前日 藤間京
《前日 藤間京 Toma Kei》
『えー、みなさん、あー、みなさんじゃねえか。 厳密に言えば犯罪者のみなさん。あなたたちに今日から 生きる権利はありません。』
その青年の言葉に街の動きが止まった。
まるで時が止まったようだった。
『今日まで日本の掲げる民主主義にぬくぬくと温められてきた犯罪者のみなさん。こんにちは。今どんな気分ですか。』
『今日から憲法が変わります。先ほど言ったように、犯罪者、元犯罪者たちの人権は完全放棄されるようになりました。』
『更に言うと 生きる権利がないということは刑務所もなくなります。』
『健全な一般市民様、それは困ると思いますよね。犯罪者なんかが野放しになるのと同じですからね。』
青年は淡々と続ける。
『でもご安心ください。犯罪者たちは貴方達に危害を加える前にこちらで見つけ次第処分します。』
『もちろん 健全な一般市民様も犯罪者を見つけたら即処分して頂いて構いません。犯罪者を殺したとしても健全な一般市民様たちが罪に問われることはありません。』
『なんせ 彼らは ゴキブリ、いや、それ以下、ゴミと同等です。』
青年が笑った気がした。
『そもそもなぜこんなことになったかという経緯を説明します。』
『それは 経費削減です。』
『もっとはっきり言わせて貰えば』
『税金で犯罪者をなんで養わなければいけないの。税金の無駄遣いでしょうが。』
『って、ことです。』
青年の無機質な声が街に響きわたる。
藤間は街を見渡した。
全員が画面の青年に目が釘付けになっている。
コソコソ話をするものもいれば、携帯端末で動画をとるものもいる。
『な、の、で。他人の生きる権利を奪ったゴミクズに健全な一般市民様の税金で生きていく価値はないので今回こういうことになりました。』
『ちなみに犯罪者さんのクローンはもちろん処分です。』
『それでは ゲームの始まりです。』
青年が空を叩く。
無機質な音が静まり返った街に響く。
『犯罪者のみなさん。前科者のみなさん。』
青年はおどけたようにフラフラしながら立ち上がっり腰を深々と折り曲げ、言った。
『永遠にさようなら。』
To be continued.
こんばんは。榎本唄です。
続きが読みたいというコメントがあったので2話目の投稿です。
ほぼ説明で申し訳ありません。
本格的に登場人物達が動き出すのは次話以降です。
今回も続きが読みたいというコメントがついたら3話の投稿というのにしようかなと思っております。
余談
1話にコメントが付いた時点で嬉しすぎて椅子から転げ落ちました。 ありがとうございます。