表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最強公爵は推し活令嬢を溺愛したい!〜しかし全てが空回る〜  作者: 白波さめち


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

28/46

断罪イベントなんてそう易々と起こせるか!


 茶会は少し早めに終わらせた。


 今回問題を起こしたイザベラがいる部屋へと向かうと、扉の向こう側から公爵家の騎士ライオネルの声が聞こえてくる。


「イザベラ。もういい加減ここには来るな」

 

「もう! 放っておいてくださいませ!!」


 ライオネルとイザベラの言い合う声に、せめてもう少し声を落とせと思いながらオーガストとセレスティナを連れて入室した。

 

「……っ!!」


 入室した私達を見て、イザベラはびくりと肩を震わせる。


 今回も彼女に反省の色はなさそうだ。


 しかし今回の茶会のホストはオーガスト。

 私は口を挟まずセレスティナと共に壁際に立った。


「イザベラ嬢……流石にもう何度目だ?」


「申し訳……ありません」


 オーガストの冷たい声にイザベラは深く頭を下げた。

 彼女の側に立つライオネルも、じっと彼女を見つめている。


「なぜいつも茶会で問題を起こすのだ」


「申し訳ありません……」


 イザベラはひたすら頭を下げ謝罪を繰り返す。

 今までと同じ。埒があかない。


「レイチェルは庭園の隅で泣いていたぞ。だが今回も君からの謝罪は求めないと言っている」


 何も言わないイザベラに、オーガストは大きくため息をついた。


「男爵の長年の献身に免じて今回も不問にするが……これ限りだ。これ以上問題を起こすならば君をここに招待するわけにはいかなくなる。だからせめて問題は起こすな」


 オーガストはそう言い捨てると、イザベラに背を向け外に出た。

 イザベラに視線を向けるが、彼女は頭を下げたまま顔を上げることはなかった。


「はぁ、もう面倒ばかりだ」


 扉を抜けると、オーガストは苛立った様子で頭を掻いた。

 

 気持ちは分かる。


 婚約者を選ぶための茶会や夜会を開けなどと言われたらゾッとする。ましてや茶会や夜会を開くたびに問題が起こるのだ。

 彼が苛立つのも痛いほど理解できた。

 

 オーガストはそのままの足で、少し離れた応接室にいるレイチェルの元へと訪れた。

 

 レイチェルには妹のドレスを貸し出したようで、彼女はすでに着替えを済ませ、お茶を飲んでいた。入ってきた私達を見て急いで立ち上がったレイチェルは、すぐに申し訳なさそうに眉を下げて瞳を潤ませる。


「ドレスまでお借りしてしまって申し訳ございませんオーガスト様……」


「いや、気にしなくていい。怪我はないか?」


 オーガストが優しくレイチェルに尋ねると、彼女は唇を結び悲しげに瞼を下ろした。


「わたくしは大丈夫です……ただ、今回のお茶会のために新しく仕立てたドレスが台無しで……」


 レイチェルは悲しみを誤魔化すように、小さく首を振る。そして睫毛を震わせて微笑んだ。


「イザベラ様もオーガスト様の婚約者になりたくて必死なのです。男爵家のご令嬢ですから少しでもライバルを減らしたいのでしょう。でも、あのように乱暴な振る舞いをされると、わたくしもどうしたらいいか……」

 

「……君は優しいな、レイチェル。彼女の件はホストである私の責任だ。君に怖い思いをさせてしまって申し訳ないと思っている」

 

「オーガスト様……」


 レイチェルは感謝に瞳を潤ませると、唐突に大胆な一歩を踏み出した。


「わたくし、オーガスト様の優しさに本当に救われました。こんな状態でお恥ずかしいのですが……わたくし、次の夜会で是非オーガスト様に踊っていただきたいのです」


 オーガストは一瞬戸惑ったが、すぐに毅然とした表情で頷いた。


「もちろんだ。君を不快な目に遭わせた詫びでもある。喜んで」


 その瞬間、私の隣に立つセレスティナが、小さく「やめておいたほうがいい」と呟いた。


 その声は他の誰にも聞こえぬほどの囁きだったが、私には雷鳴のように響いた。



♦︎ ♦︎ ♦︎


 

「オーガスト。レイチェルとイザベラをもう一度調べ直せ」


 セレスティナを乗せた馬車を見送った後、私は後始末に奔走するオーガストを呼び出しそう告げた。オーガストは何を今更というように眉間に皺を寄せる。


「調べ直すって……何故です?」

 

「……分からないが」

 

「分からないって……どうしたんですか兄上。最近の兄上はおかしいですよ?」


 オーガストは理解できないとばかりに首を振った。

 説明なんてものはない。

 ただセレスティナのあの呟きが、レイチェルへの警戒を最大値にまで引き上げた。


 他人の美しい恋をこよなく愛するセレスティナが「やめておいた方がいい」と言葉にしたのは、今回、そして過去に一度、第三王子の婚約者になる事を望んでいたマーガレットに対してだけだ。

 

 性格が破綻している第三王子がそう言われるのは理解できる。賢い貴族であれば皆同じ意見だ。

 

 彼と違ってレイチェルにそのような噂や傾向は見られない。しかし少なくともセレスティナは、彼女では「美しい恋」は紡げないと思っている。


 理由なんてそれだけで十分だった。


 ――彼女はいつも正しい。

 

「オーガスト。人は嘘がつける」


 オーガストは私の真剣な表情を見て姿勢を正した。


「私達公爵家に最も必要な力はなんだと思う?それは真実を見極める力だ。この世界はどこもかしこも嘘に満ちている。その中で私達は真実を見極め、何が最善か選び取っていかなくてはいけない」


 彼はごくりと唾を飲み込み「嘘……? 真実……?」と呟いた。私はさらに言葉を重ねる。


「今回の騒ぎだけじゃない。今までの騒ぎの裏はちゃんと取ったのか?」


「裏も何も……目撃者があれだけいたんですよ?」


「目撃者が我らの目を狂わせている可能性はないか?」


 その可能性に至らなかったオーガストは目を見開いた。


 大丈夫だオーガスト。

 偉そうな事を言っているが私も気づいていなかった。


 レイチェルとイザベラを調査させる為に吐いた『嘘』である。


「……調べなおします」


 私の言葉を噛み締めるように顔を歪ませたオーガストは、固く拳を握り俯いた。


 

 

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