表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/78

にゃんですか?勇者さま。



フェン達は家に向かって帰路を行く。


急ぐ用事も無いのだが急ぎたい気持ちもある。



家に着くと何時も通りに爺ちゃんが『おかえり』と迎えてくれる想像をする…


その一方、誰も居ない家に呆然と立ち尽くす自分が居る…悪い予感は止まらない。




『帰るのが遅れてるだけだよね』



と、まだ居ないと決まった訳でもないのに居なかった時の言い訳まで頭を過る。




帰ったら『居て欲しい』という気持ちが帰路の行程を知らず知らずに


遅らせていた。



遅ければ遅いほど爺ちゃんが先に帰って居てくれる可能性が高いだろう。




「急ぎましょう、勇者樣」



ミヤは正しい判断をしている。




『ガルンに居た事は誰にも知られてはならん。』




それを成すには、なるべく『速やかに帰宅する』のが正しい行動である。


…だけど心はそうは言ってくれなかった。






今もミヤは僕の事を『勇者樣』と呼び続けている。



「ねぇミヤ。勇者樣って呼ぶの止めない?」



「どうしてですか?勇者樣」



「どうしてって…」



自分では『まだ勇者じゃない』と思っている。



それに『勇者とは自分じゃなく他人から認められて初めて勇者』だとも思う。



・・・が、明確な理由は、無い。



それは『勇者だ』と、爺ちゃんとミヤは少なくとも認め、呼んでくれているのだろうから。


内心、認めてしまうと『勇者である爺ちゃんが本当に帰って来ない』ような予感が


していたので認めたくなかったのだ。



「まだ自分が勇者だって納得出来てないから『勇者』って呼んで欲しくないんだ」


…どうにか理由を考えて伝える。




「いいですよ。じゃ、何て呼べば良いですか?」


…えっ?いいの?軽っっ。




ミヤの中では『呼び方』なんて大した問題では無かったようだ。


勝手に一人相撲をして難しく考え込んでいた自分が恥ずかしい…。



ミヤから提案が出る。



「勇者樣…じゃなくて…ご主人樣、はどうですか?」



…ご主人樣って言うのは何か冷たい気がする。ミヤは家族同然なんだし。




「じゃあ、何て呼べば良いですか?」素直に聞いてくるミヤ。




…「フェン君」は?


知り合いには大体こう呼ばれている。




「…『君』は駄目ですよ。私は勇者樣にお仕えする、勇者樣の持ち物なのですから。」



持ち物…『物』だなんて思ってないのに…何か寂しい気持ちがした。



納得してくれないミヤに納得してもらえる名前、、、



じゃあ「フェン樣」は?


結局、良い案も無く、どちらともなく出した案で折り合いをつける事になった。




「フェン樣」、ですね?


ミヤが試しに呼んでみる。




呼ばれると何か『硬い』感じがする。どうすれば…?




…「フェン『さま』って呼んでみて。」



漢字の『樣』と付けて呼ぶのと、ひらがなで「さま」と付けて呼ぶと考えて


呼ぶのとでは、不思議と同じ言葉でも明らかな違いが感じられるのは誰にも


分からない謎であるが本当の事だ。



それと、、、さっき自分の事を『物』とか言って寂しい気持ちに


させられた件を思い出す。



軽くお返しというか、冗談を思い付く。



「それとミヤは猫人族なんだから語尾には『にゃん』を付けてね♪」


…と、おどけて言ってみる。




怒るかと思ったけど、なぜか…




「分かった……にゃん。」



あれっ?恥ずかしそうだけど案外乗り気?




ここに、呼び方の『フェンさま』と『語尾に「にゃん」を付ける』


という二人だけしか知らない秘密の盟約が結ばれたのであった。





「猫語は大変なのにゃ。」

 「そうなの?ミヤ」

「にゃんとにゃんを使ってるにゃん」

 略すと「にゃんにゃんして・・・」

 ・・・はい。ミヤ、そこまで。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