アルシェですか?勇者さま。④
醜い?、、穢れてる?
アルシェは自分が解からず、自身を嫌う。
でもフェンは、、そんな私を否定するのに受け入れる。
なぜ?どうして?
では『アルシェですか?勇者さま。④』
お楽しみ下さい。
ではでは。 ふえん
「アルシェ。僕の事、、嫌い?」
な、な、、何を?
『アルシェの気持ちを聞かせて』って、、、
、、そういう意味、、好き嫌いの話だったの?
に、しても何で質問が、そう極端な質問ばかりなのよ!
人間なんて好きな訳がないじゃない!
でも…フェンの事は?、、嫌い、、ではない、、、
・・・だろう。多分、だ。
命を救ってくれた恩も有るし、、、いや、損得無しでもフェンの事は悪くは思ってはいない。
だが、、
だからと言って『好きなの?』と聞かれれば、、、
好き、、愛している、とまでは言えないのでは?
正直、アルシェ自身が分からないのだ。
ハッキリ言おう。
異性から告白、、『好きだ』なんて言われたのは初めてだったのだ。
綺麗だ、好きだ、と言われて嫌がる女性は居ないよね?、、、多分。
少なくともアルシェはフェンから言われて悪い気はしなかった。
ううん。嬉しかった。
事実、フェンの私を見る目は優しく、温かい。
しようと思えばアルシェに何でも出来る立場なのに、何もしない。
逆に、もどかしく思う位に、私の事を大切にしたい、という気持ちだけは伝わってくる。
この人間、、フェンなら持ち主、、奴隷として仕える主人として悪くないのでは?という気持ちにさえなって来ていた。
が、、それは先程まで、の話しなのだ。
せっかくアルシェが『フェンの物に…』と思い、決めかかっていたのに、なぜか、当のフェン自身が否定したのだ。
『アルシェは僕の奴隷じゃないよ。』と。
ある意味ショックだった。
何?、、フェンは私が欲しくないの?
いや、欲しい筈だ。
それが叶うのに何の不満が有ると言うの?
私を奴隷にとして思うままにしたくないの?
これではまるでアルシェが、、、
『あ、別にそこまで欲しい訳じゃないから。』
と、言われている様ではないか!
私・・・そんなに、、魅力無いのかな・・・?
確かに私は、、アルシェは傷だらけだよ。
心も、、身体も。
でも・・・
それでも・・・
こんな私を見てフェンは『綺麗だ』と言い、『好きだ』と言ってくれたじゃない!
なら、、何でフェンは断るのよ!
私の申し入れは拒絶しておきながら、『僕の事、嫌い?』なんて聞くなんて…おかしいよね?
私の事、好きなら、好きって言えば良いじゃない!!
、、、あれっ??
おかしい・・・おかしいよね?
おかしい・・・のは、、私?
『好きって言えば良いじゃない!』って・・・
解ってる。
既にフェンは昨晩から何度も私に言ってくれたじゃない!
もう何度もフェンはアルシェに伝えているのだ。
それが、、何で?、、どうして?
私、、言って欲しいの?
何で!!
今更?
言って欲しがる位なら、昨晩ベットでフェンが言ってくれた時に、さっさと認めて、受け入れてしまえば良かったじゃない!
何で今更!…自分に腹が立つ…未だにフェンを信じきれていない自分に。
信じきれていない相手に『好き』って言ってもらいたい、、だなんて、おかしいじゃない!
でも…
アルシェの不安は消えないのだ。
フェンがそんな人間じゃない!と、気付いている、解っているのだ。
だけど・・・不安なのだ。
今更、アルシェから好き…なんて告白して、、もし断られたら?
『昨晩?…好きって言ったのなんて、勝負の為の作戦に決まってるじゃん。』
なんて言われたら・・・
怖いのだ。フェンと一緒に居たいと思った気持ちを拒絶される事が。
優しいフェンの笑顔が、実は邪悪に満ちた他の人間と同じ作り笑いだったら?
