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第17話 変態は馬(ケンタウロス)に蹴られて死んでしまえ!!

 大自然が生み出す雄大な大地に草木が力強く生える草原を馬蹄の音が鳴り響く。その足音はまるで強大な敵から逃げる草食獣が全力で駆けているように慌ただしい。


「逃げろ! モンスター狂いがやってきたぞ!」


 群れを逃がすためにあえて残る正義感。嫌いじゃないね。でも、そんなに怯えられると、ちょっと傷付いちゃうな。


「おい、おい、人を化け物みたいに言うなよ」


 今回のハンターギルドからの依頼は町に過剰に近づいてきたメスのケンタウロス集団をできるだけ、遠くに引き離すことだ。もちろん、もう既に依頼の最低条件は達成されている。


 だから、オレは本能の赴くままに狩を楽しんでいる。


「化け物の方がまだいいわ! これでも喰らって死ね!!」


 鋭い槍を持ったままケンタウロスの脚力を使った突撃。単純な攻撃だが当たったら即死だ。オレは咄嗟に右側に跳躍することでなんとか回避ができた。


「お前に襲われた我が部族の者たちは精神的なショックでご飯すら喉を通らない状態なんだぞ! この乙女の敵め!!」


 すごい剣幕で捲し立てるケンタウロスのメス。うーん、切れ長の目にキリリとした風貌。怒った顔も素敵だ。


「オレはただケンタウロス娘の素敵なヒップを撫でまわしただけだぞ? そんな言い方は酷いな」


 それは幾ら何でも言いすぎだろう? だって、ちょっとケンタウロス娘のヒップを手で触り、そして頬ずりと抱擁をしただけだぞ。まぁ、ハンティングに夢中で風呂に2ヶ月くらい入っていなかったから臭いがヤバかったのは否めないけどさ。


「酷いのは貴様だ!!」


 オレの相槌を聞いた瞬間に彼女の眉毛がつり上がる。そう思ったら、


「やばい。考え事している場合じゃない」


 とオレがそんなことを言っているタイミングでケンタウロスの美麗な馬脚から猛烈な蹴りがはなたれた。こんなの喰らったら、さすがのオレもノックアウトだ。オレはケンタロスの攻撃を避けるために後方に飛ぶ。


「貴様! 本当に人間か!?」


 もう既にケンタウロスの群れに襲撃をかけて32回目だ。奴らの攻撃パターンも読めてきたぜ。


「愛さえあれば人はどんなこともできる! そうケンタウロスの我儘で豊満なボディにもタッチが出来るのだ!!」


 既に君に8回もタッチしているしね。これぞ、愛のなせる技か?


「どう聞いても、おまえのは煩悩だろうが!!」


 そう言って睨むケンタウロス。うーん、全人類の半分の夢を煩悩と片付けるのはいかがなものだろうか?


 なんて、オレがアホなことを考えていると、奴はこちらを見た後に反転し、駆け出す。


「って!? 会話中に逃げるとか卑怯だろ!!」


「フフフン、愚か者め。別に私はお前と会話など望んでいない。仲間を逃がす時間を稼いでいただけだ」


「待て!! ッチ、オレの足を舐めるなよ!! オレはモンスターを追いかけて20数年間、一度も休まずに走り続けた人類最速のハンター・サイゾウだ!!」


 オレは直ぐにケンタウロスを追いかけるために駆け出す。


「っく、相変わらず人間とは思えない早さだ」


「じゃじゃ馬娘をゲットするにはこれくらい走れないとね」


 そう言って、すぐに逃げた獲物に追いつくのがサイゾウさんのすごいところよ。まぁ、さっきの言葉はカッコをつけるために言ったけどさ。実際は走っている場所が川辺でぬかるむ道だから簡単に追いつけたんだよな。オレの足が速いんじゃなくてケンタウロスの速度が遅くなっているだけなんだよな。しかし、馬鹿な奴だ。足場が悪い所にどんどん走って逃げていくなんてな。


「どうした急に? こんな場所に止まってよ」


 しめた。体力が切れる前に止まってくれてラッキー。さすがにこれ以上走ると体力が切れるぜ。


「フフフ、観念してオレのものになる気になったかい?」


「……」


 美人が俯いて沈黙。これはこれで良いね。


「…もう疲れた。お前の好きなようにしていいわよ」


 ハハハッハ、ついに観念したか。やったぜ。長い道のりだった。ついにサイゾウは男になります。では、相手を待たせるのは失礼になるので、そのワガママで自己主張の強い双丘を堪能させて頂こうか。


「今、行くよ!」


 オレはいつものようにルパンダイブで彼女の2つの山脈に突撃しようと飛びかかる。


「このタイミングを待っていたんだよ!!」


 そう言って、ケンタウロスは槍でオレを突いてきた。


「空中で避けるのはオレにとっては造作もない」


 ルパンダイブのエキスパートであるオレにはその程度なら簡単に避けられると内心で相手の攻撃をバカにしていたら、


「よし、かかった。バカね、誘導したのよ!」


 と避けた先にじゃじゃ馬娘の華麗な後ろ足蹴りがきやがった!!

 

 さすがのオレもフェイント混じりの超高速な蹴りを空中で避けることは叶わず、蹴り飛ばされる。


「痛え!? って、川に落ちる!?」


 ケンタウロスに蹴られ、オレは弾き飛ばされた後、すぐに川に落ちた。


「そこで反省しているんだな。…イヤ、違うな。そのまま死ね!!」


 そう言った後、ケンタウロスのメスは唾を地面に吐いて、他のケンタウロスが逃げていった方向に駆けていった。


 川に落ちたオレは必死に泳ごうとした。しかし、凄い速度で水に叩きつけられた痛みの所為だろうか思うように体が動かない。


「お、溺れる。た、助けて!?」


 流れの急な川でもがいていたオレはそのままそこで意識を失ってしまったのであった。

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