山の向こう
あの山の向こうには何があるんだろう。
村に住む女の子は、毎日家から見える高い山を見てそんなことを考えていました。
女の子が住んでいる村は、その大きな山のふもとにありました。
「遊びに行ってきます!」
「はいはい。あまり遠くに行っちゃいけないよ!」
「はーい!」
女の子は、いつもと同じように遊びに出かけました。
でも、いつもみんなで遊ぶ広場に行っても誰もいませんでした。
「あれ? みんなどこに行っちゃったんだろう?」
そう考えて周りを見てますが、誰も見当たりません。
「おかしいな……今日、何かあったっけ?」
その後、仲のいい友達の家に行ってみても、みんな用事があるから遊べないよ。という答えが返ってきました。
「つまんないの」
女の子は、とぼとぼと村の中を歩いていました。
「……こっちにおいでよ」
突然聞こえてきた声に女の子が周りを見ても、誰もいませんでした。
「一緒に遊ぼうよ」
声のした方を見ると、そこには女の子がいつも見ている山がそびえたっているばかりでした。
「山に行ってみようかな?」
そう思ったけれど、やめておこうと首をふりました。
たぶん、山の向こうに行ったら帰るのが遅くなっちゃうと……代わりに、山の向こうに何があるのか考えてみることにしました。
*
そうだ。
山の向こうには、おとぎ話で出てくるような大きなお城があるのかもしれない。
そこには、白馬に載った王子様がいて、ニコニコと笑っているの。
私は、その城に行ってお姫様になるの!
「おぉ世界一美しい姫よ!」
そうなったらいいのにな……
でも、そこまで考えて違う違うと頭を振りました。
そんな大きなお城があるのなら、ここから見えてなきゃおかしいと……
*
次に女の子は、山の向こうには大きな湖があるのかもしれないと考えました。
そこにはたくさんの妖精さんたちがいて、いつも元気に遊んでいるのだと。
そこに行くと、たくさんの妖精さんたちが寄ってきて、一緒に遊ぼうって言ってくれるの。
そして、私もずっとそこでみんなと遊んでいるの。
でも、それだとおうちに帰れないからさびしいな……
*
そんな風にいろいろ考えていると、山の方から声がした。
「そんなに気になるなら山においでよ」
今度は、はっきりとそう聞こえたのだ。
「だれなの?」
女の子が聞いても答えが返ってきませんでした。
「ねぇ返事をしてよ」
そう言っても、だれも答えてはくれません。
どうしても、声の主が気になった女の子は、山に向かって歩き出しました。
山に入ると、すぐ横の草むらからうさぎが飛び出してきました。
「おっと、そこのお嬢ちゃん! パーティに遅れそうなんだ! 近道を知らないかい?」
「パーティ? 私知らないわ」
女の子が答えると、うさぎはそのまま走り出してしまいました
「大変だ! このままじゃ大遅刻だ!」
「待ってうさぎさん!」
女の子が声をかけても、うさぎは必死だったのかそのまま走り去ってしまいました。
「どうなっているんだろう?」
少し不思議に思いましたが、そのまま山の中を歩くことにしました。
しばらくすると、大きなクマさんがやってきました。
「やぁ君もパーティに行くのかい?」
「いいえ。そうじゃないわ。でも、さっきうさぎさんがパーティに遅れそうだって言って走って行ったけど、あなたは大丈夫なの?」
女の子が心配して聞くと、クマははっはっはっと笑いながら答えました。
「あぁもちろん。卯年があるせいでうさぎたちは、早くいかなくちゃいけないけれど熊年なんてないからね」
「ねぇ私もパーティに行きたいんだけど、招待状はなくて大丈夫かしら?」
女の子が聞くと、クマは女の子の頭を優しくなでました。
「大丈夫だよ。ただ、パーティは山の向こうでやるからちょっと遠いけどいいかい?」
「大丈夫だよ。パーティ会場まで案内してもらってもいいかしら?」