嫌、、嫌だ。
そんなの、、嫌なのだ。
もう一度、言って欲しい。
私がおかしい事を言っているのは解っている。
自分で自分が嫌になる。
あれだけフェンは私の事を『好きだ』と言ってくれたのに…
それを『信じられない』と思っているのも私なのに…
なのに…それなのに『言って欲しい』だなんて。
じゃあ、何?、、あと何回言ってくれたら急に信じられる様になるとでも言うの?
そんな事は無い。
気持ちにはスイッチが有る訳ではないのだから、急に全てを信じられる訳がない。
アルシェは解っているのだ。
フェンが邪悪だなんて、自分の勝手な思い込み…それも杞憂でしかない事を。
出逢ってからのフェンの行動、、言葉、、全て一貫しているではないか。
なのに私は・・・
穢れているのは私だ。
勝手に邪悪な事を考え、妄想しているのも私の方だ。
周りの誰もが敵に見え、信用出来なくなっているのだ。
どんなに優しくされ、気遣って貰っても疑いの目で見てしまう。
醜い、、身体の傷だけではない。
そんな考えしか出来なくなってしまった心、、アルシェ自身が醜いのだ。
フェンは優しい。
私がどんなに酷い言葉を返そうと、理解しようとしてくれ、また、間違っていれば本気で叱ってくれた。
そんなフェンが『綺麗だ』『好きだ』と言ってくれているのに…
なぜ信じられないの!
嫌いだ!、、フェンが、ではない。
そんな考えしか出来ない自分が嫌なのだ。嫌いなのだ。
こんな私は・・・誰かに好きになって貰える、、愛して貰える資格なんて無い!
、、、無い、、のよ、、もう。。。
「フェン、貴方は良い人だわ。嫌いじゃない、、」
『嫌いじゃない』と聞き、フェンの表情が緩みかけるが、、アルシェは続けて言う。
「、、だから、駄目。」
「私には貴方に好きになって貰える価値も資格も無いわ。だから…」
「貴方はただ、私の持ち主として、私を使えばいいのよ、、それが私と貴方の関係よ。」
「そんなの…アルシェは本当に…それでいいの?」
「そうよ!醜い私の価値なんてその程度の物よ!」
「違う!、、そんな事ないよ!…それに駄目だ!自分の事をそんな…」
「違わない!…私は身も心も醜い女よ!」
・・・認めた、、私は自分で認めたのだ。
私は醜い・・・。
人間への怨みに狂って非の無いフェンに酷い言葉を投げ掛けたのだ。
それを身勝手に今度は好きって言って、なんて…
そんな自分が嫌だ・・・こんな私・・・
「アルシェ・・・」
フェンが寂しそうな顔をするが、、気にしない!
そうよ!、、私は酷い、、醜い女なのだから・・・
アルシェは逃げたかった。
嫌いな自分自身から。
答えが出ない思考の迷路から。
だから…考える事から逃げ出した。
酷い女を演じれば、フェンだって目が覚めて私を奴隷として扱うだろう。
・・・それで・・・いい。
どちらにせよ、私がフェンの傍に居る事に変わりはないのだから。
アルシェは投げ出す事により答えを見出そうとしたのだ。
だが、フェンは違う答えをアルシェに示す。
フェンはアルシェが投げ出した物でさえ受け止めようとする。
「ありがとう、アルシェ。」
・・・?・・・何が?
アルシェに拒否され、否定されて…フェンは何を『ありがとう』と言うの?
「僕のお願いを聞いてくれたんだよね?」
「お願、、い?」
「うん。お願い、、したよね?」
「何を?…私、何もしてないし、命令になんか従ってなんかない。」
「ううん。アルシェは聞いてくれたよ、、僕のお願いを。」
「僕はアルシェに言ったよ…アルシェの気持ちを聞かせて、って。」
「そしてアルシェは聞かせてくれたんだ。」
そんな事・・・
私の気持ちなんて・・・
私の言葉、、私の答えなんて、決してフェンが喜ぶような答えじゃなかったよね?
喜ぶどころか、誰でも機嫌を損ねて当然な酷い事を言った筈だ。
なのに、、、
アルシェは解らない。
なぜ?…なぜフェンは『ありがとう』なんて言うの?
