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第5話:金のもじゃもじゃ

 「えぇー? 私が優那の彼氏?」


 現状を理解できていない岬玲那に、大まかな状況説明をした。

 妹である優那との関係が恋人というのは、やはりどうかと思うとのことだ。

 優那、玲那の岬姉妹は、なんと身長、体重、スリーサイズが全く同じ(拓海調べ)で、違いといえば髪型と、目の形くらいだ。

 髪型は優那は、肩くらいまでの長さの後ろ髪と、あとはツインテールが特徴的だ。玲那は、髪の毛を後ろでポニーにしている、髪の長さは柊くらいあり、腰までとどいている。

 髪の色は姉妹同じで、赤っぽい茶色。目は妹が若干たれ目で、姉が若干釣り目だ。


 「彼氏とかじゃないよっ……ただ一緒に行こうってだけで……」


 「ふーん。ま、私はいいんだけど、冬真……葵は大丈夫なの?」


 玲那が俺に視線を向ける。すでに騒がしいのと、騒がしくしそうな2人が来ることになってるから、今さら問題にもならない。とりあえず頷いておく。


 それとほぼ同時に教室のドアが開き、葵がやってきた。

 職員室での用事は終わったらしい。


 「ごめん! 待った?」


 「いや全然。それより、こっちから謝る、わるい」


 俺の行動の意味が分からないのか、葵の頭にはクエスチョンマークが浮かんでいる。


 「今日のデート、こいつら来るってさ」


 いい終わると、箒が飛んできた。掃除用具庫から、一瞬で引っこ抜いて投げたらしい。


 「でででっデートって何なのよ!」


 「は? 行かねえの?」


 「行くわよっ! でもそんな……みんなの前で……」


 「いや、だからこいつら来るんだって」


 「は……?」


 今初めて聞きましたという顔だ。さっきも言ったじゃねえか。


 「謝ることってそれ?」


 「そう、わりぃ」


 「……いいわよ。別に。人が多いほうが、楽しいもん」


 言ってることと態度違わねえか? 明らか拗ねてるだろ。

 というか朝は、2人きりがいいって言ってなかったか? 俺の記憶違いなら別にそれでいいけど。


 少し間が空き、なんだか拗ねていたようだった葵が、思い出したようにこっちを向いた。


 「そうそう、なんかダストシュートから金色のもじゃもじゃが出てるのよ」


 「「金色のもじゃもじゃ?」」


 俺と柊がハモったのは、心当たりがあるからだ。ダストシュートにぶち込まれてもおかしくない金色。どう考えても、さっき連行された佐山拓海だ。


 「なんか唸ってて、気味悪かった」


 「……そうか、とりあえず俺はそのもじゃもじゃを救出してくる」


 「え!? 危ないって、あれ絶対七不思議のなんかだよ」


 「金色のもじゃもじゃが、ダストシュートにぶち込まれてる七不思議って、どういう状況だよ」


 多分恐怖よりも先に笑いが来るな。


 「もじゃもじゃ私も見てぇ!」


 「やめとけ、がっかりするぞ」


 「いいじゃん、私ホラーとか平気だから」


 いや、最悪のコメディーだから言ってるんだけど。


 しかし拒む理由も無ければ、そこまで拒むつもりも無い。なぜなら拓海がダストシュートに突っ込まれているだけだからだ。


 「まあいいや。じゃあ行こうぜ」


 「どんなのかなー、宇宙生物とかかな?」


 残念ながらただの地球人。まぁバカさは宇宙レベルかもしれないけど。

 別に金のもじゃもじゃの正体を、すぐに明かせばよかったんだけど、しなかったのは、万が一拓海じゃなかったときの事があるから。

 あとこいつの目が尋常じゃなくキラキラしてたからだ。


 なんだそれ? ってな感じでがっかりされるのは拓海の仕事だ。





 問題のダストシュートは、廊下を進んで最初の角を曲がったところにある。

 案の定、見覚えのある金髪が飛び出ていた。


 「や……やばいよっ! う、腕の力が抜けてきた」


 「すげ……宇宙レベルのバカだ」


 「ああ、そうだな」


 宇宙レベルのバカは、ダストシュートから頭の先だけを出している。

 多分中でがんばってるんだろうな。


 「おい、拓海」


 「その声は冬真……引っ張り上げてくれ!」


 「美少女と俺、どっちに引き上げてほしい」