「もちろんいいさ。ついてきて」
クマは女の子の手を引いて歩き出しました。
*
しばらく歩いていると、後ろからネコが追い付いてきました。
「よっお前らもこれからパーティに行くのかい?」
「そうよ。ネコさんもそうなの?」
「いんや、俺は違うね。俺様はこれから木の上で昼寝をするんだ。だから、パーティになんか行かないよ」
ネコはそういうと、軽い動きで木の上に登ってしまいました。
「君の所にも招待状が来てるんだろう? 本当にいかなくていいの?」
「いいんだって、俺様は昼寝がしたいの!」
クマの言葉に耳を貸さず、ネコは木の上でごろんと寝ころがってしまいました。
「ネコって本当に昼寝が好きなのね」
「まぁネコは夜に起きて昼は寝ているからね。フクロウと一緒だよ」
「へー」
寝ているネコを置いて、女の子とクマはさらに山を登っていきます。
*
山の真ん中ぐらいまで登ると、道が二つに分かれていて看板が立っていました。
「お二人はパーティに行かれるんですか?」
「わっ看板がしゃべった!」
女の子は、思わず驚いてしまいました。
「別に私がしゃべったっていいじゃないですか。それよりもいかれるんですか?」
「あぁそうさ。こっちの女の子と一緒にね」
「そうですか。それではどうぞ。左に行ってトンネルを抜けると山の向こう側に行けます」
看板はそう言いながら、矢印を左に向けていた。
「ありがとう。それじゃ、行こうか」
クマに手を引かれて、女の子は左の道を歩き出しました。
*
しばらく歩いていると、目の前に大きなトンネルの入り口がありました。
中はとっても真っ暗です。
「クマさん。大丈夫なの?」
「あぁもちろんだよ。それじゃあ行こうか」
クマは女の子の手を引いて、トンネルの中を歩き出しました。
トンネルの中は、とっても暗くてひんやりしていました。
「君たちもパーティに参加するのかい?」
突然、頭の上から声が聞こえてそちらを見ると天井で逆さになっているコウモリがいました。
「そうよ。あなたもそうなの?」
「いんや、ボクはここに住んでるんだけど今日はたくさん人が通るから、パーティでもあるのかと思ってね。まぁ楽しんできなよ。ボクはこのトンネルを管理しているから忙しいんだ」
そういうと、コウモリはパタパタと飛んで行ってしまいました。
*
真っ暗なトンネルをしばらく歩いていると、向こうがわに光が見えてきました。
「出口だ!」
女の子は、一気に走りだしました。
「すっごーい!」
トンネルを抜けると、そこはパーティ会場でした。
会場を見ると、うさぎやウマ、イヌたちが一生懸命準備をしていました。
「おやおや、少し早かったみたいだね。準備を手伝おうか」
「うん!」
そうして、女の子はクマと一緒にパーティの準備を手伝い始めました。
「えっと、まずはこれをここにおいて……」
「ごめんごめん。そのテーブルにこのお皿を置いてくれないか?」
飾りつけをしていた女の子にイヌが真っ白なお皿を渡します。
「いいよ」
女の子は、それを受け取るとテーブルの上に並べました。
*
そうやって準備をしているうちにすっかりと日は暮れて、たくさんの動物たちがぞくぞくと集まってきました。
「あれ? あなた、さっきの……」
女の子は、さっき昼寝するから行かないといっていたネコの姿を見つけました。
「いんや、昼寝をしていたらすっかり目が覚めてしまってな。もう一度寝るのもつまらなかったから、来てやったんだよ」
「ネコさんって素直じゃないのね」
どうせ来るのなら、最初から来るっていえばいいのに……
女の子は、そう思いながら、ネコと話していました。
ネコの話はとても面白くついつい、ずっと聞いてしまっていたのです。
会場にはたくさんの動物たちがあふれ、パーティをやると言い出した神様のあいさつも終わりました。
さぁ楽しいパーティの始まりです。




