第8話 女(モンスター)が我が家に来た? これは襲うしかない!!
足元が見えにくい程に日が暮れた頃、町外れにある小屋に着いた。オレは今日の仕事の顛末をハンターギルドに報告し、帰ってきたところだ。
「ただいま!!」
誰もいないのにそう言ってしまうのは孤独を紛らわすためだ。だって、帰ったら真っ暗な部屋だぞ? 寂しさに耐えられないだろう。ああ、彼女いない歴が実年齢以上の独身男の悲劇。なんて、オレが妄想に耽っていたら、
「おかえりなさい」
という声がどこからか突然に聞こえてきた。誰だ!? 幻聴が聞こえるほどにオレは参っていたのか? オレは慌てて声がした方向を見ると暗闇の中に何者かの人影。いや、本当に人影だろうか。天井にぶら下がっているように見える。泥棒でも入ったのだろうか。オレは急いでランプに火をつける。
「なんでここにいるんだ!?」
オレは驚いた。だって、天井から蜘蛛の糸を垂らし、逆さずりの女が部屋の中にいたのだから。
「きちゃった」
実に可愛らしい声と共にはにかむ彼女を見てテンションの上がらない男はいないに違いない。いや、オレだってわかっている。普通の男性は女がストーカー的に待ち構えていたらドン引きすることくらいは…
だけど、こっちは前世から続くシングルライフ。つまり、ストーカー的な意味で、あなたが恋しくて追いかけてきた? オレはウェルカムだぜ。
「そうか。そうか」
そう言ってオレは微笑む。もちろん、それだけじゃないよな。女が男の家に来たのだ。わかるでしょう? って、そんな感じのことを言われるに違いない。いや、そうだ。きっとそうだ。
「うん、わかってるよ! わかってるよ。アラクネ!!」
オレは空中で服を脱ぎ捨てて、アラクネに飛びかかった。女が男の家に来るということは性的なことを望んでいるのだ。昔、どこかの少女漫画で見たから間違いない!!
「なにをするの!!」
な、なんだ? 彼女から吐き出された糸がオレの方に飛んできたぞ!? ちょ、やめてくれ!! どんどんと吐き出される糸がオレに絡みついて動けなくなってきたぞ。
「アラクネさん、これは新手のプレイでしょうか!?」
蜘蛛の糸にぐるぐる巻きにされながら、オレはそんな情けない声を上げた。ちくしょう。普通は男の家に来るってことはあれやこれやを覚悟してくるもんだろう? なんなんだよ。この展開はわけわからん。
虚しい心の叫びは誰かに届くはずもなくオレはアラクネから男女の付き合いと友達とはどういうものかについて説教を受けた。まさか、そんなことをモンスターから教わることになろうとは……
多分、そんなことを女に教わるのはいくら世界が広いと言ってもオレだけだろうな。