「アルシェ。アルシェが自分の事を『醜い』と思っていたって、、いいよ。」
「それがアルシェの気持ちだと言うなら、、いいんだよ。」
「でも、アルシェが『醜い』と思っていても、僕は『綺麗だ』と思うし、価値が無いなんて思わないよ。」
「違うわ!私は醜いのよ。貴方の言葉も信用出来ない位に…私の心は穢れているのよ!」
「ううん。違わないよ、アルシェ。」
フェンは静かに優しく続けて言う。
「本当に穢れていたら、自分で『穢れてる』なんて言わないよ。」
「アルシェは『穢れてる』って振りをして僕の事を気遣ってくれているんだよね?」
アルシェは自問する。
…穢れている振り?
振りなんかじゃない!
本当よっ!…嫌いな自分から逃げ出して、何も考えなくていい奴隷としてフェンの傍に居ようとしたじゃない!
嫌いな自分から逃げ出して全てフェン任せにしようとしたのだ。
無責任だ…穢れてるんだ、、私は。
「違う!私は振りじゃなく本当に穢れて…」
「うん。違うよ。」
今度はアッサリと肯定するフェン。
えっ?、、私が穢れてるって同意してくれたの?
何で?、、『違うよ』って否定していたのに…何で…急に??
「そうよ!私は穢れて…」
「違うよ、アルシェ。君の心は穢れてなんかいない!」
・・・何で?・・・納得してくれたんじゃないの?
「アルシェ、君の心が穢れているっていう事自体が、、違うんだよ。」
違う?、、、いや、違わない!
「理由なんて関係ない!今の私の醜い心が証明してるわ!…私は穢れてるのよ!」
「違う!!アルシェが穢れてるんじゃない!」
…幾らフェンが言おうとも、私の心…人間への猜疑心は消えはしない。
だが、フェンは言葉を止めない。
「アルシェ、君が自分の心を『醜い』とか『穢れている』と思う気持ち…」
「それは…間違ってなんかいないよ。」
そうよ!…だから言ってるじゃない!
醜く穢れた私なんか、誰かに好きになってもらう、、愛して貰える価値なんて無いんだから!
フェンは肯定する。
「そう。間違ってなんかいない…だから、アルシェは悪くなんてないし、負い目を感じる事なんて無いんだよ。」
は?…何を言ってるの?
醜く、穢れた存在に、負い目を感じる必要が無いなんて…
「アルシェは間違ってるんだよ?」
「間違って…る?」
「そうだよ、アルシェ。君は間違ってるし、間違ってないんだ。」
「どういう意味よ!」
「アルシェ、当たり前なんだよ。」
フェンは言葉を続ける。
「アルシェ、君や仲間達が人間にされた事…恨んで当然だし、憎んで当然なんだよ。」
「そうよ!…この恨みは消せはしないわ!」
「だから、だよ。だからアルシェは間違ってるんだよ。」
「何が間違ってると言うの?、、まさか人間を恨むのが間違ってるとは言わないわよね?」
「違うよ。大切な者が傷付けられたら、相手を恨んで、、憎んで当然だよ。僕だってそうだよ。」
「じゃあ何が間違ってるって言うのよ?」
アルシェは解らない。
「ねぇ、アルシェ、アルシェの気持ち…思いは『当然の事』なんだよ。」
「僕だって大切な家族を傷付けられたら怒るし、相手を恨むし、、許さないよ。」
アルシェは思う。
想像出来ないがフェンも、大切な者を傷付けられたら怒り狂ったりするのだろうか?
フェンは言葉を続ける。
「相手を恨む気持ち・・・それって普通な事じゃないかな?」
「誰でも、大切な者を傷付けられれば怒るし、相手を憎むんだよ。」
「ねえ、アルシェ。アルシェが人間を恨んで、信用出来ないのは、そんなに悪い事なの?」
「違うよね?アルシェは普通に怒って、恨んだだけだよね?…当然の事なんだよ。」
「なのに、、なぜ?…なぜアルシェは自分の事を『醜い』とか『穢れた』なんて言うの?」
「当たり前な感情だよ?、、なぜそれでアルシェが負い目を感じなきゃなの?」
「アルシェは間違ってるんだよ。だってアルシェは、醜くもないし、穢れてなんかないんだから。」
、、当たり前、、なの?
