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私的哲学

悪いのは誰なのか

作者: 羅志

 これは例え話である。



 AとBは、同じグループに所属していた。二人はグループに所属し初めて出会った初対面の関係である。

 ある時、AはBから齎された食材を使い、料理を作った。

 特別食材の扱いに対し注意事項や禁止事項を聞いていなかったので、Aは自身の感覚に基づき、料理を作り、自身には非常に美味に感じるものを作り上げた。

 しかし、Bにとってはその料理は毒であり、Aの取った調理法には、Bには到底受け付けられるものではなかった。この料理の毒がきっかけで、Bは病気になり、夢を一つ諦めることになった。

 Aが「自分が夢を諦めたのはお前のせいだ」とBから連絡が来たのは、グループが解散し、半年以上過ぎた頃。最初に料理を作り提供してから、一年近く経過した頃だった。



 AとB、罪はどちらにあるのだろう。

 Bの視点では、毒を盛ったAが罪人だ。Bの視点をより深く語られたなら、Aだけに罪があるだろう。


 けれど、この話はAの視点での話だ。

 Aは全面的にお前が悪いと、お前加害者であると言われたが、本当にそうなのか。

 わたしは自己防衛を怠ったBの方にも、罪はあると認識している。



 なにせ、AはBから食材を拝借した際、Bから注意事項などを伝えられていない。

 AとBの所属していたグループは、互いが持ち寄った食材で料理を作るグループだ。持ち寄った食材はグループのメンバーであれば自由に使用が可能、という規約があった。

 Bが持ち寄った食材そのものは、Bにとって毒ではなかった。けれど、扱い方を誤れば毒となるものだった。

 Aはそれを知らなかった。食材の扱いに対する注意事項などを、Bから伝えられていなかった。知らない以上、Aは自分の慣れた調理法や、自分の好きな味付けで料理をした。その結果が毒を生むなど、Aには予想の出来ないことだ。

 提供され、それを食べ、毒だと認識した瞬間から、BはAが自分とは相容れない者だと分かっていたはずだが、それに特に対処していない。

 AはBから、自分の食材の使用の禁止を告げられたことも、調理法の変更を求められたことも、記憶にない。遠回しに言われていた可能性は大いにあるが、伝わっていなければ言ったことにはならないだろう。

 また、BがAの意図せず盛った毒によって夢を諦めることになるまで、かなりの時間があった。Aにその料理に関係する情報を消させることも、二度と作らせないことも出来た。グループの主催と話し、Aをグループから追い出すことだって出来た。そもそも、Aをグループに入れないよう主催に言うことも可能だったのだ。Bはグループの主催と、Aよりも懇意だったのだから。

 そういった対処、対応をしていないにも関わらず、自身が夢を諦めてから、「お前が悪い」「お前のせいだ」とAにだけ罪があるとするのは、些かおかしな話ではないのか。



 だからわたしは、この話で罪があるのはAだけではなく、Bにもまた罪はあると考える。

 単にわたしがAの立場に該当する人間であり、自己防衛の為に他にも罪がある、と考えている可能性は大いにある。

 それでも、Bには自分を守る為にやれることがあったのは事実だ。

 A視点では、それを怠っている、対応が遅すぎる、と考えずにはいられない。



 これは、例え話である。

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