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久司は、昼食は、部屋へ持ち帰って食べた。

なんとなくピリピリした空気だったので、食事をしようという気持ちになれなかったのだ。

部屋で、ボーッとしていると、そこにいきなり扉が開いて、正高と敦が入って来た。

久司が驚いていると、正高が言った。

「今、みんな部屋に入ったりキッチンに居たりで廊下に居ねぇ。だから来た。敦が、言っときたいことがあるって。」

敦は、頷いた。

「久司、恐らく今夜は大丈夫だろうが、万が一の時にと思ってな。もし、怪しまれて投票対象に上がりそうになったら、狩人ではなく猫又に出ろ。それらしい言動を、今からしておくんだ。もしかしたらと村人に思わせるように、普段から振る舞っておくといい。より真実味が上がる。」

猫又?

「え、でも…真猫又が白い位置に居たら?」

敦は、答えた。

「対抗することになるのは仕方ない。だからこそ、議論外でも猫又っぽく振る舞えと言っているのだ。拓也には、とりあえず狩人対抗しかないが、そうなったら自噛み選択をして真狩人は吊りで始末する。明日、もしかしたら真占い師の指定が君たちに入った時のことも考えて、今から下準備をしておけと言うのだ。わかったな?」

久司は、困惑した。

「下準備って…いったい、何を?」

正高は、イライラして言った。

「何でもいい、お前が猫又だったらどう振る舞うのか考えて、思い込んで行動しろと言ってるんだ。お前な、生き残りたいだろう?ちょっとはがんばれ。こっちも頑張るから。オレはもう、議論でなんとかするから、お前達は猫又と狩人だ。わかったな?」

久司は、その迫力に思わず何度も頷いた。

「わかった。」と、あ、と思い当たって久司は続けた。「あ、敦さん、パン屋に役職を言うってやつ、提案しないんですね?」

敦は、答えた。

「誰も気付いていないから、今は保留にしている。だが、数日中にはな。もしそうなったら、その時君は必ず猫又だと明かすのだ。長居はできない。私達はもう行く。」

久司が頷くと、正高は閉じた扉に耳を当ててくっついた。

「…よし。誰もいない。」と、敦に頷き掛けた。「じゃあ行くから。」

久司は、慌てて言った。

「え、完全防音だから音なんか何も…、」

だが、二人はサッと出て行ってしまい、そこには久司だけが残された。

気になって廊下を覗いて見たが、そこには本当に誰も居ない。

久司は不思議に思って、扉を閉じて耳を押し当ててみたが、やはり何も聴こえなかった。

…なんだよ、全く。

久司は、ため息をついたのだった。


猫又っぽくと言われても、いったいどうしたらいいものか。

そうは思ったが、言われた通りにするしかない。

…それにしても、どうしてオレが猫又で拓也が狩人なんだろう。

久司は、思った。

別にまだ怪しまれてもいないのだから、それから決めても遅くはなかったはずなのだ。

不思議に思ったが、とりあえず皆と接触しないとその、猫又っぽい振る舞いもできない。

なので、仕方なく久司は一階へと重い足取りで降りて行った。


途中、階段を降りきったところで、徳光に後ろから声を掛けられた。

「お、久司!」久司が立ち止まると、徳光は階段を降りて久司に並んだ。「飯は食ったか?」

久司は、頷く。

「食べましたよ。でも、真智子さんと舞さん、どっちが怪しいかって考え込んでしまって。一人で居ても仕方ないから、降りて来ました。」

徳光は、頷いた。

「だよな。一人だと煮詰まるよな。オレはもう、明日からのことも見据えて考えてるぞ?占い師には、オレが占い先を指定しておこうと思って。もう、4人に誰と誰を占ってくれって指定して来たんだ。希望を聞いたら囲おうとするかも知れないだろ?」