アルシェが嫌悪する自身の感情。
それをフェンは当たり前だと言うのだ。
嘘よ!!、、そう、嘘。
・・・優しい言葉すら、疑ってしまう私の心が、当たり前、、普通だと言えるだろうか?
、、、いや、言わない。言う訳がない。
やはり私の心は穢れてしまっているのだ。
「当たり前だ、と言うならフェンはどうなのよ!」
「貴方は相手の全てを信用出来ず、殺したいと思う程、憎んだ事は有るの?…私は有る!!」
フェンは驚いた顔を見せ、少し淋しそうな顔をするがハッキリとした口調で答える。
「僕は憎んだよ。僕の大切な家族を傷付けた相手、、人間を。そして殺したいと思った…」
「…いや、殺したんだこの手、で。」
「ねぇ、アルシェ…教えてよ。アルシェから見た僕は…醜く見える?、穢れて見える?」
そんな…
突然の告白。
まさかフェンから人間を、、同族を殺した告白を聞くなんて…
こんなに優しいフェンが殺意を持って、そして実行する決断をした相手。
当然、会った事も無いので予想でしか無いが、きっと邪悪な人間だったに違いない。
私だって、友達が帰って来なかったあの日…事実を知って貴族の男を許せず、憎み、殺そうと思った。
いや、実際に実行し、咬みつき殺したのだ。
友達の仇をとった。
その事には何の後悔も後ろめたさも無い!
多分、フェンも同じ気持ちだったのだろう。
「私は…フェンが醜いなんて思わない!そして、穢れているなんて…私は思わない!」
「ありがとう、アルシェ。嬉しいよ。…でも…じゃあ、どうしてなの?」
「どうして、って…?」
「アルシェは僕の事、醜くないし、穢れてないって思ってくれるんだよね?」
「そうよ。貴方は穢れてなんかいないじゃない!」
「じゃあ、アルシェは?」
「、、、私?」
「何でアルシェは僕の事を穢れてない!って言ってくれるのに、自分の事を穢れているなんて言うの?」
「私は穢れてるからよ!」
「違うよ、アルシェ。アルシェと僕は一緒だよ。」
「僕も、相手を…人間を憎んで殺したんだよ。ほら、アルシェと同じだよね?なのに…」
「同じ事をして、僕は穢れてないのに、アルシェは穢れてる、、なんて間違ってるよ!」
「そんな事…私は穢れてるのよ。」
「違うよ。アルシェ、もう一度聞くよ?…僕の事、穢れてるって思うの?」
「…それは…」
「いいんだよ。アルシェが自分の事を穢れてるって思っているなら、僕も穢れてるって事なんだから。」
「大丈夫。一緒だよ、アルシェ。」
「アルシェと僕は一緒だよ。だから…アルシェが、もし自分の事を嫌いだと言うなら、僕の事も嫌いって事と同じ事なんだよ。」
「だからね、、もし、アルシェが僕の事を『穢れてない』って思ってくれるなら、アルシェ…君も穢れてないって事だよ。」
「アルシェ…僕の事、、穢れてるって思う?…嫌いなの?」
こんな質問…ズルいよ!
フェンが穢れてる訳ないじゃない!
でも私は…
「アルシェ、僕はアルシェの事、穢れてるなんて思わないし、、好きだよ。」
『ドキッ』…アルシェの心臓が思い切り跳ねる。
!!…このタイミングで言う?
アルシェが言って欲しかった一言。
もう何度も言って貰った言葉だけど、もう一度聞きたかった言葉。
『好き』と聞いた途端にアルシェは自分が解らなくなる。
何?…何度も聞いた言葉なのに?…なんで…
頭の考えとは裏腹にアルシェの内から湧いてくる気持ち…嬉しい。
嬉しいのだ。
一方的に告白された昨晩とは違い、アルシェ自身が『もう一度聞きたかった言葉』をフェンはちゃんと聞かせてくれたのだ。
嬉しい。
今はもう勝負中ではないのだ。
アルシェを好きに出来る立場のフェンが嘘を吐く必要も無い。
フェンが言ってくれた『好き』っていう言葉が身体に、、心に染み込む。
好き?…本当に?…私の事を?…好き、、なんだ…
私…どうしちゃったの?
