黄泉と零
「・・・・み、・・・・よ・・・っ!黄泉っ!!!!」
「ふぁあっ!?」
いきなり耳元で大きな声がして、あたしは思わず声をあげた
「ふぁあじゃないわよ、黄泉」
呆れたような顔であたしを見下ろすその人はあたしの2歳離れた実の姉
「おはよ、零」
眠たい目を擦って、布団から起き上がる
「もうおはようの時間じゃないけどね」
ため息と同時に零はあたしにデコピンをくらわせた
「いったい!何すんのさ!」
「あんたがいつまでたっても、起きなかったからでしょう」
馬鹿にした目で笑いながらそう言った零に少し腹を立てるけど、じゃれてるだけだと分かってるので怒ったりはしない
ただ一緒にじゃれるだけ
「れーーいぃいいいいーっ!」
零の腕を引っ張って布団の中に引きずり込んで脇腹をこしゃばしてやる
「きゃっ、ちょっ!!やめっ!黄泉っ!?アハハっやだっちょっアハハハハっ」
「くらえぇい!こしょこしょ攻撃とりゃあああっ」
これがあたし達の日常
馬鹿みたいにはしゃいで、笑って、くだらないことをする
〝仕事〟へ行く
これがあたし達の日常
零はあたしより2歳上で、お調子者だけど面倒見がよくて、しっかりしてるしほんとにいい姉だと思う
〝仕事〟も上手い
1、2を争う程、的確な〝仕事〟をして速やかにこなしてしまう
それに加え、長い綺麗な漆黒の髪に色白の肌、端正な顔立ち
長身でスタイルもいい
この人の横に並ぶのは気が引ける
あたしはと言えば、出来ないことばかり
〝仕事〟もまだまだ見習いでみんなに迷惑ばかりかけてしまう
髪の毛も肩ほどの長さで黒に近い茶色、それに童顔
背も低くて胸もない
月とすっぽんの差ってやつだ
同じ親から生まれたのにどうしてここまで差があるのだろうといつも思う




