漫才 「最中」
文字数制限で「ツッコミ」を「ツコ」にしました。
ボケ「ちょっと聞いて欲しいのやけど、ええか」
ツコ「なんや」
ボケ「実はおかんが欲しいお菓子があるんやけど名前が分からへんのや」
ツコ「ほう、それなら俺も一緒に考えたろか」
ボケ「いや、ええわ」
ツコ「ええんかい、じゃあなんで聞いたんや」
ボケ「和菓子で中に餡子が入ってて、薄茶色のパリパリした皮で包まれてて」
ツコ「なんや結局考えて欲しいんか。でもその特徴は」
ボケ「最中やけどな」
ツコ「なんや、最中ってわかっているかい」
ボケ「最中やという事は分かっているんや。ただ買った店の名前が思い出せへんのや」
ツコ「どこで買ったか思い出せへんのやな」
ボケ「いや、店は覚えているねん。駅裏の和菓子屋で、昔からよく行っているねん。でも、この前に行ったら閉まっててな」
ツコ「そうか、昔からの店を辞めたら寂しいわな。あの味がもうないと思たら、また食べたいわな」
ボケ「いや、いつでも食べられるねん、今日も来る前に食うてん」
ツコ「なんや閉店したんと違うんかい」
ボケ「いや、この前夜中の12時に行ったら閉まっててん」
ツコ「深夜やないか。和菓子屋が深夜に開いている訳がないやろ」
ボケ「でもこの前に代替わりしたから、深夜でもやってへんかと思ってな」
ツコ「そうか代替わりしたんか。
先代が年を取ったから、次の若い世代に譲ったんやな。それで味が変わったんか。
でも、いつまでも年寄りは無理やから、若い世代に任さなあかんのと違うか」
ボケ「でも、新しい店長80歳やねん」
ツコ「新店長80歳なんか。
80言うたらとっくに引退している年やで。そうしたら前の店長はいくつやねん」
ボケ「前の店長は俺の連れで35歳やねん」
ツコ「ええ、35歳で引退。35言うたらこれからの歳やないか。それを引退って。その代わりに80歳って」
ボケ「いやそいつは家業やから仕方なく和菓子屋やっててん。本当は違うことをしたかってん」
ツコ「そうか、それやったら味も人気も今一やろうから諦めるのも大事かもしれんね」
ボケ「いや、あいつの作る最中は美味しくて、開店と同時に行列ができるねん」
ツコ「ええ、人気やったんかい。
けど、店長が辞めたら味が落ちたって言われるんちゃうか」
ボケ「いや、新店長も同じ味を作れるねん。常連も味が一緒や言うて評判やねん」
ツコ「そうか、新店長も長い間頑張って来たんやからな」
ボケ「十日やけどな」
ツコ「え、十日」
ボケ「そや、十日であの味を作りよった」
ツコ「十日って、十日で味を作るってどんなに簡単やねん。簡単すぎるやろ。それか余程の天才やろ」
ボケ「天才やったんやろな」
ツコ「それを夜中の12時買いに行ったんか」
ボケ「まあな、一個なら余ってへんか思って」
ツコ「余ってへんやろ。
それで、聞きたいのは何やねん」
ボケ「俺の連れが好きなご飯屋があるねんけどな」
ツコ「それ思い出せへんのやな。今度こそ俺が一緒に考えてやろうやないか」
ボケ「イタリアンの店で、全部が安くて、特にドリアがめっちゃ安い」
ツコ「もうわかった、それは」
ボケ「サイセやねんけどな」
ツコ「言うなよ。おれにも考えさせろよ。分かっているなら聞くなよ」
ボケ「そのサイセで連れが勧誘されたんや。絶対に儲かるから株を買えって言われたんや」
ツコ「それって怪しい未公開株とかとちゃうの。
もう直ぐ公開して値上がり確実やから今のうちに買ったら儲かるって言うのちゃうの。そんなん買ったらあかんて。
ましてサイセで誘われたんやろ。相手も金ないの確実やん。絶対に買ったらあかんて」
ボケ「そうかな。おれもよっさんに言われて買おうか迷てんねん」
ツコ「あかんて、よっさんなんて怪しい奴を信じたらあかんって。
ちなみにどんな株を勧められたんや」
ボケ「吉興行の株やねんけどな」
ツコ「え、吉興行言うたら俺らも入ってる芸能事務所やないか」
ボケ「せや。よっさんは絶対に俺らは売れるって。そうしたら株も上がるから買えって」
ツコ「ちょっと待って、よっさんって誰。俺らの知り合いなん」
ボケ「本名は吉崎浩やねんけどな」
ツコ「ちょっと待って。吉崎浩言うたら常務取締役やん。俺ら芸人を指先一つで動かす、神さんみたいな人やん」
ボケ「せや、でもお前には怪しい奴らしいけどな」
ツコ「ちょっと待って。吉崎常務に睨まれたら俺の芸人生命絶たれるから。怪しいと言ったの内緒にして。
それに、吉崎常務が知ったら俺ら仕事なくなるで」
ボケ「いや大丈夫や。俺は新しい相方と組むから大丈夫や」
ツコ「え、新しい相方って誰なん」
ボケ「俺の連れで元和菓子屋の店長なんや。
それでお前に聞きたいのは吉崎常務が好きなのは栗入りこし餡最中か粒餡の一口最中か知りたいんやけどな」
ツコ「いやそんなんどっちでもええから。お前は新しい相方と組んだら俺はどうなるの。吉岡常務は粒餡が好きやけど、そんなんどっちでもええやん。
俺はどうしたらええの」
ボケ「それだけ分かったらもうええわ」
ツコ「いや、お前が終わらさんといて」
商標が駄目なので、某芸能事務所と某ファミレスの名前が使えませんでした。仮名で架空の名前にしました。