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アルテミス  作者: 田中嘉彰
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飛行訓練

「アルテミス、急加速し過ぎだ。大丈夫なのか?」と管制官は言った。

「大丈夫よ。最近こんな事ができるようになったの。そこにミンチン博士は居る?」とアルテミス。

「ええ、居るわ。そんな事言ってなかったのに。隠してたのね?」とミンチン博士。

「ええっと、別にそんなつもりはなかったの。何となく言えなくて・・。だって、最近、力が益々強くなってるのよ。自分でも考えたかったの、どういうことなのか」アルテミスの声は少し不安を感じているようだった。そういう会話をしながらも、アルテミスの戦闘機は加速を続けている。「さらに加速を強めています。現在16G。」管制官が言った。

 

「本当に大丈夫なの?」とミンチン博士。「博士の声につよい不安があります。加速を緩めてはいかがですか?」オリオンは穏やかに言った。「そうね。加速をやめるわ。少し疲れた・・」アルテミスは言った。

 

「どのような感じの疲れなのでしょうか?力を使った後の疲れとは?私もアルテミス達のような力を持てていたら、きっと楽しいでしょう。」オリオンはそちらの方に興味があるようだ。

「普通の疲労感よ。多分・・・体を動かしたり、嫌な奴に会ったり・・・そんな時の疲労感と変わらないわ。でも、不安の様なものも感じるのよ。」彼女は嫌な奴に会った辺り部分を笑いながら言った。

「不安とは?」オリオンは興味深そうだ。「そうね・・・・このままではいけないって、そんな感じかしら。ミンチン博士には言ってないのよ。」通信は切ってある。この会話をミンチンたちは知らない。

 

「何故通信を切っているんでしょう?」管制官は言った。

「こんな事をするなんて、どうしたのアルテミスは。何か秘密の話でもあるのかしら、オリオンと」ミンチン博士は言った。大して気に留めていないようではあるが。

 

「しかし、規定違反です。何かあったのかもしれません。オリオン、アルテミスか機体に何か異常があるのか?」管制官はオリオン本体に問いかけた。

「いいえ。異常は全くありません。エンジン。生命維持。全て問題ありません。ご覧の通りです。」オリオンは穏やかに答え、ダメ出しにスクリーンにアルテミスの脳波や心電図も表示した「管制室で通信がない事を訝しんでいます。そろそろ通信を復旧しては?」オリオンはアルテミスに言った。

 

 「ごめんなさい。オリオンと内緒話をしてたの」彼女は管制官に答えて言った。

 「そんなことだろうと思ったわ。訓練は続いてるのよ。次は敵の戦闘機を直接攻撃する訓練よ。やり方はわかるわね。」隣に居るミンチン博士は言った。

 「分かってるわ。早く敵の戦闘機に攻撃させて」アルテミスは言った。

 

「なんか・・嫌な感じがするんだよな・・」貨物船に乗り込む前、宇宙服を着ながらヨシュアは言った。これから彼らは捨て駒としての任務に向かうのだ。ストルムグレンは、あわよくば死んで欲しいと思って送り出す。

 

「なんで?大した任務じゃねえじゃん。地球から曰くつきの奴を連れてくるだけだろ?」ヤマダは言った。しかしヨシュアは「俺はそういうの、あるんだよ。結構当たるんだぜ。」

 

 彼には僅ながら未来を予知する力があった。ただ、何もかも分かる訳ではない。もっと分かるならば、こんな所でくすぶってはいないだろう。しかしこの予感は当たっているのだ。ヨシュア達は知らないけれど・・・。

 

「ロシナンテ号。発進を許可する。気をつけて」管制官は言った。ヨシュア達の船はあくまでも貨物船。オンボロだ。中に武器が仕込んであることも、エンジンに手を加えてあることも表面からは分からない。

植民島の宇宙港から、ゆっくりと発信するロシナンテ号。

 

「急加速するなよ。」ヤマダは、いらないところで粋がるところがある為、ヨシュアは言った。「分かってるよー。重要な任務があるんだろー」ヤマダはそう言ったが、いきなりエンジンの出力を上げた。

 強い加速度が二人に掛かる。「お前・・いいかげんにしろよ!」ヨシュアは言った。気絶するほどではないが、かなりの加速度。「やべえ・・やりすぎた・・」ヤマダはそう言いながらも大笑いしている。

 

(核融合炉は・・・)アルテミスは自分の戦闘機を攻撃してくる機体を透視した。もろい精密機械。僅かに配線を壊すだけで融合炉は機能を停止した。「いいわね。アルテミス。この次は融合炉を暴走させてみたら?」ミンチン博士は言った。

 

「それってもっと離れないと私も死なない?」とアルテミス。「その距離なら大丈夫じゃないかしら?危険なガンマ線などは少ないはずよ。問題は輻射熱ね。」とミンチン博士。「この機体耐えられるの?その熱に?」アルテミスは言った。

 

「さあ?多分大丈夫なんじゃない?私には分からないわ。専門外」とミンチン博士。するとオリオンが口を挟んだ。「先ほど破壊した戦闘機とは、およそ200mの距離しかありませんでした。あの距離で核融合爆発があれば、この戦闘機の装甲も耐えられません。」

「それは・・そうね。当たり前だったわ。やめておかなきゃ大変。大丈夫なんじゃない?ってひどいわ、ミンチン博士」とアルテミスは言った。

 

「アルテミスはレーザーやミサイルを使わずに相手の戦闘機を破壊できます。」スクリーンにはアルテミスの機体と相手方の機体の位置が映し出されている。アルテミスがどれほど戦争に役立つかミンチン博士は精一杯アピールしなければならない。

 

「画期的だな。しかしもっとアルテミスを有効に使うべきでは?」後から司令室にやって来た地球合衆国の議員達の一人が言った。


「有効とは・・どのような?」とミンチン博士。「アルテミス専用の機体を作るということです。うまく使えば一人で戦艦レベルの働きができるかもしれない。」顔を見合わせる他の議員達。


 その議員はミンチン博士の研究に以前から肯定的な議員だ。「しかしそうなると、かなり予算を使ってしまうことにはなりませんか?」ミンチン博士は言った。彼女はそういうところは遠慮してしまう。

「構いませんよ。ミンチン博士。それで戦争に勝てるのならば・・・そうでしょう皆さん?」背の高い金髪碧眼の若い議員。何を考えているのか分からない雰囲気を醸し出している。こんなに支持してくれるのはこの男だけだが、何も考えず支援を受ければ思わぬ見返りを要求されてしまうのだろうか?ミンチン博士は一抹の不安を感じていた。

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