電波系転校生
六月の下旬、
梅雨の真っ只中でジメジメした空気の中
そいつは来た
「転校生紹介すんぞー」
突然の話に盛り上がるクラスメイト達
そんな空気も気にせずガラガラと音を立てて扉が開かれた。
その音が鳴ると同時に教室内の喧騒は消え去る。
入ってきたやつはドアの枠にギリギリ当たるか当たらないかくらいの背丈でスラリと長い脚を少し引きずるみたいに歩いていた。
「やばくない?めっちゃイケメン!」
前の席に座っている優希がこちらに振り返ってそう言った。
教卓の前に立ったそいつは徐にチョークを持ち汚い字で黒板に字を書いた
椒 汐恩
苗字は読めないし名前もちょっと
キラキラネームチックだ。
「ハジカミ、シオンです」
男は透き通るような声で名前を名乗った。
ハジカミって、読むんだ。
「東京湾から大阪湾に引っ越してきました
僕は人魚です。どうぞ、よろしくお願いします」
俳優みたいなキラキラした顔にざわついていたクラスメイト達は一気に口をつぐんだ
電波ちゃんもとい電波くんだったのだ。
「じゃあ席はそこな、笹川の隣な」
一番後ろの窓側の席であたしの隣だ
そう言われた転校生、椒は教室に入ってきた時みたいな歩き方で席に着く
東京から来たらしい転校生はいかにも都会の清潔な感じがした。長い脚と艶のある黒髪、憂いの帯びた表情が合わさり転校生の周りだけどこか浮世離れしている。
「よろしく、あたし笹川 静。」
電波くんだったとして絶対悪いやつとは限らないのだ。そんな期待を込めて挨拶をした。
「………」
無言でこちらを見た後にすぐに向き直ってしまった。美人だからか余計に迫力があって少しゾワリとしてしまう。
それもそうだがなんだかとても感じが悪い、やっぱり電波発言する奴にまともなのはいないんじゃないだろうか。
青白い肌に細い身体が二次元のキャラクターのようでついつい目を奪われてしまう。
そうこうしているうちにHRが終わり休み時間になる。するとクラスメイトが一斉に椒のところまで集まってきた
「東京から来たん?やっぱ都会っ子って感じするよなあ」
「別に」
「椒くんのお父さん俳優さんやろ?この辺地元やん。」
「違う…」
「え〜マジ?ヤバ!」
「僕は人魚だから違うもん」
「えー。てかそのカーディガン、ブランドやろ?」
隣でもみくちゃにされている転校生を横目に私はうたた寝をし始めた。
休み時間も終わり授業が始まった
授業中に優希が振り返ってきて言う
「あの転校生めっちゃ感じ悪いねんけど」
電波発言に加えて無視もしていたそうで
「そーなん」
「なんか人魚だからとか言っとるし」
「へ〜」
なんというか案の定って感じだし転校生終わったなとも思った。
なぜなら女子、とくに優希は影響力が強い方だから
明日からアイツ無視しよ、
みたいな指令が出ることもないことはない。
「てか転校生めっちゃボンボンやで、俳優の息子や
「へぇ〜」
「あの着てるカーディガンブランドやし」
「7万するやつやで」
「マジか」
「まじまじ」
いいなお金があって、
ウチは貧乏でニートの兄を飼ってるから、買う余裕がない。使う元気もないけど。
休み時間のたびに転校生の周りに人が集まってくるが、それも時間を追うごとに減っていき、
ついにはその転校生は空気みたいになった。
放課後、あたしは優希に頼まれてしまった掃除をしていた。件の転校生はなぜか席に座ったまま黄昏ている。
黒板を消しながら
「ねぇ」
引き受けたあたしが悪いけど、めんどうくさいな、掃除。
「ねぇってば」
雨が止み窓の外には澄んだ青空が広がっている
夏至が来たばかりだからかまだまだ空は明るい。
「聞こえてるでしょ」
目の前に人の顔が現れついギョッとしてしまった、先ほどから声をかけられているのに気がつかなかったらしい。
日差しに照らされた椒の髪がキラキラとひかっている。
「…転校生」
「何」
なんだコイツと思いながら尋ねる
「友達になろうよ」
椒はそう言って私の手を取った
骨張った細い手は女の子みたいだ、と思う
「ほら」
こちらを見る椒の表情は一切笑ってなくて無だ
「なんであたしにしたん」
「だって」
「だってこのクラスで一番キレイな顔してるから。まぁ僕がきたから今日から二番手だけどね」
「人間の友達を作ろうと思って
陸に来たんだから
せっかくなら僕と同じくらいか
それよりちょっと下くらいの見た目の人と
友達になりたいもん」
最悪なやつに気に入られてしまった
と思った
そのまま椒を置いて帰路につくとあたしの後ろを追うみたいによたよたまたあの歩き方で追ってきた
「椒はなんでそんな歩き方すんの」
「だって人魚だもん、呪いがかけられちゃってるんだ。」
またか、と思いつつ聞き流した
「椒じゃなくて名前で呼んでよ」
とも言われた
数分歩きながら汐恩のトンチキ話を聞いていると分かれ道に来た、一方は私が住んでいる方で、もう一方は高級住宅街とかいうやつだ。
「あたしこっちやから」
そう言って家の方向を指差す
「うん、また明日ね笹川静。」
手を振ってあたしは足早に歩き始めた
「夕飯作んなきゃ」
呼んでくれてありがとうございました。
処女作です。一応続きます。
主人公の名前は笹川静です。
中肉中背で少なくとも顔は良い方
主人公の友人の女の子は石田優希です。背が高めで女子の中でいちばん影響力があると思います。




