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最強公爵は推し活令嬢を溺愛したい!〜しかし全てが空回る〜  作者: 白波さめち


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異母の兄弟姉妹にいいことなんてない


 セレスティナに獲物と栄誉を捧げることだけを告げ、閉会式は欠席した。


 王宮に一部屋用意してもらい、コンラッド王子の計らいで得た服に着替えさせてもらう。

 

 本来なら今頃、全貴族達の目の前でセレスティナに獲物と栄誉を捧げていたはずだったが致し方ない。


 セレスティナとの約束は果たしたし、ブラッドフォード王子の面目を潰すことができたので悪くない結果だ。


 コンラッド王子も貴族達の計らいで多くの獲物を得ることができていた。おそらく表彰されている。


 きっとセレスティナは、コンラッド王子とロレッタ嬢の壇上でのロマンスを、最高の席で楽しんでいるだろう──




「アークレイ様!最高の舞台をありがとうございます!」


 ほら、これである。


 戻ってきた私に、セレスティナは瞳を輝かせながら閉会式の様子を語った。

 

 誰もが注目していなかったコンラッド王子。

 

 彼が壇上に呼ばれただけでも会場はざわめいたそうだ。

 そして国王からお褒めの言葉を賜った後、ロレッタ侯爵令嬢に獲物と栄誉を授けたことで、大歓声の中コンラッド王子と彼女の婚約は成立した。


 同じ壇上にいたため、二人の表情も一緒に贈られた首飾りの輝きもよく見ることができたらしい。


 まあ、優勝者の席から見たのだから当然だろうな。


 先ほどの光景を、頬を染めながら恍惚とした表情で語るセレスティナ。

 この顔をさせたのが自分の計らいによるものであることを考えれば悪くない。

 

 そう……誰か悪くないと言ってくれ!!


 最高の場所で二人を見ることができた、とセレスティナは喜んでいる。


 だが、何かが猛烈に違う気がしてならない。

 

 一切触れられない私からの獲物と栄誉の贈り物は、彼女の中でどこへ行った?!?!


 優勝者だぞ?!


 私が捧げた優勝の栄誉より、至近距離で見た他人の首飾りがそれほど嬉しいのか!!


 ……いや。ここで落ち込んだら負けだ。

 

 セレスティナが一筋縄ではいかないということは分かっていた。

 彼女を喜ばせたという事実だけを噛み締め前を見るのだ。


 セレスティナに「良かったな」と笑顔を向けながら、そう自分に言い聞かせた。


 その時。

 ふと、周囲の視線がこちらに集まっているのを感じた。私やセレスティナに向けられたものではない。

 

「セレスティナ」


 棘のある声で彼女の名前が呼ばれた。

 そちら向くと、明るい桃色の髪の令嬢が敵意を滲ませながら立っている。


 彼女の事はよく知っている。ベオグラード侯爵家の第二夫人の娘マーガレットだ。


 つまりセレスティナとシャーロットの異母姉妹にあたる人物。


 マーガレットとセレスティナとは同い年。


 セレスティナやシャーロットの持つ凛とした雰囲気とは真逆で、男の庇護欲を唆るような見目をしているマーガレット。


 自分の見目を理解しているのだろう。夜会で男性に上目遣いをしながら甘えるような声で話す彼女を何度か見た事がある。


 しかし今現在、その庇護欲を唆るような表情は姿を消し、明らかな憎悪が張り付いていた。


 マーガレットは優雅な姿を取り戻した私を一瞥すると、すぐにその視線をセレスティナに向ける。


「お姉様、随分とご機嫌ようね」


 マーガレットの声は、閉会式の熱気と歓談の喧騒を切り裂くように鋭く響いた。セレスティナと同じ緑色の瞳は怒りに燃えている。


「ねえ、人の恋路を邪魔した気分はどう?」


「……どういうことかしら? マーガレット」


「へえ? しらばっくれるんだ? 公爵を使ってブラッドフォード王子の邪魔をしておいて、なんて図々しいのかしら」


 セレスティナの恍惚とした笑顔が、一瞬で張り付いたような無表情に変わる。それはまるで感情という機能を緊急停止させたかのようだ。


「あなたが邪魔をしたんでしょう! 私が王子妃になるのがそんなに気に入らないのかしら? 同じベオグラード家の娘なのに、ベオグラード家の繁栄を、あなたは自分の感情だけで台無しにするのね」


