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生死の静止

地中海の入り口…海面上で、ガンスロンは急ピッチで、追加のミサイルポットを肩当てや腕につけ、背中にも付けていた。その時、思いもよらない攻撃を上空から受けた。


何と、鷹の方から、襲い掛かってきたのだ。


「レーダーには、映ってなかったぞ!」


戸惑う潤一郎は、飛行艇に移動していなかった。


ほぼ直角に、落下するように落ちてくる鷹の翼から、発する衝撃波が、ガンスロンを海中に押し付け、動きを封じた。


「おじいちゃん!」


コクピットのシートの上で胡坐をかいていた真由は、思わず前のめりに倒れ、ガンスロンキャノンを撃つ拳銃に、思い切り顔をぶつけた。


「真由!早く座れ!」


「きゃー!」


鷹の爪が、ガンスロンの肩を掴み、空中に持ち上げる。 


まだ装着が終わってなかった背中につけるはずのミサイルポットが外れ、海に落ちていった。


ガンスロンに描かれている二つの日の丸に、鷹の爪が突き刺さっている。


「チッ」


ガンスロンの後頭部にいる潤一郎は、肩当てを見て、


「コーティングは…大丈夫か…」


一応、爪の入り具合を確認した。


「奇襲は…こちらが、得意だったのに…」


潤一郎は、真上に見える鷹の首を睨んだ。


「こっちはもう…印を3つ持てますから、狙われる側になったんですよ」


隣で、まどかがコーヒーを飲んでいた。あれだけ揺れたのに、まったくこぼしていない。


戦いに入ると、恐るべき集中力で、戦闘方法を決め、突破口を開いていくが、普段は物静かだ。


しかし、ガンスロンの殆んどを動かしているのは、まどかなのだ。


潤一郎と違い、ゆっくりとコーヒータイムを楽しんだ後、まどかは上を見て、


「どこに連れていく気かしら?」


クスッと笑うと、コントローラである端末機を開いた。


立ち上げた瞬間、


「あたしのガンスロンを傷物にしやがって……ぶっ殺す!」


まどかのかけている眼鏡のレンズが、システムの起動とともに、光る。


「真由ちゃん!コクピットに座った?」


「はい…何とか…」


顔を押さえながらも、真由はシートに座った。


「左手の毒針を、下から敵に、突き刺して!」


まどかの命令に、真由は頷くと、レバーを握り締めた。


「わかった!やります!」


真由は、レバーを上に動かすが…ガンスロンの左手を真上にするのが、むずかしい。それに腕につけた追加ポットが邪魔をしていた。


基本は前に、殴るしかできなかった。


「キーイ!」


鷹は鳴きながら、翼をはばたかせた。


「くそったれが!」


無理矢理、上にレバーが折れるぐらいに回すと、ガンスロンは右手を上げた。


「食らえ!」


右手の先から、針が飛び出し、鷹の腹の辺りに、突き刺さった。


「ぎゃあああ!」


断末魔のような声を上げると、鷹は空中で苦しみだし…ガンスロンを離した。


「チッ!致死量ではなかったか」


まどかは舌打ちした。


「毒針を持つロボットなんて…あり得ないでしょが!」


苦しむ鷹を、モニターで見てると、真由はかわいそうに思えてきた。


しかし、それどころではなかったのだ。


ガンスロンは海面に向けて、急降下していく。


このままでは、やばい。


「お、おじいちゃん!」


真由は叫んだが、潤一郎はまどかに圧倒されていて、何も言えない。


「心配しないで!」


ディスプレイに、ガンスロンが映り、まどかは各ポイントを、マウスでクイックした。


すると、ガンスロンの各所から、制御用バニーアが点火し、体勢を整えると、ガンスロンの下半身である円盤の下にある巨大な噴射口が、炎を上げた。


落下速度がおさまると、ガンスロンの両腕につけたミサイルポットが開いた。


「追尾ミサイル発射!」


両腕のミサイルポットから、無数のミサイルが、もがき苦しんでいる鷹に向かって放たれた。


ミサイル発射後、両腕のポットを捨てると、ガンスロンは水中に、着水した。


ミサイルに気付いた鷹が、何とか避けようと、猛スピードで上昇し、逃げる。


そして、翼を広げ、竜巻のような突風を起こすと、煽られたミサイルが、互いにぶつかり、誘爆する。


閃光が、昼間でありながら、太陽よりも輝いた。



「甘い!」


ミサイルが誘爆する寸前、まどかは、ガンスロンの背中にあるミサイルポットを開いた。


先程と違う軌道を描きながら、閃光を隠れ蓑にして、ミサイルは鷹の頭上と、背中に当たった。


断末魔のような悲鳴を上げると、爆発の中から、鷹の巨体が落ちてきて、海面に激突した。


その瞬間、真由は顔をそらした。


苦戦すると思われた戦いは、スピード勝負にはならずに、圧倒的な物量の前に、あっけなく幕を下ろした。


「かわいそう…」


真由は、海面に激突し、血を流しながら、飛び上がろうとばたつく鷹を見て、レバーから手を離した。



ガンスロンの両肩についたキャノン砲が、海面でもがく鷹に向いた。


しかし、真由は飛び出してきた拳銃状のレバーを握らない。


「何をしている!真由!撃て!」


潤一郎が叫んだ。


真由は、画面から顔を背け、目をつぶった。


鮫の時は、ゲームのように興奮したのに……鷹は駄目だった。


血塗れになり、鳴き叫ぶ鷹を撃つことはできない。


「真由ちゃん…」


画面が、まどかの顔に変わった。


「鮫や虫、爬虫類は、撃てて…鳥は、駄目なの?」


「かわいそう……」


「かわいそう?あたし達は、戦ってるのよ!どちらが、生き残るかの!そんな下らない感傷なら、捨てなさい!」


まどかの言葉に、真由は耳を塞ぎ、首を横に降った。


「真由ちゃん!」


まどかは、歯ぎしりすると、マウスを動かした。


「まどか…」


「仕方がありません…。こちらからは、照準がつきませんが……撃ちます」


マウスが、ガンスロンキャノンの右側をクイックした。


「仕方あるまい」


潤一郎はため息をついた。


「キャノン撃ちます!」


まどかはマウスを、ダブルクイックすると、ガンスロンの右の砲台から、光の槍が放れた。


しかし、光の槍は急所を外れ、鷹の翼を突き破り、炎上させた。


さらに苦しみ悲鳴を上げる鷹の声に、真由は耳を塞ぎながら、丸くなった。


「仕方がありません!」


まどかは、さらにマウスを走らせると、


「残りのミサイルを使います」


ガンスロンは、ミサイルポットにある残りをすべて、発射させた。


「一発で、楽にしてあげたかったけど……」


(ごめんね)


まどかは、ミサイルの雨の中で、死んでいく鷹を見つめた。



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