憎むべき人間から『好き』と言われて喜んでしまっている自分が解らない。
私…嬉しい…の??
奴隷としてフェンの傍に居られればいいや、と思っていたのに…
目の前に降って来た、あまりの幸せがアルシェは信じられない。
アルシェの望み、、希望が叶う世界など、アルシェの中では有り得ない世界なのだ。
嘘よ!、、そう、これは夢だわ!!
今はまだフェンとの勝負中で…布団の中で抱き締められて夢を見てるだけよ!
何よ!、、こんな夢!
こんな甘い夢を見るなんて、、気をしっかり持つのよ、私!!
勝負に勝って、フェンを、、勇者を殺すんだから!
思わず…古典的に頬を自分でつねる。
…痛っ、、い?
「アルシェ!」
急に自分の頬をつねりだしたアルシェの手を掴み止めるフェン。
「あっ、、、」
アルシェは触れられて理解する。
これは…現実だ。
優しくだが、しっかりと掴み、止めてくれているフェンの手。
心配そうに私を見つめているフェンの優しい目。
現実だ。
と、いう事は…夢じゃない!?
掴まれている腕が凄く熱く感じる。
フェンに触れられてる。
何もしない、、ただ掴まれて、、触れられているだけなのにドキドキするのだ。
なに…これ…私、、、
私…フェンの事…好きに?
そんな事あるもんかっ!
人間なんかを好きになんか!!
なるもんか!
…なれないの?
人間なんて!
…フェンはアルシェを個人として見てくれたのに?
恋愛なんて有り得ない!
…フェンは『好き』って言ってくれたよ?
何よ!貴方、どっちの味方なのよ!
アルシェの気持ちがせめぎあう。
…私は私…アルシェだよ。
『物や器』じゃなく『一人の女性』だよ。
フェンは『そう』扱って、、接してくれたじゃない。
それの何処に不満があって意地を張ってるのよ!
意地?…私は意地なんて張ってない!!
…本当に?
ええ!本当よ!!
…じゃあ、言ってみなさいよ!…フェンに向かって『お前なんか嫌いだ』、『お前なんか殺す』って。
そんな…事、、、
言えないよね?…言える訳ないじゃない。だって私は、、アルシェは、、
止めて!!!
そんな事ない!!、そんな事ない!、そんな事、、そんな…
自分の心を否定したいのに、、分が悪い。
もう解っているのだ。
こんな私を、気遣って、労って、優しくしてくれて、好きだとまで言ってくれた。
そんな事…
否定の理由が思い浮かばない。
素直に受け入れて、少し手を伸ばせば、叶う願いが目の前に在るのだ。
簡単な事だ。
一言、『私も好き』と言ってしまえば…
しまえば…
先程までは、お互い命を懸けた勝負で、一言『お前を殺す』と言うかどうかで迷っていた筈なのに…
舌の根も乾かぬ内に、今度は『好き』と言うかで悩むなんて…
悩みの筈なのに苦痛ではなく、ドキドキやワクワクする悩みが在るなんて、アルシェは初めて知った。
こんな悩みなら悪くはない…素直にアルシェは思う。
『私がこう答えたらフェンはどんな顔をするのだろうか?』
そんな事を考えるだけで、アルシェは楽しくて、嬉しくてしょうがなかった。
これからフェンと一緒に居たら、どんな楽しい事が待っているのだろうか?
もう答えは決まっているのだが、アルシェは思う。
もう少し・・・もう少しだけ・・・
今、アルシェが感じている感覚・・・生きている事が嬉しくて仕方がない感覚。
アルシェは思い出したのだ・・・思い出してくれたのだ。
生きたい、と思う事を。
頑ななアルシェの心にフェンは、、、
フェンの気持ちは通じるのか?
拗れてしまうのか?
次話もお楽しみに。
ではでは。 ふえん




