あの世に行きたいふたり
涙なんか流れない。
あの世の方が、こんな世界よりも、生き生き出来る気がする。
生き生きとはいっても、死んでいるのだが。
あの人は、声を張ることにしか脳がない。
腕を思い切り振り抜くことも、無意識のなかでする。
この屋上に続く階段を昇れば、天国に近づく。
昇るスピードは、次第に早まっていった。
涙しか流れない。
あの世にはあの人がいるから、確実にこの世界よりも、居心地はいいはずだ。
居心地というものを感じられればの話だが。
あの人だけが、私に同じ目線で笑いかけてくれた。
他にも、優しい人はいるだろうが、あまり沁みてこない。
この屋上に続く階段を昇れば、あなたに近づく。
そして、屋上から天国へ続く階段を昇れば、あの人に会える。
昇るスピードは、次第に早まっていった。
あの人は母親の虐待によって、屋上から飛び立った。
私はあの人が、親から虐待されていたことに、全く気付いていなかった。
もっと幸せな人だと、ずっと思っていた。
同じ目線になり、笑いかけてくれていて、イメージそのままの人だと思っていた。
あの世が一番幸せな人も、少なからずいるんだ。