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天然少女は、電波少女よりも性質が悪い!?~悪役令嬢不在 編~

続きはありません。


あれは、忘れもしないクソ王子との初顔合わせの日。

「こんな、性格の悪そうな女と俺は婚約したくない!」

クソ王子は、そうほざきやがりました。

私はこの時思いました。

そのケンカ買ったと。

私は、エリス・フォントテール。

フォントテール公爵家の家訓は、『ケンカを売られたら、相手が這いつくばって許しを請うまで叩き潰せ』です。

私は、この時とても爽やかな笑顔でした。

周りの大人たちが、恐怖で顔色を悪くすらい。

父も、笑顔でした。

いくら、親友である国王様との約束とはいえ、今やだ王族が学ぶべき勉強から逃げているクソ王子と婚約をさせずに済むことを。

国王様は、安心しました。

クソ王子が、馬鹿なので私と婚約すると次期国王になってしまうので、それをせずに済むことに。

そして、私と父と国王様は超笑顔で婚約話をなかったことにしました。

クソ王子が唖然としていたのは無視です。

父は宰相職に就いており、そして国王様の親友です。

父と国王様は、学生時代に冗談半分で「お互いに息子か娘ができたら婚約させよう」なんて大馬鹿なことを約束していました。

それが、この結果です。

結果報告を聞いた母は、それは素敵な笑顔でブリザードを屋敷中に轟かせました。


私は翌日から、家訓にのっとりありとあらゆる特訓をしました。

すべては、クソ王子を完璧にすべての方向で潰すためです。

クソ王子の弟君は礼儀正しく優秀な方ですので、クソ王子を潰しても何の問題もないでしょう。

祖父から魔法訓練を受けたある日、私のミスで祖父の放つ魔法を受けてしまい気絶してしまいました。

その時にここが、『恋の魔法は、布団が吹っ飛んだ!』と今時の人たちが言わない寒いギャグをくっつけただけの乙女ゲームの世界だということに。

前世の私は何を血迷ったのか、中古のワゴンセール棚にあったこのおかしなタイトルのゲームを買いプレイしました。

ここは、魔法が存在するファンタジーな世界。

ベッドが主流で、布団は存在しません。

なのに、布団がタイトルにつく意味不明。

ストーリーは単純で何の捻りもなく、魔法で魔物を倒してヒロインと攻略対象たちが絆を深めるゲーム。

私のゲームでの役割は悪役令嬢。

ゲームでは、クソ王子をと婚約していてヒロインに嫉妬して嫌がらせをするという小物の悪役。

あんな、クソ王子を巡ってヒロインに嫉妬って(笑)

ゲームでの私は、血迷っていたようです。

ヒロインは、セレン・ラスケット。

『癒し属性』の魔法の持主。

すべてを癒す力。別名、神の愛娘と言います。

ちなみに、私は『神属性』です。

神のように、すべての魔法を操る。

ヒロインのセレンが生まれた村は、あまり人が寄りつかない辺境の小さな村。

その小さな村は排他的で、独自のルールが存在します。

そして、セレンが魔法と知らずに偶然魔法を使ってしまうと、セレンを『化け物』として蔑み排除しようとしました。

ですが、セレンの母親は村長の娘だったので特別にそれを免れます。

セレンの父親は顔のつくりがよく、常に村の若い娘と浮気しています。

自分の娘であるにもかかわらず、セレンの父親は彼女に虐待を繰り返しました。

『化け物だからいい』という免罪符を持って。

そのことを知った村人たちは、『化け物から村を守る男』としてセレンの父親を英雄扱い。

そして、セレンの父親は妻と別れ愛人の中でも若く美しい女と結婚しました。

母親はというと、それでもセレンを愛し「こんな風に生んでしまって、ごめんね」と娘に謝り続けます。

母親は気丈で美しい人でしたが、村長である父親や村人の圧力に耐え切れず、病弱になっていきました。

セレンの父親は今でも、セレンの母親に未練がありましたので、セレンを殺して、セレンの母親を『化け物から解放した』という自分の都合のいい言い文のもと再び物にしようとしたのです。

