのだ。
狼目線で、狐位置が分かったところで、果たしてどう怪しんで行けば良いものか…。
久司は、眉を寄せてそれを聞いて考え込んでいたのだった。