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夕方まで

久司が皆を眺めて座っていると、拓也が声を掛けた。

「いつまで座ってるんた?部屋に戻らないのか。」

久司は、ハッとして立ち上がった。

「あ、いや…誰が怪しく見えるのかなって。」

徳光が、苦笑した。

「一生懸命なのはいいが、疲れるぞ?ま、何か分かったらまた教えてくれ。夕方までにまとめてくれたら。」

久司は、頷いた。

「分かった。」

誰を黒塗りしようか。

久司は、思っていたが、氷雨が寄って来て、言った。

「あんまり正論ばっかり言ったら、だが噛まれるぞ?気を付けた方がいい。鬱陶しいと思われたら、狼の格好の餌食になるから。」

久司は、真面目な顔で言った。

「…だと、良いけど。」

氷雨は、え、と眉を上げた。

「え?」

真智子と歩いていた、冴子が、それを聞いて振り返る。

「久司さん、それって…」

「ストップ。」徳光が言う。「さあさあ、元気そうに見えてもお前らはみんな患者なんだし。みんな休め。夕方には起きて来いよ。あ、早めに夕飯食べておくのも忘れるな。6時だからな?」

拓也が、肩をすくめた。

「はいはい、そうだな。」と、氷雨を見た。「戻った方がいい。お前も顔色悪いぞ。」

氷雨は、まだ久司を見ながらも、頷いた。

「ああ…そうだな。」

冴子も、何か言いたげだったが、真智子と共にリビングの扉へと向かって行く。

徳光が、皆が出て行く背を見ながら、久司を見て軽く睨んで小声で言った。

「こら。落ち着けって。気取られるぞ?」

久司が、わざと驚いた顔をすると、徳光は笑って歩いて出て行った。

久司は、それの後を黙って追いながら、ちょっとやり過ぎぐらいが良いんだと自分に言い聞かせて、部屋へと戻って行ったのだった。


…とりあえず、伏線は張った。

久司は、思った。

やり過ぎぐらいやっておいたし、夜時間に敦から何をしていたんだと責められずに済みそうだ。

言った通りにしないと、怒られはしなさそうだが、あの整った顔で蔑まれたら、心理的にかなり来そうな気がする。

何人かは自分がもしかしたらと、思ってはくれているはずだ。

あれだけ舞を偽だと責めたし、対立することになっても偽だと知っていたから責めたんだと言えそうだった。

とりあえずの課題は、今夜白を吊ることだった。

できたら狐を始末したいところだが、狐は占い師に出ているか、それとも背徳者に囲われていると見るのが自然だ。

何しろ、早めに白先、もしくは役職に入っておかないと、狐は占われてさっさと消えてしまう。

二人しか居ないので、そこは必死のはずだった。

…狂人は、どこにいるんだろう。

久司は、ベッドの転がって考えていた。

狂人は、久司の経験上よく霊能者に出ていたものだったが、今回の霊能者は、怖かったのか始めから潜伏していたかったのか、確定していて出ていない。

それとも、佐知が真霊能者の一人で、狂人は出ているんだろうか。

もしくは、佐知が狂人だったかもしれない。

久司が悶々としていると、いきなり扉がちょっと開いた。

「…おい、久司。」と、正高が中に入って来た。今回は一人だ。「やり過ぎ。もういいからおとなしくしとけって敦が。真猫又が怪しんで来るぞって。」

久司は、体を起こした。

「あ、正高。」と、顔をしかめた。「でも、アピールしろって。」

正高は、腕を組んで言った。

「だからやり過ぎ。まあ、あれぐらいの方が鈍感な奴にも分かりやすくていいが、もういい。これ以上はわざとらしくなる。というか、オレ達から見たらわざとらしかった。内心ハラハラしたぞ。舞ちゃんが真猫又でなかったら、他に真が居るしお前は出ないかもしれないんだから。後から撤回が、難しくなるぞ。」

久司は、恥ずかしくなってふて腐れた顔をした。

「…準備しろって言うから。わかったよ、もう黙ってる。それより、敦さんは何か分かったって言ってた?」

正高は、答えた。

「それはまた夜にまとめて話すってさ。今夜は真智子さんか辰巳か喜美彦辺りになるんじゃないかって思ってる。お前はオレと票を合わせろ。拓也は敦と合わせるから。会話の様子でどこに入れるかだいたい予想はつくだろ?後々それが効いて来るかも知れねぇし、今夜は票を分けておこう。」

久司は、頷いた。

「分かった。なんだか思ったより詰まって来るよね…占い師が4人も居るからさ。狂人は何をしてるのかって感じ。佐知さんでなければいいけど。」

正高は、苦笑した。

「まだ序盤だ。詰まっているように見えるが、それはオレ達が狼だからだ。他から見たら、グレーは多いし役職は出てないし、全然見えてない。」と、考える顔をした。「狂人も…仮に舞ちゃんだったりしたら、めんどくせぇなあとは思ってる。」

