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アルテミス  作者: 田中嘉彰
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逃げるヨシュア

「応援はまだですか?」火星軍の残り少ない戦艦の副艦長がいった。次の核攻撃でこの船も破壊されるかもしれないのだ。

「現在、最も近くにいるのは火星から200万キロのところにいる、第4艦隊です。こちらに向かってはいますが。到着には時間がかかります。」船のコンピュータが答えた。「間に合わない・・・」艦長は言った。

 

 アルテミスの頭の中には、焼かれてゆく人々の叫びと憎悪が流れ込んできた。

「やめてよ!私に何が出来るって言うの!何も出来ないわ。あなたたちの指導者にでも泣きつきなさい!」堪らない不快感だ。怒りと苛立ち、焦燥感のようなもの。


「アルテミスー、大丈夫―?」部屋の外にはタカシとリクトがいた。彼らもアルテミスの異変を感じ取ったのだ。


「ドアが開かない。何で?」タカシが言った。「透視してみたけど、特に壊れているようには見えない。それに中も透視しにくい、スゲエノイズだ」これはリクト。

「ホントに?」タカシも透視してみたが、確かにノイズがひどくてよく見えない。でもアルテミスらしき人が、何者かに襲われてる? 

 

 リクトは力を使って無理やりドアを開けようとしたが出来なかった。何らかの力が部屋を覆っている。「部屋を覆ってるのは、アルテミスの力だよね?だって彼女しかいない・・(アルテミス!返事してよ。)」タカシは力を使って話しかけた。しかし応答はない。部屋の中では相変わらず何人かが暴れているように見える。

 

 アルテミスは海の中のような所にいた。時々、真っ赤なインクや、真っ黒なインクを垂らしたような色が漂う空間。

 

「だから、しつこいのよっ!何をしたって、もう遅いのよっ!。そんな考えだから、あんたたちは彷徨うのよっ!」アルテミスはかなりムカついていた。可哀想な核兵器の被害者たちに同情も何もない。

 

 そして、亡霊たち?の力を吸い取るように彼女の力は増大していった。ついにアルテミスはまとわりつく亡霊を弾き飛ばした。「はあ・・・厄介ね・・ホント・・」部屋は普通の状態に戻り、タカシ達が入ってきた。「大丈夫?透視もできなかったし、ドアも開かないし。何があったの?」タカシは言った。

「沢山、もの凄く沢山の人が死んだのよ。きっとその人たちが私の所に来たの。恨み言を訴えたり、ただすがって来た。振り払ったわ。でもちょっと危なかったの」とアルテミスは言った。

 

「へえ・・凄いことが起こったんだね。でも、君に何が起きてるんだろう?何だか君、変化してる。」タカシは言った。

 

 彼には彼女を取り巻く気が見えていた。黄金色が入ってきている。なんだろう・・こんな色の人は初めてだ。「何か見えてんの?」リクトは言った。「いや・・アルテミスの・・気の色が金色だよ。全部じゃないけど・・ゴージャス。」タカシは笑った。「スゲエじゃん。俺には見えねえけど、あんま、いないんだろ?そういうの」とリクト。

 

「そうだよ。少ない。綺麗な金色だ。最上級だねきっと。アルテミス、自分で変化は感じないの?」タカシは言った。

「変化・・感じてるわよ。力が強くなってるの。多分だけど・・地球の近くにいる人とつながったわ。すごい距離よ?38万キロ。そんな距離の人と通信できたなんて・・・でも、その人にも何らかの力があるみたいなのよ。」アルテミスは言った。「俺たち以外に?遺伝子操作しなきゃ無理じゃねえの?」リクトは言った。

「それはそうなんだけど・・すごく弱い力よ。私たち程じゃない。」とアルテミス。

 

 そこへミンチン博士がやってきた。「あなた達、何をしてるの?地球と火星が戦争をはじめたのよ。」大変な事が起きたのよ?と顔が言っている。

 

「知ってるよ。火星の人が沢山死んでるんだろ?」とリクトが言った。「オリオン、ニュースを見せて。」アルテミスがそう言うと部屋のスクリーンにニュースが映し出された。

 

 キャスターと有識者だ「こんなに早く反撃するとは・・・合衆国政府は何を考えているんでしょう?まだ火星がやったとは分かっていないのでは?」有識者、と見られる女が言った。

 

「これは大変なことですよ?もし火星の仕業でないとすれば・・全面核攻撃で火星の死者は大変な数になっているはずです。」キャスターは言った。かなり驚いている。地球側が全て用意していた事など知らないから。

 

 こんな風に地球合衆国の市民の中にも訝しむ者もいたが、既に軍隊はもちろん、司法も警察も市民のものではなくなっていた。

 

 合衆国大統領はすべて用意させていたのだ。反対する者は、雑魚なら殺されたりはしないが、有力議員は別だ。議員の中に大統領を罷免し停戦を目論む者がいたが、その動きは違法な盗聴と買収で現大統領に把握されていた。元々その議員も、何か理由をつけて現大統領を追い落とそうとしているだけだった。

 

 そして、その議員の自宅が爆発した。警察は通り一遍の操作をしているが、発表される結果は決まっている。火星のテロリストが合衆国への報復として議員の家を爆破した、そんなところ。前々から自分に反抗的な、その議員を見張っていた現大統領は、いい機会とばかりにその議員を抹殺したのだ。


「このまま太陽で重力ターンして小惑星帯へ向かおう。これなら行ける・・・。」ヨシュアの前には太陽系の地図と幾つかの飛行コースが映し出されている。「そお・・だな。推進剤も、このコースなら足りるか・・・」ヤマダは言った。

「でも、小惑星帯は、やばいんじゃねえの?ストルムグレンが牛耳ってるじゃん。」とヤマダ。

「アップワードおじさんのところに行こうと思う。」とヨシュア。アップワードおじさんとはホントのおじさん。ヨシュアの兄と違って表向きは廃品業者。でも裏では偽造ID作り、違法な部品の売買などををしている。

「ああ、あの、おっさんかあ。そうだな、あの、おっさんなら、匿ってくれそうだ。」ヤマダは言った。

「ロシナンテ。太陽を重力ターンして小惑星帯へ向かうコースをとれ。」ヨシュアは言った。

「了解しました。太陽を重力ターンし小惑星帯へ向かいます。到着はおよそ2週間後です。」ロシナンテは静かに言った。「2週間かー食料はあるのかな?」思いついたようにヤマダが言った。


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