表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

薔薇の下に

薔薇色の手紙

作者:

 届けられた郵便物に、淡いピンク色の封筒が混じっているのに気付いた。

 表書きの筆跡は、女性のものと思われる、細い流麗な書体。ご丁寧に花の香りまで染み込ませてある。

 裏返して差し出し人の名を見るが、表書きと同じ筆跡で知らない女の名前が書いてある。古風な赤い封蝋には、薔薇を象った紋章が捺されている。

 封筒の中身を外から触って確かめると。どうやら厚紙で作ったカードが入っている様子だ。


 他の郵便物と一緒にして自室へ戻る。


 デスクの上を片付けて、郵便物をざっと仕分ける。返事が必要なもの、捨て置いていいもの、スケジュール調整が必要なもの、等々……


 最後に、例のカードが残った。

 二つ折りの淡いピンクの――差し出し人は『薔薇色の』と言いたいだろうが――カードの表には何の変哲もなく『お誕生日おめでとう』などと書かれている。だが、私の誕生日は三か月前だ。

 カードを開いてみたが、特に何の仕掛けも施されていないように思われる。文面にも何ら変わった事は書かれていない。斜めに光を当ててみたり、指先で撫でてみても、ただの時期外れの誕生日カードのようにしか見えない。


 だが、なにか仕掛けがあるはずなのだ。


 カードを調べるのはいったん置いて、封筒の方を調べにかかる。


 カードよりも更に淡い色。中身が透けて見えないように黒いラシャ紙で内張りがしてある。目視で外見を確かめた後、薄刃のナイフを使って丁寧に封筒を解体する。封筒の内側にも、内張りのラシャ紙にも、何か書かれたりはしていない。念のため透かしてみたりもしたのだが。


 溜め息をついて再びカードに取り組む。

 改めて手にとって、ふと違和感を覚える。なぜわざわざ、紙テープで縁取られているのか? カード本体と色が変えてあるのならば、単なる装飾、という可能性もあるが、わざわざ色を合わせている。

 ナイフのに刃先を使って、ていねいにテープを剥がす。

 ――ビンゴ。

 カードは二枚の紙が張り合わされたものだった。更にカードを解体する。

 二枚の厚紙の間に、折りたたんだ薄葉紙が挟まれていた。念のために糊づけされた内側を見ると、薔薇の蕾が型押しされている。「読後焼却」の意味だ。薄葉紙を破らないように注意深く開き、三回読んで内容を頭に叩き込んだ後、指示通り焼却する。


 ……まったく、異様に注意深いくせに、ロマンチストな上司を持つと、苦労させられる。

 確かに『薔薇』は組織のシンボルではあるのだが、毎回指示方法を変えられるのは、なぁ……

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