第二十四 特訓
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義勇兵団本部。シンが廊下を歩いているスタリアルに大声で呼びながら走っていた。
「おーい!スタリアルー!」
「ん?」
と、言ってスタリアルは後ろに振り返った。
「あぁ、シンさん」
シンはスタリアルの目の前まできた。
「やぁっと見つけた。なぁ今暇か?」
「え、えぇ、まぁ暇と言われれば確かに暇ですが、なにか?」
「んー、ならちょっと魔法の特訓してくれねぇか?」
「特訓?なぜまたそのようなことを?」
「王都防衛戦を間近で見て俺は全く戦力にならないと思った。“俺はこんな強い奴らと戦えねぇ”ってな、だから強くなにたいんだ。それに今度は遺跡調査隊の隊長に選ばれたし、尚更な」
「なるほど、そう言うことなら協力しますよ。ですがなぜ私なのです?」
「あぁ、それはスタリアルの魔法が灰色だから」
「確かに私は灰色ですがなぜそれを?」
「コトリが言ってたんだよ。アイツ竜族だから魔力が見えるんだ」
「なるほど、」
「よし、じゃあ訓練広場に行くか」
と、言ってシンとスタリアルは訓練広場に向かった。
騎士団及び義勇兵団訓練広場。シンとスタリアルは十メートルほど離れて立っている。
「では、まず実際に魔法を受けてみましょう」
「おう!いつでも来い!」
「最初は“遮音”です!」
と、言うとスタリアルは両手をシンの方へ向け魔法を放った。
「うおっ、」
少しシンはよろけた。そしてしばらくして、自分の身に起こった異変に気づいた。
「あれ、なにも聞こえねぇ」
街の音も風の音も草な揺れる音もなにも、スタリアルがなにか言っているようだがなにも聞こえねい。
再びスタリアルが魔法を放った。するとようやく音がきこえてきた。
「おぉ、治った。すげー魔法だな!」
「さぁ、休んでいる暇などないですよ!次、“暗闇”」
シンの周りは真っ暗になり音だけが鳴っている。
「加えて“遮音”」
と、スタリアルの声が聞こえたと思ったら今度は真っ暗の中で音まで聞こえなくなってしまった。
『なんだよこれ、なにも聞こえねぇし見えねぇよ。戦闘中にこんなことになったら。こ、怖ぇ』
と、シンは思った。
“パンッ”
と、手を叩く音がしたと同時に魔法が解けた。シンはその魔法の予想以上の力に驚き恐怖から冷や汗をかいていた。
「いやー、予想以上だな」
「そうでしょう。一見、大したことなさそうに見えてもやられたら結構なものなんですよ」
「実感したよ。他は?」
「後は“重化”とか“幻影”ですかね」
「よし、両方頼む!」
「では、いきますよ!」
スタリアルが魔法を放った。突如、シンの身体は重くなりすぐに倒れ込んでしまった。
「ぐあぁぁぁ!動けねぇ。………あれ?」
ふと、シンの身体は軽くなり立ち上がった。すると、立ち上がったシン目掛けてスタリアルが走ってくる。スタリアルが目の前まで来ると突然、腹に痛みを感じた。
「!」
恐る恐る腹に当てた手を見るとその手は真っ赤だった。
「おい、嘘だろ!?」
弱々しい声でそう言った途端、足の力が抜けて倒れ込む。
“バタンッ”
倒れ込んだところの地面は真っ赤に染まっていた。スタリアルはシンの無様な姿を見て狂人のように笑っていた。
「アーッハッハッハッハ!」
シンの身体は、腹に穴が空き赤い液体が流れ出し、腸が出ていた。
「オエッ」
シンは口から血を吐いた。
『俺ここで死んじまうのか?誰か………』
そのままシンの意識は遠退いていった。
「おーい、シン。シン!起きろー!」
「……んぁあ?」
誰かの大声でシンは目を覚ました。
目覚た場所は訓練広場だった。大声で呼んでいたのはスタリアルだった。
シンは咄嗟に起き上がった。
「やっと目を覚ましたか」
「え?」
「“幻影”の魔法を使ったら突然倒れたので驚きましたよ」
「ハアァァァァァァアン?」
「いや、“ハアァァァァァァアン?”じゃないですよ。大丈夫ですか?」
シンはさっきのことを思い出し腹の傷を確認した。だが、傷は無かった。あたりを見回しても血は一滴も無かった。
「俺さっきスタリアルに腹斬られてそれで……、どういうことだ?」
「“幻影”ですよ、げ・ん・え・い。灰色の魔法の上級魔法です」
「そうか、はぁー、焦ったぁ。死んだかと思った」
シンは心底ホッとした。
「よし!じゃあ特訓の続き頼むぜ!」
「まだ、やるんですか?だったら今度はシンさんが魔法を使ってください」
「おう!どうすればいい?」
「簡単なのは“重化”ですかね。自分の中に流れる魔力を意識してください」
「分かった」
シンは目をつぶり集中した。すると、なんとなく身体を流れるなにかの存在を感じることができた。
「その存在を感じることができたら、今度は身体から出し身体の一部へ、例えば手のひらに少し貯めて、それを私へ移動させてみてください」
シンは手を広げそこに魔力を集める想像をした。すると、手のひらに灰色に光るものが集まった。そして、今度はその魔力をスタリアルの方へと移動させた。
「その調子ですよ」
スタリアルが声をかけたがシンは集中していて聞いてなかった。しばらくしてなんとかスタリアルの身体へと魔力を移動させることができた。
「そしたら次は私の中に含ませた魔力を下方向へと引っ張るようにしてください」
シンはただ下へ下へと魔力を動かす想像をした。途端にスタリアルが倒れた。
「なっ!うぅっ」
その光景を見たシンは魔法を解き喜んだ。
「よし!魔法使えたぜ!」
魔法を解かれたスタリアルが立ち上がった。
「素晴らしいですね。かなり上級の魔法なのに、“重化”の基本は魔力を下へ動かすことですよ。忘れないように」
「おう!じゃあ次もいこうぜ!」
「えぇ、そうしましょう」
そうして、特訓は日暮れまで行われた。
残り猶予、二十五日
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