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とある田舎の農村にて、じゃがいも剥きを黙々と行っていた金色の髪の少女がポツリと呟いた。



「それで? どうするの? 結婚式、行くの?」


「へ、ヘレン! 声が大きい!」


「あー、ごめん! 他の人にはまだ教えてなかったんだっけ?」



ヘレンと呼ばれた少女は慌てて口を抑え、辺りを見渡す。

幸い周りには誰もおらず、2人は安堵する。



村にやって来て2年。

イレーナは村長の畑の手伝いをして生計を立てている。

そしてヘレンもまた、畑仕事を手伝っている者の1人である。


周囲に誰も居ないのを確認した後、ヘレンは芋の皮むきを再開しながら言葉を続ける。



「それで行くの? あたしは反対だけどさ」


「わ、私だって行きたくないよ」


「じゃあ断りなさいよ。一方的に婚約破棄を押し付けておいて。それでイレーナはこんなド田舎に飛ばされたってのにさ。今まで連絡も無かったのに結婚する報告はして来て。しかも! 1週間前よ! 普通有り得ないでしょ! こっちの都合は完全無視じゃない。それに友人代表挨拶! 全てにおいて完全にイレーナの事をバカにしてるとしか思えない!」


「や、やっぱりそう思うよね」


「絶対そう! 行くの止めときなって。絶対に良いことないよ」



ヘレンの言葉にイレーナは頷く。

実際、イレーナ自身もこの結婚式へは不参加の方向で行きたい。

けれど…現実は残酷なもので、イレーナに選択肢など与えてくれはしなかった。



「そう言えば、明日迎えが来るんだっけ?」


「うん。何でも久々の王都だろうから観光したら? って…。村長さんにはもう伝えてあるんだけど……」


「誰のせいで観光気分で故郷に足を運ぶはめになってるのか教えてきてやりなさいよ。イレーナ。絶対に一発は拳を入れるべきよ」


「あははは。それ、村長さんも言ってたなぁ」



当の本人よりもイライラしているのではないだろうか…。

ヘレンの芋の皮むきのスピードが明らかに速くなってきている。



セシルから届いた手紙を見たとき、本当になんて身勝手な内容だろうと思った。こちらの都合などお構いないし。2年間なんの音沙汰もなかったくせに結婚式を迎えるにあたって手紙を寄越してくる。しかも、友人代表挨拶を任せたいだなんて。




「友人…かぁ」



思わずポツリと零れた言葉に、イレーナはハッとする。

そして同時に苦笑を浮かべた。


そんなイレーナを横目でヘレンはポンとその頭に手を置いた。



「ずっと片思いしてたんだもんね。そう簡単には諦められないか」



ヘレンの言葉にイレーナは小さく頷いた。




友人としてしか見れない。そう言われて婚約破棄されたでは無いか。

しかもあれから2年も経った。

セシルは田舎送りにされた自分に対して今まで1度も連絡を寄越した事は無かった。手紙を寄越して来たかと思えば、結婚の報告。そして友人代表挨拶を任せたいという内容ときた。


そんな男のどこが良いと言うんだ。



……そう思っていても、積み重ねられてきた長年の思いは……どうやらそう簡単には捨てる事が出来なかったらしい。



本当はもう未練なんて断ち切っていた筈だった。

けれど、こうして実際に結婚式の招待状が届いたという事実と【友人】という自分の立ち位置に……気づけばイレーナの瞳からは涙が流れていた。




「…よし! こうなったら見せつけてやろうよ」


「み、見せつけるって何を?」



突然立ち上がったかと思えば、イレーナの顔を覗き込み、ニッと白い歯を見せて笑うヘレン。


そしてヘレンの言葉の意図を汲み取れず首を傾げる。



「父ちゃんー! 私とイレーナ、先に休憩に入ってもいいー?」


「構わないよ。ゆっくり休んで来なさい」



ヘレンは畑を耕していた父親にそう声を掛けると、了承を得るなりイレーナの手をとる。



「よし、じゃあ行こっか!」


「ど、何処に!?」



ヘレンに手を引かれるまま、イレーナは駆け出した。



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