第一夜「初代帝國」
2023年1月18日創設。ある5人の精鋭たちが、神奈川で産声を上げた。
神奈川で最恐の勢力・武闘を謳う暴走族・帝國。その名を聞けば全員が怯んだ。その中で最も恐れられている2人がいた。総長の宗介と副総長の緋月だ。2人は若くして当時神奈川最大勢力だった紅蓮を衰退へ追い込み、神奈川の勢力図を180度変えた。そして、新たな暴走族チーム、帝國を作った。
40人を相手にして、傷一つ負わず、傷一つ負わせずに終わらせた男。それが、初代帝國の頂点に立つ総長・宗介。その圧倒的な強さから、帝王と呼ばれている。
帝王の右腕に君臨する、神奈川最恐の女子高生・緋月。彼女の必殺である低姿勢から繰り出される、直角の左足。そんな彼女の異名は、死神。
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(電話越しの声)
『緋月ちゃんね〜。お母さんは最後は意識が朦朧してたみたいよ』
「.....そっか」
家電を通じてかかってきたのは、母親の死体の第一発見者である叔母だった。
4日前、私が家を留守にしている間に母親は1人で首吊り自殺をした。母親の足元には見たことない薬箱や注射器が転がっていたらしい。そして死後、体内から人間が飲める量ではないほどのアルコールが検出された。
『緋月ちゃん。お願いだから更生して、真っ当な人生を歩んで。お母さんもこんな緋月ちゃん、望んでないと思うわよ』
「ほとんど会ったことねぇのに、なに偉そうに言葉並べてんだよお前。緋月の前に2度と現れるな」
勢いよく受話器を置いた。そして机の上に置いてあるマールボロの中身を取り出して着火した。水回りに常時置いてある灰皿はいっぱいになっていた。
「ふぅ......」
4月から学年的には高校3年生になる、倉田緋月。彼女の左腕を囲うように刺青が彫られている。無論、学校には入学していない。彼女の最終学歴はほぼ小卒。中学、高校には一度も登校していない。
プルルルル
「もしもし」
『緋月〜。今日来るよな?』
「あ?どこに」
『集会。箱根神社だ』
「あ〜そっか。今日か」
『総長もぜひ来てほしいって』
「分かった。考えとく」
電話を切り、再び息を吐いた。瞬く間に目の前は煙で満ちた。
私は、中学卒業の頃から、男性しかいないような暴走族に所属している。川崎辺りでは有名な喧嘩師として、暴走族【帝國】の初代副総長として活動している。日々喧嘩に明け暮れる毎日。
そして今日は月に3度開かれる決起集会の日だった。副総長からの連絡で思い出した。
マールボロを肌に押し付ける、”根性焼き”を行ってから淡い桃色のサンダルを履いて家の鍵を閉めてポケットにしまった。黒色の綿生地の半ズボンに茶色に白いストライプが腕部分に入ったジャージを羽織る。
街に出る時は必ずリンゴ味の棒付きのキャンディーを口に咥える。
しばらく歩いて箱根神社にやってきた。すでに辺りは暗くなっており、何十人かの構成員が境内に座っていた。鳥居の前には改造された族車が何台も停まっていた。
鳥居をくぐると
「副総長っ!!お疲れ様です!!!」
彼らは一斉に立ち上がり手に持っているタバコを捨てて深くお辞儀をした。私はその間を通った。
「ふぅ」
吐いた煙を彼らに吹きかけながら、ジャージのフードを深く被った。そして茶色い賽銭箱のある拝殿に腰掛けた。構成員は各自のペースで続々と私の前に整列し始めた。人が増えるたびに貧乏ゆすりが勢いを増す。
「緋月〜!」
「漢さんっ!!お疲れ様です!!!」
構成員をなぞるようにやってきたのは、第3幹部・漢。年齢21歳。全身刺青の喧嘩師だ。本業はキャバクラ経営。身長190cm。体重85キロ。
「漢。宗介はまだ来ないのか?」
「あいつはいっつも遅れてくる。どーせ今日もそこら辺の輩と喧嘩してから来るんじゃねぇか」
「そっか」
漢はタバコを吸いながら拝殿の柵に寄りかかった。
2人で他のメンバーを待っていると、続々と幹部が族車に乗りやってきた。
「漢〜!!今日も俺とのトレーニング付き合えヨォ!?」
第2幹部・五十嵐淳郎介。年齢28歳。チーム最年長の頼れる幹部。彼は首から足首にかけて胴体のみ刺青を入れている。なぜか腕には入れない主義らしい。身長178cm。体重75キロ。
「緋月、お疲れ様です」
五十嵐は他の奴らと比べて上下関係がしっかりしている。一回り年下の私に対しても、挨拶は忘れない。まぁ性格は.......かなり怖い。漢とは毎日トレーニングをする仲みたい。
「緋月〜!!やったぁ!今日来てたんだ!!!あ、みんなお疲れ〜」
続いてやってきたのは、第4幹部・鹿島琳。年齢19歳。身長181cm。体重78キロ。刺青はどこも入っていない純正品。表向きは中央大生だが、裏では暴走族の一員。頭がキレる戦略家。私と歳が近いことから、くっつき虫のようにひっついてくるのが特徴。
「宗ちゃん、まだ来ないの?」
マールボロを地面に投げつけた後、じゅわ〜と不気味な音が聞こえた。私は足を組み整列する彼らをぼんやり眺めた。
ブォンブォンー!!!!!
「あ」
「この排気音は!!」
「来たぞ」
「ドキドキしちゃうネェ」
「........」
ちょうど一年前の冬。改造しすぎて排気音が聞いたことない音になった宗介のバイクは、境内の中に侵入した。鳥居の前で止めずに、そのまま突進してくるのが彼のルーティン。
「総長!!!!!お疲れ様です!!」
彼が鳥居をくぐった瞬間、世界が変わった気がした。私と大して変わらない体格に風貌。いつもお気に入りのn◯w balance の黒色のパーカーを深く被っている。ほぼ裸足のようなサンダルにグレーの長ズボン。足首には黄色とオレンジ色のミサンガをつけている。
「よっ、みんな」
「ふっ。元気そうじゃねぇか」
第3幹部の漢が軽快に笑った。
「久しぶりに全員揃ったな」
帝國初代総長・宗介。年齢23歳。身長170cm。体重68キロ。私とは小学生からの知り合い兼連れ。ツーリング仲間でもある。
「さて.......始めようか。帝國の開会を」