占い指定をもうしてたのか。

久司は、驚いたが言った。

「マジか。あ、いやマジですか。さすがですね、早い!」

徳光は、褒められて気を良くしたようで胸を心持ち張った。

「そうだろ?この際勢いで狩人にも護衛指定しておこうかって。もちろん出したりしないけどな。あ、敬語なんか使わなくていいぞ。みんな平等だ。気を遣うな。」

久司は、頷いたが、猫又だと匂わせるとはどうしたら良いんだろうと、暗い顔になった。

だが、それをどう勘違いしたのか、徳光は眉を寄せて顔を覗き込んだ。

「…どうした?もしかして、何かオレに言いたいことがあるか?」

久司は、顔を上げた。

徳光は、真剣な顔でじっと久司を見ている。

久司は、どう言ったらいいのかと慌てた。

「え、いや、あの、別に何も。徳光さんを信じてますけど、でも、その…誰が聞いてるかわからないし。ただ、オレ…村が勝てるなら、噛まれても良いかなって。それだけで。」

徳光は、ジーッと久司を見ていたが、回りを見回してから、声を落とした。

「…わかった。大丈夫、誰も聞いてない。けど、オレ以外の前でそんなとこと言うんじゃないぞ。勘の良い奴もいる。とにかく、今日は何も聞かない。だから、黙ってろ。」

久司は、慌てて言った。

「え、その、狩人じゃなくて!その…。」

なんて言えば良いんだよ。

久司は、徳光が何を思ったのか分からなかったが、渾身の匂わせがあからさまだったかなと顔を赤くした。

いくらなんでも、徳光だってわざとらしいと思ったんじゃないかと思う。

だが、赤い顔の久司に、笑って徳光はバンバンと背中を叩いた。

「なんだよ、落ち着け。狩人だとは思ってない。噛まれてもってことは…まあ、オレは鈍くはないんだって。気にするな。」

鈍くても分かるようなことを言ってしまったから恥ずかしいんじゃないか。

久司は、徳光と並んで歩きながら、次はもっと上手くやろう、と思っていたのだった。


リビングには、時間前だったがもう、多くの人が居た。

正高も敦も拓也もいて、皆と話していたらしい。

徳光が、言った。

「お、まだ時間はあるのにみんな集まってるな。会議できそうか?」

永宗が、言った。

「今、武と舞ちゃんがキッチンに飲み物取りに行った。戻ったらこれで全員だよ。」

徳光は、頷いて空いている席に座る。

久司も、空いているのは拓也の隣りだったので、そこへ座った。

「もう、占い先を指定したんだって?」光晴が言う。「今、占い師達に聞いたところだ。」

徳光が頷いた時、キッチンから武と舞が深刻そうな顔をしながら出て来て、座った。

徳光は言った。

「みんな揃ったな。じゃあ、先に休憩中に振り分けた占い指定先を公表しとく。まず、冴子さんには喜美彦と久司、永宗には正高と芽依ちゃん、敦さんには拓也と光晴、氷雨には辰巳と舞ちゃんか真智子ちゃんの今夜残った方を指定した。狩人には、オレか霊能者のどっちかを選んで守って欲しい。そこは任せる。ということで、ここに書いておくよ。」

徳光は、立ち上がってホワイトボードに向き合った。

久司は、それを聞いて思った…敦があんなことを言いに来たのは、自分が他の占い師の指定先に入っているからだ。

敦自身は、恐らく拓也に白を出すつもりだろうが、久司は明日黒を打たれる可能性がある。

となると、今から伏線を張っておいたら、もし黒を出されても違和感なくCOできる。

準備は早ければ早いほどいいのだ。

それに、もし冴子が真占い師だったとしても、二択で久司が猫又かもしれないと思ったら、久司ではない占わないかもしれない。

黒を打たれるのは、遅い方が良いのだ。

だからこそ、議論の前にわざわざ言いに来たのだろう。

そして、狩人よりも猫又の方が回避に便利なのだ。

拓也のことは、白を打っておいて最悪吊るか自噛みで処理するつもりでいるようだったし、そうしたら敦の真証明にもなる。

久司のことは、決め打ちに勝てるように工作が必要だと判断したのだろう。

先々まで考えておかねばならないのだと、久司が気持ちを引き締めていると、徳光は占い指定先をそれぞれの名前の横に書いて、こちらを向いた。

そして、言った。

「じゃあ、真智子さんから。考えて来たか?」

真智子は、顔を上げた。

「…考えたわ。でも、やっぱり理不尽だと思う。だって、占い師に二人人外が居て、その白だって信用ならないのに、その人達は安穏としていて私達二人って、どう考えてもおかしいわ。確かに私には役職はないけど…村人だから騙ることもできないのに、酷いと思う。」

徳光は、言った。

「つまり、君は芽依ちゃん、久子さん、聖子ちゃんの中に二人人外がいると思うってことか?佐知ちゃんは噛まれてるから関係ないとして、久子さんは霊能者だし、となると芽依ちゃんと聖子ちゃん?」

二人が、驚いた顔をして真智子を見る。

真智子は、慌てて言った。

「いえ、必ずとは言ってない。でも、そこも話を聞いておくべきよ。敦さんは白いと思うわ、絶対囲ってないことが分かってるし。でも、他はわからないでしょ?そもそも、狐だって居るのに、絶対囲うと思わない?」

うーん、と、徳光は皆を見回す。

正高が、言った。

「…それは重々承知でグレー吊りを選んでるんだよ。まだ占い師の精査は早すぎるし、一応白先は残して他を吊ろうって。必ず人外が居るはずだからな。君は、提案するなら他のグレーの中で黒いところを指定し直して欲しいと言うのが正しいと思うぞ。」

徳光は、頷いた。

「その通りだ。グレーで黒いところは?」

真智子は、困ったように皆の顔を変わる変わる見る。

徳光は、それを見て続けた。

「…じゃあ、考えておいてくれ。次、舞ちゃん。」

舞は、武を見てから、頷いて、意を決したように口を開いた。

「…私は、役職があります!」

え、と皆が固まる。

久司は、もしかしたら狩人か、それとも猫又か、と顔を険しくしていた。



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