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第6話 卑怯者とモンスター狂い

 木々が生い茂る森の中、本来なら倒すべき魔物であるアラクネを庇うようにオレは彼女の前に出る。


「…聞き間違いか? あいつはたくさんの人を喰い殺した凶悪な魔物だぞ!!」 


 オレは奴の言葉に返答をしないで行動で語ってやった。アラクネにはこっちの方が理解しやすいはずだ。多くの人間の言葉で傷ついた彼女がオレを信じられるようになるためには行動で示すのが一番だろうからな。


 オレは鋼鉄の棒を斜に構えて、奴に飛びかかり、振り下ろす。大地がオレの振るった鋼鉄の棒からの風圧で微かにへこむ。ふむ、今の攻撃を避けるとはこいつは中級の冒険者以上だな。


「危ないな。この攻撃を見る限り、貴様は並みの冒険者じゃないな」


 そう言って、睨みつけてくる騎士風のイケメン男。ふ、オレも伊達や粋狂で、二つ名を持っているわけじゃないからな。二つ名はオレの純然たる実力で手に入れたモノだ。


「次はこちらから、攻めさせてもらうよ」


 そう言うや否やイケメン男は持っていた剣を構える。そして、オレの頭部に目掛けて突きを放ってきた。オレの鋼鉄の棒、もとい杖で剣を叩き落とした後、右手を滑り込ませて、お返しとして突いてやった。


「あぶねぇ!?」


 剣が下に叩き落されたイケメン男は右サイドにステップをし、オレの攻撃をギリギリの所で回避した。


「今の攻防でわかっただろう? 実力の違いがさ」


 オレはわざと大きく息を吐いた後に相手を威嚇するために睨んだ。


「く、くそ!? あと少しで大金持ちになるチャンスだったのに!!」


 地団駄を踏んでまるで子供みたいな奴だ。だが、これで諦めて帰ってくれれば無駄な争いをこれ以上しなくて済むんだが…


「…本当に私のために戦ってくれているの? ニンゲンが?」


 ヨロヨロとアラクネが傷を庇うように押さえながらこちらに歩いてきた。意外とアラクネはチョロインなのか!? もしかして人に優しくされることに慣れてないからチョロインなの? ならば、オレが言うべきことはこれだな。


「当然だろう。君はオレが初キスを捧げたモンスターだぞ? 守るのは漢として当然の義務だ!!」


 オレは胸を張ってそう答える。決まった。これでアラクネはオレになびくはずだ。いや、なびく! 前世で読んでいた少年漫画から得た知識が間違いないとオレに確信をもたらしているから絶対にそうだ!!


 オレが格好を付けてアラクネと見つめ合っていたら、


「こんな状況で呑気に会話をするなんて馬鹿だろう?」


 と言ってイケメンの男が駆け出す。それもアラクネの方にだと!? 騎士風のイケメン男はいやらしい笑みを浮かべながら、怪我をして俊敏に動けないアラクネの首を腕で掴み、そのまま奴は剣をアラクネの首筋につけた。


「さぁ、形勢は逆転だな? おまえが武器を置かなければこのまま弱ったコイツを叩き切るぞ?」


「ま、まて、落ち着け!! 話し合おうじゃないか!!」


 折角、攻略したアラクネを殺さないでくれ! おい、聞いているかそこの馬鹿!!


「うーん、どうしようかな」


 どうしようかなって落ち着けよ。頼むよ。アラクネを殺さないでくれよ。そんな別嬪べっぴんさんを殺すなんて勿体ないだろ!? オレは突然の出来事で混乱する頭を使って、この状況を脱する方法を考える。


 …ダメだ!! まったく、打開策が思いつかない。やばいよ!


「いや、よく考えたら、切った方がいいよな。うん、もう切ろう。こんなチャンス逃す奴はバカだろ!」


 嘘だろう? 騎士風の男がアラクネの首筋にあった剣を動かす。このままだとやばい、クソ!!

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