それに気付いたセレンの母親は、娘を庇い死亡。

セレンの父親は自分の女を奪った化け物として、セレンを再び殺しかかろうとするも、セレンが魔力を全力で解放したために失敗しました。

セレンは、魔力で母親と住む自分の家を他者が入れないようにする。

そのセレンの魔力から溢れ出る力を感じた国の上層部が、村まで行きセレンを説得して王都に向かわせる。

国の上層部はセレンを学校に入学させる。

それから、学校になかなか馴染めないセレンを国の命令により攻略対象たちが気にかけ、三流恋愛劇が始まるというものです。

ヒロインのセレンの過去が胸糞悪いので、ここはバキッとフラグを折りに行かないと。


私は公爵家の娘という地位を利用して、領内を回り魔物侵入対策のための結界を貼っています。

私より弱い魔物たちは、結界によって消滅して領内に侵入できないというやつですね。

父と母は、はじめは反対したのですが「領民を守るのは公爵家の義務だ」と言って納得してもらいました。

そして、結界を貼るという名目で両内を廻っていた最終目的地のセレンのいる小さな村までたどりつきました。

この時期までは、セレンが父親に虐待されるだけですんで母親はまだ元気なはずです。

護衛をつけていたのですが、小さな村に公爵家の護衛が来るというと警戒されるので、村に入る森の手前で待機してもらっています。

私が、村に入って数十分後に入って来る手筈になっています。

私が、村に入ろうとするとナニカで阻まれて村に入れませんでした。

これは、乙女ゲーム通りにしたい神様の思惑が創り出した結界ですね。

なので私は神様がいるであろう空に向かって、

「物語通りにすれば、彼女が幸せになると思っているのですか?母親の死が、神様が見捨てたことが原因だって知ればあの子はどう思うでしょうね」

私は蔑んだ言い方で言いました。

そしたら、私が村に入ることを拒んだ結界は崩れて無くなりました。

彼らに待機してもらったのはこういうわけです。

結界に拒まれて入れないなんて、かっこ悪いじゃないですか。

村に入ると、セレンを痛めつけている男の人がいました。

周りは、村人が取り囲んで野次を飛ばしています。

あれが、セレンの父親ですか。

私はとりあえず、セレンを痛めつけていたセレンの父親を思い切り蹴り飛ばしました。

村人たちは私の行動に驚いていますが、公爵家の人間として教育された身としてはこれくらい簡単にできます。

私はできるだけ優雅にお辞儀して、

「こんにちは。私は、エリス・フォントテール。フォントテール公爵家の者です。ここに、『化け物』がいるという噂を聞きまして領を王家より預かる公爵家として憂いています。なので、 『ソレ』を引き取りに来ました」

「そんな噂は出てないはずですが」

不機嫌を前面に出した村長が威圧感を出して言ってますが、この程度でビビると思っているのでしょうか?

