任務
2人でじゃれていれば、無機質な着信音が2つ聞こえてきた
お互い携帯を取り、送られてきたメールを確認する
「今度は東?」
「・・・・最近、多いね」
あたしは携帯を置いて、パジャマから制服に着替える
〝仕事〟をするにあたって、この格好が1番動きやすい
零は既に黒いセーラー服を纏っている
それがまた似合ってること
あたしが白のセーラー服に袖を通している間、零は長い髪の毛を高い位置で1つにまとめる
お互い準備をすませたら、常にそばに置いている〝それ〟を手に取って部屋を出た
あまりゆっくりする時間もなく、走って家の階段を駆け下りる
「迎えは?」
「もう来てるって」
靴をはき、玄関の扉を開けるとそこには既に1台の大きなワンボックスカーが止まっていた
あたし達が玄関から出てきたと同時に開けられた車の扉
そのまま立ち止まることなく、走ってその車に乗り込んだ
乗り込むと同時、車は発進した
車には既に何人かが乗っている
いつものメンバーだ
「いつも悪いな、お二人さん」
そう言いながら、運転するのは少し顔のいかつい宮さん
「仕方ないでしょ、出ちゃったもんわ。 倒せるの今はあたしだけなんだし」
「ちょっと!零!?あたしも入れて!」
「黄泉にはまだ早いわよーっだ」
そう言って、舌を出して挑発してきた零に、今朝のお返しとデコピンをお見舞いしてやる
「いったぁい!姉に向かってそんなことするのか!」
「べーっ」
「おいおい、2人共、じゃれつくのもいい加減にしとけよー」
そう言って、助手席から呆れたようにため息をつきながらこっちを見てくるのは柴本
黒い短髪で真面目を形どったような容姿
「こっち見んな、変態」
「誰が変態じゃ、この冷徹女っ」
零は手をひらひらとさせて、心底嫌そうな顔で柴本さんを邪魔者扱い
これは零と柴本さんの仲の良さだから出来ること、つまり2人は実際仲がいい
「おい柴本。俺の彼女に冷徹とはいい度胸だなぁ。
零はよく鳴くいい女だ」
そう言ったのは零の横に座ってる和ちゃん
茶色い髪に耳にはピアスがたくさんついてる
そんな和ちゃんは零の恋人で婚約者
元は親同士が決めた結婚だったけれど、2人はそのまま恋におちたのだ
「ちょ!和!?変なこと言わないで!」
「ほんとのことだろ」
しれっと惚気を言う和ちゃんに照れる零
いつものことだ
羨ましい限りだといつも思う
「お前らはいちゃついてんじゃねーよ」
また呆れた顔で柴本はため息をついて前を向いた
「今回の任務だが、連絡したようにランクDだ。 だからと言って気を抜くなよ」
じゃれてるあたし達をみて宮さんがそう釘を刺す
「分かってるわよ」
そう言った零は手に持っている袋から〝それ〟を取り出した
それに習ってあたしも取り出す
「で? 今回の作戦は?」
「まぁ気を抜く訳じゃないが、ランクDは雑魚だ。 そこまで決めなくてもいいと思うが・・・・。 零がやりやすい様にやれ。 俺らはいつも通りそれを補佐する」
「了解」
「あぁ、それと黄泉。 室長が戦ってみなさい、だとよ」
「ほんと!?」
「良かったな、黄泉」
柴本さんがそう言って笑いかけてくれる
今までは零の補佐だったため、零の仕事を見るばかりだったから実戦は初めてだ
それかりに緊張はするが、いつもの鍛錬を思い出せば大丈夫だろう
「足手まといにならないでよー?黄泉」
馬鹿にしたように言いながらも、零があたしの頭を撫でる
「ならないようにする!」
「なんかあったらすぐに助けを求めて。いい? 」
「うん!!」
そんなやり取りをしながら、辿りついたのは山奥だった