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ほんわりさん

 愛のオークションサイト『アイオク!』は今、話題沸騰中だ。


 っていうか賛否両論というやつか。否定する声もかなりある。


『愛はお金で買うものではない』なんて、当たり前のことを言うが、俺はそんなの気にしない。


『マッチングアプリとどこが違うのか?』という声には明確に反論できる。


『アイオク!』は出会いの場のようでいて、違うのだ。


 一方的に、落札者は愛を買うことが出来るのだ。


 落札された商品は、規約に従って、落札者を無条件で愛さなければならないのだ。






 今日も俺は『アイオク!』で彼女を探す。

 といってもまだ一回も落札したことはないんだけどな。

 初めての彼女をきっとゲットする!


 トップページのジャンル一覧から迷わず『恋人』を選び、『彼女』『彼氏』『同性』の中から『彼女』をクリックした。


 色んな女性の写真が縦にズラリと並ぶ。

 綺麗な娘は競争率が激しい。

 どう見ても加工で実物と同じわけがない写真の娘にも入札が殺到している。男ってバカだな。現在価格が20万円超えてるわ。


 こんなの誰が入札するんだと思ってしまうようなオバサンにも結構値段がついている。小綺麗なオバサンになるとなかなかの高値だ。


  デブ専、ブス専、出っ歯好きとか色々いるもんだなと思わされる。

 だが、プロフィール欄が胡散臭かったり、業者の匂いがするものには入札がついていないことが多い。やはり見た目より中身だよな。


 俺が探しているのは『そこそこの地味女子』だ。

 年齢は31歳の俺より少し下ぐらい。

 優しくて、笑顔が可愛ければそれでいい。

 家事は俺得意だから、癒やしてくれさえすれば、それでいい。


 だけどなかなかそういう普通な感じの娘っていないんだよな。

 大抵の女は自分の愛を売る気マンマンでギラギラした印象だ。

 どうせ返金可能期間の3日間が過ぎたら愛し方がテキトーになって、ハナクソでもほじりはじめるんだろうと思えるような女ばっかりだ。


 そう、『アイオク!』で愛を買えるのは、実質3日間だけなのだ。


 返金可能なその期間を過ぎたら、どんな不具合が出ても落札者は支払った金を返してもらうことが出来なくなる。


 だから出品者は皆、その期間が過ぎたら変貌するのだという。

 愛し続けないと規約違反で通報され、二度とアカウントを取得することが出来なくなるので、あんまりなことは出来ないが──

 最初の3日間は返金リクエストされないように全力で愛を売り、4日目になったらハナクソをほじったり、それを食べてみせたりして嫌われればいいわけだ。

 10万円で落札されて、ずっと愛し続けなければいけないのなら割に合わないが、4日だけでいいなら日給2万五千円のおいしい仕事だ。


 俺はチャンスが欲しい。


 3日間を、俺を見てもらえる『お試し期間』にしたい。

 いいと思ってくれたらそのまま本当の恋人になってほしい。


 だから計算高そうな女は避ける。


 しかし、画面に並ぶのは、いかにも計算してますみたいなツラの女ばかり。


 純朴そうな娘は──



 いた!



 俺は逸る手つきでその娘の写真をクリックした。



名前:ほんわり架純

年齢:27歳

趣味:読書

特技:動物と話せる

一言:ほんわりな愛で包んであげます。カラダ目当て禁止



 初恋のあの娘にどこか似ていた。

 言葉通りほんわりした雰囲気で、笑顔が天使のように可愛い。

 カラダ目当て禁止というのは『ボディータッチ禁止』とは違う。可能性はあるということだ。

 何よりそんな不純なことは俺も考えていない。心に染みるような愛が、俺はただ欲しいのだ。


 残り時間3日で現在価格は5万円だった。

 安いほうだ。容姿が地味でフツーだからだろう。人気のある娘は同じ残り時間で10万円を超えている。


 20万円までは出せると思った。

 俺は迷わず入札に参加した。







 83,210円で俺が落札した。




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