私を馬鹿にしてますね。

話の通じそうにない馬鹿のことなんて、すぐに終わらせることに限るでしょう。

なので、殺気を全開にして話します。

私が出す殺気に気付いて私につけられた護衛がすぐに来るでしょうが、それは仕方のないこと。

「それはつまり、辺境の小さな村の村長ごときがフォントテール公爵家を馬鹿にしてると取ってもいいってことでしょうか」

村長とその他の村人たちは、私の殺気に当てられ腰を抜かしてしまいました。

「こちらで引き受けるってことで、いいですね?」

「もちろんだとも、その化け物をここから連れていけ!」

なぜか顔色を悪くした村長が、威勢のいい怒鳴り声で言いました。

でも、腰を抜かしたままって事実が間抜けに見えますよ。

「セレン、あなたの家まで行きますよ。お母様にお話があるのです」

「うん」

セレンは私の手をしっかり握って、ついてきました。

「エリス様、その子どもは?」

護衛の一人が言いました。

「彼女はセレン。『癒し属性』の魔力の持主です。我がフォントテール公爵家で保護しなければなりません。そのために、彼女の母親に話しに行きます」

「希少種ですね。下手な家に関われば、権力争いに巻込まれかねない」

「そうです。父の力で、保護できる程度ですけどね」

護衛たちと話しているうちに、セレンの家までつきました。

そして、セレンの母親と今後について話し合いました。

セレンの母親は、私たちについてくることになりました。

この村に対して、神様が怒りを我慢している原因は神の愛娘がいたからです。

その神の愛娘が、いなくなったことでこの村が神の怒りを受けるのですが、私には関係ないことです。

どうなろうと知ったことではありません。


家につくと、待ち構えた父に殴られました。

「エリス様をイジメちゃだめ―――!」

そしたら、セレンが私の前に立ち父から私を庇いました。

私はセレンの頭を撫でて、

「私は大丈夫ですから、セレンはお母さんと一緒に休んでて下さい」

「でも」

「心配しなくでも大丈夫です。それよりも、セレンはしっかり休んで疲れを取ってください」

「わかった」

彼女は渋々、メイド長のロッテンさんに連れられて屋敷の中に入っていきました。

屋敷の広間内で使用人たちに見守られる中、父にお説教をされている途中にブリザードを従えた母が来ました。

私は母にセレンを連れてきた経緯を自白させられ、洗いざらい言わされました。

もちろん、精神を病んでいると勘違いされるので前世のことは言っていません。

私の真の目的がバレてしまったのですが、後悔はしていません。

父と母と使用人たちは、やっぱりそういうことかと呆れているようでした。




あれから十年後____

セレンが、乙女ゲームの舞台の学園に入学する日が来ました。

「エリス様、私の制服姿にあってる?」

「似合ってますよ」

私はそう言って、セレンの頭を撫でました。

乙女ゲームでのセレンの学園入学は、国の命令によるものでした。

ですが現実では、我がフォントテール家が後見だということで入学をもぎ取りました。権力万歳!

「姉上、セレンに構っていると遅れるぞ」

「「えっ!?」」

「えっ!?」

エステバンはなぜか疑問形で訊き返しました。

エステバン・フォントテール。

私の弟で、攻略対象の一人です。

ちなみに、セレンをこの家に連れて来た時には『お仕置き部屋』に閉じ込められていました。

いつものように、公爵家が学ばないといけない勉強から逃げていた罰でしょう。

「エステバン、私は『転移魔法』を使えるので問題ありません。今まで、ギリギリまで家で寛いでいたでしょう」

「そうよ、エステバン様。ここ2年間、ずっとエリス様はそうしていたのに全く気付かなかったの?」

「荷物はどうしたんだよ!」

「私とセレンの分なら、とっくに寮に送りましたよ」

「俺のはナシかよ!」

「言われませんでしたので」

「言われなかったら、やらないよねー」

説明しよう。

乙女ゲーム『恋の魔法は、布団が吹っ飛んだ!』での悪役令嬢エリスのエステバンルート最期は、家から追放+処刑でした。

ゲームでの『私』の恨みですよ!

