終わらせたくない世界
暗い中、人々は他に生き残りがいないか黙々と探し回っていた。もう、時計の針は午前八時を指すのにもかかわらず、夜が明けぬために太陽の恩恵は受けられなかった。
皆、一日中探した。“誰か…誰か生きているはずだ”と、そう信じて。だが、誰も見つからない。死体ばかりが発見された。“もう、こんなこと無駄なのかもしれない”誰もがそう思った。
シンは呟く。
「これが…これが運命なのなら、なかなかに残酷だな。運命も…」
今日が終わった。シンや捜索していた人々は本部へと引き上げた。本部は補修工事が行われ住める状態だった。もともと義勇兵団本部は被害が少なかったからすぐに工事は終わった。もう、五日もこんな日が続いた。
廃墟に来て五日、まだ、現実を受け入れられない者がいる。無理もない一つの国がたった数日で滅んだのだから。家族も恋人も友人もみんな、消えてしまったのだから。
だが、国を失ったのはシンたちだけではないようだ。
シンが自室のベッドに寝転がっているとドアをノックする音がした。
「入ってもよろしいでしょうか隊長」
「あぁ、」
「失礼いたします」
と、言ってヘレナが入ってきた。
「どうした。“あのこと”か?」
シンは顔をヘレナに向けることなくそう言った。
「いえ、メルダと名乗る女が隊長に会わせろとのことですがどういたしましょう」
「メルダ?」
聞き覚えのある名だ。確か…
シンは記憶を手繰り寄せた。
『すごいわ。これを防がれたのは初めてよ。だからご褒美に私の名前を教えてあげるわ。私の名は“メルダ”よ』
…!
シンは思い出した。
「アイツか…」
「どうしますか?」
「連れて来てくれ」
「了解しました」
ヘレナが部屋を出ていった。
しばらくしてもう一度扉が開き今度入ってきたのは、黒装束で黒髪の猫族。メルダだ。
「テメェ、どういうつもりだ?」
「…………」
メルダは無言で下を向き立っている。
「聞いてんのかよ!」
メルダは静かに話し始める。
「……我らが王都、アンブロシアが滅びました…」
「はぁ?」
「巨人がすべてを焼き払いました」
「え……」
「黒い血で…アンブロシアの人間で生き残ったのは私とその部隊だけです。………烏滸がましいですが、お願いが御座います」
そう言ってメルダは土下座した。
「今までのことを全て謝罪いたしますッ!私めを斬っても構いませんッ!ですから、私の部隊を救って下さいッ!私の部隊には、負傷者がおります。お恥ずかしながら物資が不足し手当てすらできないのです。仲間を見殺しにはできません。ですので、手当てをしていただきたいのですッ!お願いしますッ!」
シンは唖然とした。だが、すぐに下を向きクスクスと笑った。
“敵である前に人である”か……
「いいだろう。負傷者の手当てをしてやる」
「ありがとうございますッ!」
メルダは泣きながら土下座をした。
「だが、お前を許す訳じゃない。お前とその部隊の動ける奴には“あること”に協力してもらう」
「“あること”?」
「あぁ、“黒き巨人討伐”だ」
次の日、空は暗いが人の心の中には希望と言う名の光があった。総勢三百十二名、隊長シン、隊長補佐ヘレナ、この部隊が……この暗い世界の最後の人々が今、運命に抗おうとしている。
「俺たちは今ッ!残酷な運命に抗うッ!何故なら、此処が、失いたくない、壊させたくない、“終わらせたくない世界”だからだッ!」
この話の最期は読者の方々の想像で決めてください。世界が終わるのか終わらないのかを
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