久司は、確かに、と思った。

狼目線、舞は白だ。

だが、出方がお粗末なのでかなり偽物に見えていた。

もちろん、真猫又の線も追うつもりなので、噛みはしないが、狂人が生き残っても勝てないので、騙るつもりなら霊能者に出て吊られて欲しかった。

狼が舞を狂人だと判断する情報は出にくい。霊能者などとは違い、結果などない役職だからだ。

それなのに、背徳者、または狐の可能性まであるので、放置は危険だ。

このまま放置して、真猫又と対抗させるべきなのかと考えてしまうが、相手が誰でもあっさり負けてしまいそうだ。

いくらなんでもこの状態で、久司も出て三人とかなると、必ず吊りを入れる必要が出てくるし、そうなると久司は、出ないこともあり得た。

あれだけ言っておいて猫又じゃないとすっとぼけるのだから、理由も考えておかねばならなくなった。

これは確かに、もう黙っておいた方が良かった。

「…確かに、めんどくさいね。」

久司は、自分のことも併せてそう思って言った。

正高は、ふと何かを気取ったようにチラと後ろを見ると、小声で言った。

「シッ!」と、続けた。「誰か来た。」

何も聴こえない。

え、と口を開こうとすると、扉が開いた。

来たのは、徳光と拓也だった。

「あれ。」と、拓也は言う。「正高も居たのか?徳光さんとそこで会ってさ、久司に話を聞きに行くって言うから、ついて来たんだ。」

徳光は、入って来て扉を閉めた。

「なんだ、正高もここに居たのか。なんか有力な情報でもあるか?」

正高は、首を振った。

「いや、今はまだ何も。というか、こうなったらやっぱり真智子さんな、それとも辰巳か、あんまり発言聞けてない喜美彦かなって話してたとこ。徳光はどう思う?」

正高は、遥かに歳上の徳光にも呼び捨てだ。

敦がそうなので、友達らしい正高もそうなっているのかも知れないが、なにやら見ていてハラハラした。

徳光は、言った。

「そうなんだよなあ。白いところを避けてくと、そうなるとオレも思う。久司は村のためを考えてるのが伝わってて白いし、正高も落ち着いて自分の意見を忖度なく言ってる感じが人外に見えない。拓也も同じ理由で違いそうだし、光晴は強い意見を出して目立ってるから今夜じゃない。となると、特に黒くはないが、そんなに白くもないのかと思える、辰巳か真智子さん、喜美彦になるのかって思ったりしてた。でも真智子さんは回避COしなかったしな。本当に村人なのかもって思ったり…そう考えると、辰巳も素村を明かして吊り位置に自分から行ったりしてるし…一番何もないのは、喜美彦だろうか。」

正高は、頷いた。

「…確かにな。だが、回避しなかったのは仲間が既に出ていて出られないのか、さっき誰かも言ってたように舞ちゃんと両方人外でどっちが騙るのか決めてる場合もあるから。」

拓也も、頷く。

「それはそうだな。何しろ、両方人外だったら、どっちかが吊られるのは確定で逃げようがなかったけど、こうなったことで両方共から指定が外れたし、COしなかった方は白く見られて結局両方共助かる未来が見えて来たわけだから。むしろ、両方人外だったら、それしか回避の方法はなかったんじゃないか?」

言われてみたらそうだ。

自分が狼なのでそこまで考えていなかったが、村人目線では全く色が見えていないので、そんな風にも考えられる。

こうして見ると、拓也は自分が吊られやすいのでと言っていたが、さっきの発言といい、案外使える男のような気がして来た。

徳光は、手を打った。

「そうか、それだよ!両方人外だったら、片方が回避COしたら残った方は白くなる可能性があるから、ワンチャン賭けて来た可能性もある!広いグレーの中で絶対人外が居るのにみんな白いなあと困ってたんだが、だったらそれで狼二匹って考えたら簡単だ!」

そんな安易な。

久司は思ったが、正高が顔をしかめて言った。

「まだ決めつけるのは早ぇぞ。そんな簡単に尻尾を掴ませる狼だと思うか?普通に考えたら、仲間が居るわけだし入れ知恵されてるだろ。その仲間の一人が、もし敦だったら?あいつはかなり頭が切れる男だし、上手いこと指示してるはずだ。油断は禁物だ。確定するまで、役職者達も安易に信じるんじゃねぇ。間違ってたとき、ダメージがデカいからな。」

久司も、正高と意見を合わせないとと急いで頷いた。

「確かに、真だと信じたいけど初日から信じるのは怖いよな。」

それを聞いた徳光は、神妙な顔をした。

「…そうだな。よく考えることにする。他も考えてみるよ。じゃあ、またな。」

徳光は、そそくさと出て行く。

その顔は、他も考えようという様子ではなく、恐らく真智子と舞が両方人外でロックした状態なのだろうと思われた。

「…ある意味、扱いやすい奴だ。」

正高が、徳光が出て行った後の扉を見つめて、そう呟いた。

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