追放と夜時間
《投票を受け付けました。》
あちこちで声が腕輪から聴こえて来る。
そして、モニターから声がした。
《投票が終了しました。結果を表示します。》
1 喜美彦→5
2 久司→5
3 永宗→5
4 冴子→5
5 真智子→5
6 氷雨→1
7 正高→5
8 聖子→5
9 芽依→1
10敦→5
11武→1
12舞→1
13久子→5
14拓也→5
15光晴→1
16徳光→5
18辰巳→1
…良かった、正高も真智子さんだ。
久司は、ホッとした。
こうしてみると、狼はみんな徳光が言う通りに5、真智子さんに投票している。
《No.5は、追放されます。》
真智子は、大きく肩を落とした。
喜美彦は、ホッと体の力を抜いている。
こうしてみると、結構喜美彦に入れている人も居た。
やはり徳光の思考ロックは、怪しいと思った人も居たのだろう。
どちらにしろ、結果は白なのだが。
久司が思っていると、真智子が目の前で急に、フッと脱力してソファの背に沈んだ。
「あれ。」久司は、真智子を見た。「真智子さん?」
真智子は、目を閉じて動かない。
…ショックで気を失ったのだろうか。
久司が思っていると、モニターから声が続けた。
《No.5は追放されました。夜時間に備えてください。追放者はこちらで処置しますので、そのままソファに寝かせておいてください。では、また明日の投票時間にお会いしましょう。》
え…!
久司は、愕然とした。
つまりは、これが追放なのか。
敦が、黙って真智子に寄って行くと、瞼を持ち上げたりと何やらやっていたが、ため息をついた。
「…死んではいない。意識を失っているだけだ。どう遣ったのか知らないが、これが追放なのだろう。」
マジか。
久司は、つまりは意識を失ってそのまま、ゲームが終わるまで管理されるのだとそれで知った。
「それって…もしかして、腕輪か?」
正高が言うのに、敦は答えた。
「勘が良いな。私もそれしかないと思っている。恐らく健康管理のために何か仕込んであるのだろうが、これ程即効性の物は巷にないだろうな。これも新薬だろう。」
徳光が、息をついた。
「とりあえず、死んでいないのならいい。後は医者に巻かせるとして、9時には部屋に入らなければならない。もう一度、占い指定先を確認しておこう。」と、ホワイトボードを見た。「冴子ちゃんは喜美彦か久司、永宗は正高か芽依ちゃん、敦さんは拓也か光晴、氷雨は辰巳か…舞ちゃんが役職だったから、永宗の白先にするか。聖子ちゃん。その中で怪しいと思うところを選んで占ってくれ。もちろん、呪殺が出たら助かるが、今の時点じゃ全くわからないからなあ。とにかく色をつけることを最優先で。狩人は、オレか霊能者達の中で選んで守って欲しい。では、解散。」
時刻は、7時を過ぎたばかりだ。
久司は、夜時間までに風呂にでも入っておこう、と、リビングを出て自分の部屋へと、向かったのだった、
9時から10時は村役職の行使の時間だ。
部屋の閂は音を立てて嵌まったが、またどうせ10時には開くのでそれほど焦りはしなかった。
…冴子さんは、誰を占ってるんだろう。
久司は、気になった。
明日、もし冴子が自分に黒を打つようなことがあれば、すぐに猫又として出なければならない。
できたらそれは先延ばしにしたいので、占われたくなかった。
それとも冴子が狂人とかで、久司に白を打ってはくれないだろうか。
とはいえ、狐が黙って潜伏しているとも思えないので、恐らくもう一人の騙りは、狐陣営なのだろうと思った。
クローゼットに山ほどある新しいジャージに手を通してじっとそんなことを考えていると、扉からまたガツンという音が聴こえた。
…時間だ。
久司は立ち上がって、そうして扉を開いて廊下へと出た。
廊下には、正高と敦が出て来ていて、目を合わせると、久司に頷き掛ける。
階段へと向かうと、上から拓也も降りて来て、4人は足早にリビングへと向かった。
リビングに入ると、そこにはもう追放された真智子はいなかった。
医師達が、全員が部屋に入ると同時に回収して行ったのだろうと思われた。
正高はどっかりとソファに座ると、言った。
「ここの医者は仕事が早いな。で、明日はどっかに黒が出るかもしれんが、今夜は霊能者か?」
敦が、頷く。
「武がやたらと舞さんを庇っていて狂人っぽいので、恐らく護衛は入っていない。徳光も昨日守ってる可能性もあるし、護衛は入っていないだろう。私の予想は、久子さん守りだ。なので、武を噛んではどうかと思っているが、どうかね?」
拓也が、頷いた。
「それでいいと思う。縄が増えるのが厄介だが、多分護衛は入ってないとオレも思うし。それで実際、武は狂人だと思うか?」
敦は、首を振った。
「いいや。恐らく違うだろう。狂人だったら、いくら恋人でも、状況次第で占い師に出なければならないかも知れないのに、霊能者だと前日から言っておきはしない。もしあるとしたら、久子さんか佐知さんだろうな。まあ、一人噛み抜ければ霊能結果が確定しなくなる可能性もあるし、吊りきることになったら縄も消費できる。とりあえず、武を噛もう。」と、さっさと腕輪を開いて、打ち込んだ。「これで終わり。」
《襲撃先をNo.10から受け付けました。》
腕輪が言う。
いちいち入力した腕輪の番号まで毎回言うということは、やはり猫又襲撃での犠牲は打ち込んだ人になるのだろう。
正高が、言った。
「で?何か指示はあるか?」
敦は、頷いた。
「まず、私は明日拓也に白を出す。よって拓也は私目線で白になるので、明後日以降他から黒を打たれて拓也が狩人COした場合、狩人が他に出て対抗したら、私もその真狩人と対抗することになる。ゆえ、拓也を真確させるために自噛みも視野に入って来る。明日はそうならないだろうが、わからないからな。心積もりはしておいて欲しい。」
拓也は、頷いた。
「分かった。だから久司の方は猫又なのか?もしかしたら、指定されている冴子さんに占われるかもしれないし、真占い師かもだから。」
敦は、頷く。
「その通りだ。もっぱらの懸念はそこだったので、一番回避して尚且つ噛まれなくても怪しまれない役職に出てもらおうと思った。が…」と、久司を見た。「思いもよらず舞さんが騙りに出たので、君は難しい立場になる。三人COとなると面倒だ。必ずどこか吊らねばならないからな。なので、様子を見よう。もし黒を打たれたら出るしかないが、しかしもし切り抜けたらCOを促されても黙っているのだ。今日の立ち回りは目立ってしまったので、君が真猫又だと思った村人もいるだろう。出ないと怪しまれるかもしれないが、とにかく村のためだとかなんとか言い訳は考えておくといい。」
久司は、分かっていたことだったので頷いたが、言った。
「舞ちゃんを騙りって言うってことは、猫又は他に居ると思ってるってことですか?」
敦は、苦笑した。
「あれの何が真だったかと逆に問いたい。猫又かと聞かれてからも、何やら迷う顔をしていた。狩人と言うか、猫又と言うか迷っているように私には見えた。もし狂人だったら面倒なことをしてくれたなと文句を言いたい心地だよ。しかし狐か背徳者だったら、露出は有り難いが…どうも私は、そうではないように感じるのだ。」
正高が、眉を上げた。
「それはなぜ?」
敦は、頷いて答えようと口を開いた。