「エステバン。もう行かないと、遅れますよ」

「俺も転移魔法で連れていけばいいだろ!」

「イヤです。それよりも、背後を振り返った方がいいですよ?」

私は、エステバンの後ろを指差しました。

そうです。エステバンの後ろには、ブリザードを思いのままに操り、般若のような顔をした母が。

実はエステバンは、学園に行くための用意を先延ばしにし、ギリギリまで放っておいたのです。

そして、ギリギリになって使用人たちに上から目線で命令し、先ほどやっと用意が終わったというわけです。

ブラック企業ではないんですけどね、うちは。

私は両親にキツク言われたのです。

エステバンのために転移魔法を使ってはいけないと。

それに乗じて私は、『エステバンのために、私の魔法は一切使用しない』と母に許可を取りました。

母は出していたブリザードを収め、超笑顔になって許可をくれました。

どうやら、馬鹿エステバンは母の逆鱗に触れたようです。

現在、フォントテール公爵家で一番力を持っているのは、母なのです。

ちなみに、セレンの学園に行く用意は余裕を持って一緒に用意をして、私の荷物と一緒に転移魔法ですでに送っていたというわけです。


学園での新学期初日。

登校すると、校舎の前でいつものようにクソ王子が私を待ち構えていました。

クソ王子的には不意打ちのつもりで私に魔法勝負を仕掛けてきたようですが、いつものようにあっさり勝負がついて私が勝ちました。

今のクソ王子は気絶して、いつものように学園の職員たちによって医務室に運ばれています。

「エリス様、大丈夫?」

セレンが心配そうに声をかけてきました。

「もちろん、大丈夫です。あの程度の者に私は倒せません。それよりも、セレン。アレは、この国の第一王子でクソ王子と言います。学園内で、もっとも関わってはいけない内の一人です。本人の前でクソ王子と言うと不敬罪になるので、クソ王子の前では『(クソ)王子様』って言ってればいいですよ」

「なるほど。かっこの中は言わなければ、わかりませんもんね。分かりました!」

『学園内で、関わってはいけない人たち』というのは、もちろん弟以外の攻略対象たちです。

攻略対象たちは非常にとても残念なことに、ゲームと違って『ゲームでの彼らを知っていると詐欺だ!』というしかないマジで詐欺な性格です。

顔だけはいいのでなので、ソレだけで判断する中身を見抜けない頭の軽すぎる女子生徒たちに大人気です。

弟はというと、救いようのないくらいどうしようもないクズな性格だったのですが、母のブリザードを交えた数年間の調教と肉体的教育法により、ようやく人間としてまともな性格に去勢されました。

身内の贔屓目かもしれませんが、何とかゲームでのエステバンに近い性格になっています。

セレンが学園生活に慣れた頃、弟以外の攻略対象たちに鬱陶しく付き纏われているという噂を耳にしました。

後で奴らを闇討ちしないと。

お友だちによるとキレたセレンが、

「あんたたちと比べると、数段エステバン様がマシよ!エステバン様と婚約できれば、『エリス様の義妹』になれるのよ―――!」

と言ったそうです。

そうすると、なぜかライバルが増えたとか。

弟はなぜか数日間、ショックで寝込んだとか。


学園が休暇期間になって、すぐに転移魔法でセレンと家に帰りました。

そしてすぐに、両親にセレンと弟の婚約をお願いしました。

『神属性』の魔力の持主の私のお願いだということで、国王様の承認付きでセレンと弟の婚約は成立しました。

休暇期間が終わって学園に戻ると、そのことをお友だちに報告しました。

私たちの会話に聞き耳立てていた周りの女子生徒たちはなぜか崩れ落ちていました。



ヒロインのセレンがかわいくていい子だったので、前世を思い出して『悪役令嬢』の役目を放棄してよかったです!

【エリス・フォントテール】

学園内では、容姿・性格・家柄を鼻にかけないと男女ともに人気。

『神属性』の魔力の持主は他にもいるが、彼女以外にまともに扱える者はいない。

『神属性』しか、使い魔は持てない。

使い魔は、黒豹という設定。


【セレン】

エリス大好き。

エリスの義妹になりたくてエステバンの婚約者になったが、ちゃんとエステバンのことも好き。

最強魔法『布団を出す』が使える。

この布団は、神属性以外を布団の中に誘い眠らせるというもの。

ちなみに、神属性にはセレンの持つ魔力が利きません。


【エステバン・フォントテール】

エリス目的で、女子生徒たちに近づかれる不幸な人。

セレンが初恋。


【攻略対象たち】

空気なのは、いつもの仕様です。

ごめんなさい。

クソ王子の正式名称はありません。


【セレンの母親】

現在は、フォントテール公爵家でメイドをしている。






ここまで読んでくださり、ありがとうございました。

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