 「美少女!」


 そうかい。じゃあ玲那に頼むしかないな。


 「私がやるのか……?」


 「こいつのリクエストだ」


 渋々了承してくれた玲那は、拓海の金髪をつかむと、思いっきり引き上げた。

 うわぁ。痛そうだ。


 「いたたたた! はげるはげる!」


 「おらっ!」


 顔が完全にダストシュートから抜けた。そうなる事によって、美少女と拓海の対面となる。


 「いたた……び、美少女!?」


 「何で……疑問系なのよっ!」


 玲那は拓海の頭を両手で押さえると、完全にダストシュートの中に押し込んだ。

 拓海は去年1年で、それなりにこんな目にあっているが、そのうちの何割かは玲那の手によるものだ。妹がおとなしい分なのか、玲那は加減を知らない。


 そのため拓海は玲那が苦手だ。もちろん俺はそれを知っていた。


 「う、うわああああああああ!」


 すごい速さで落ちていく。まあ拓海は結構頑丈な体だし、大丈夫だろ。ダストシュートの出口は下にあるわけだし。


 「じゃ、帰るか」


 「そうだな」


 俺と玲那がダストシュートに背を向けて、歩き出そうとしたとき、ダストシュートの入り口から手が出てきた。

 ガコンという音を立てて、ダストシュートの入り口が開く。


 「まだだぜ!」


 だが、別に足を止めるほどの用事でもないので、俺たちは教室に戻った。





 

 俺と玲那が教室に戻ってから少しすると、拓海が走って戻ってきた。


 これでメンバーが全員揃ったわけだが、一体どこに行くつもりなんだろうか。


 誰も発言しないので、柊が提案した。


 「そうねぇ……じゃあホテルに」


 「気が早い!」


 「あら、行くつもりだったの?」


 「行くわけねえ!」


 俺の怒号で、なぜか全員がほっとしたように息をついた。

 こいつらの中では、デートからラブホ直行しか考えていない拓海と俺は同等のレベルで考えられているのか?

 心外だ。


 「やっぱりゲーセンとか?」


 「うわあぁ……やっぱあんたもてないんだねー」


 「ちょっ! それひどくねぇ!?」


 玲那の鋭い一撃に、拓海がうろたえながらの反論。そこまで急所を抉る事は無いだろうとも思うが。


 「俺は根っからのチェリーボーイさ!」


 正論に思わず俺は「まさにその通りだな」と呟いてしまった。

 「そうだろう?」と拓海は嬉しそうだが、チェリーボーイとプレイボーイを間違えたのでは無いことを祈っている。


 「若い男女が3人ずついることだし」


 柊がここまで言うと、玲那が立ち上がり抗議する。目が必死だ。


 「私は女だぁ!」


 「知ってるわよ。でも今日は男子扱いになるわ」


 「ひどい! ひどすぎないそれ!?」


 「トイレも男子用よ」


 「うわぁー! いやだ!」


 最後のはまずいだろう。


 「とりあえず男装してきてもらうわ」


 「えぇー……そんな……」


 「でもお姉ちゃん……カッコいいと思うよ……」


 「うっ……」


 玲那は心のそこから嬉しくなさそうだ。優那ちゃんの最後の1言は、的確に玲那にダメージを与えているし。

 そして玲那を男扱いするというくだりから、妙に生き生きしている柊はどうかしたのだろうか。


 「まあ玲那ちゃんの扱いは置いておくとして、とりあえずご飯食べに行こ」


 葵が提案した。まぁ腹も減ってるしいいだろう。

 時間的には結構早いけど、どうせだらだらと長居する事にはなるんだし。


 「じゃあ決定ね。1時間後に、現地集合。場所は一番近いガストでいいでしょう?」


 柊の提案に全員頷く。

 妙にリーダーシップがあるし、物事もパパっと考える。たまに普通に感心してしまうな。


 「別に俺はこのままでもいいけどなー」


 「そう? じゃあ佐山君、私の準備……手伝ってくれる?」


 「ぷふっ!」


 拓海が妙な声を出した後、鼻を押さえて廊下に飛び出し、どこかに走っていってしまった。

 変に想像の働く奴は大変だな……





 それから拓海以外のメンバーは、教室を揃って出て、俺と葵は一度俺の家に向かった。

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