 セレスティナは一歩も引かず、感情のない目でマーガレットを見つめ返した。


「それは、ブラッドフォード王子がマーガレットに獲物と栄誉を捧げる予定だったということかしら?」


「そうよ!」


 ブラッドフォード王子は以前マーガレットにその様な事を仄めかしていたそうだ。


 あの王子の言葉を間に受けるなんて愚かな判断だとしか思えない。あれほど多くの令嬢に手を出し、捨てている男が本当に人との約束を守ると思っているのだろうか。


「……ブラッドフォード王子は辞めておいた方がいいと思うわ。マーガレット」


 感情を排除したセレスティナの反論は、マーガレットの感情的な怒りをさらに煽った。


「やめておいた方がいい? 何その上から目線」


 セレスティナの真っ当な助言はマーガレットの自尊心を傷つけたようだ。彼女は醜く顔を歪ませ嘲るように笑う。


「そんな性格だから、貴女は誰にも愛されないのよ。まるで貴女の母親そっくり。貴女の母親が至らないから、お父様はお母様を愛したの。ただそれだけの事なのに」


 セレスティナの目元がぴくりと反応する。

 それを見たマーガレットは、勝ちを悟ったかのように笑った。


「自分の至らなさを、嫌がらせで晴らす。本当にあの面倒くさい女とそっくりね。セレスティナ」

 

 何故か分からない。


 ただ、聴こえるはずもないセレスティナの心の軋む音が聞こえた気がした。


 反射的に彼女の耳を両手でふさぐ。

 セレスティナは俺の突然の行動に振り向き、驚いたように俺を見た。


「マーガレット嬢、貴女がブラッドフォード王子とどのような約束をされたかなど私には知る由もありません。ですが今年の狩猟大会で、最も獲物を得たのは私です」


 セレスティナの耳を塞いだまま、私はただ冷静にマーガレットに事実を突きつける。

 

「そして私は自分の意思でセレスティナに獲物と栄誉を捧げた。それを後になって、負けた犬の様に吠えるのは淑女として如何なものでしょう」


 そう言って私は周囲を見ろと顎で彼女に示した。


 彼女の普段の庇護欲を唆るような振る舞いは完全に崩れてしまっている。これ以上騒ぎになれば、次の夜会で立ち所に貴族達の噂の的になるだろう。


 それでもいいのか? マーガレット。


 マーガレットはわなわなと唇を震わせセレスティナを睨みつけた後、背を向けた。

 そのまま貴族達の視線を避ける様に早足で会場の外へと逃げていく。


 彼女の姿が視界から消えた事を確認し、ため息をついてセレスティナの耳を覆っていた手を離した。


 改めて、自分の手に収まってしまうのではないかと思うほど彼女の小さな顔。触れてしまった事に心臓が昂っていたが、勿論表情には出さない。


 彼女に視線を戻すと、セレスティナの瞳は驚きに揺れていた。

 先ほどの感情のない目は光を取り戻し、頬を赤らめ私を見つめている。


 彼女のエメラルドのような瞳に吸い寄せられる。

 いや、彼女が私の金色の瞳に吸い寄せられているのかもしれない。


「アークレイ様……」


 震える彼女の声。

 私は……勝利を確信した。


「わたくし、初めて運命を信じました」


 ああ。そうだ。

 私も初めて君を見た時から、運命を感じていた。


「わたくし達、同志だったのですね?!」


「はあ?!?!」


 セレスティナは感激という一言を表情に表したまま、熱の籠った瞳で私を見た。


「わたくし、他人の美しい恋を心から愛しているのは自分だけと……これまで思い上がっておりました。」


 思い上がりなんかじゃない。

 多分国中を探しても、ここまで他人のロマンスに熱を注ぐのは君だけだと私が断言する。


 しかし、輝く笑顔を向けられた私は言葉を発する力を奪われた様に彼女を見つめる事しかできない。


「アークレイ様も同じ想いをお持ちだったのですね……」


 違う。

 私は他人の恋なんて心の底からどうでもいい。


「それなのに私ったら……先程は最高の舞台と席を用意していただいたのに、アークレイ様を差し置いて一人で彼らの美しい恋を特等席で楽しんでしまいました」


 もうどこから突っ込んでいいのか分からなかった。


 ただ、初めてセレスティナが私に手を差し出したことだけは分かった。


 長く美しい指が、まるで花の蜜のように私を誘惑する。


「これから……美しい恋を愛する同志として……仲良くしてくださいませ。アークレイ様」


 否定して彼女の笑顔を壊す?

 そんな選択肢は存在しなかった。


 ただ誘われるように私はその手を取る。


 頭の中の理性がその手を取るな!と警告を発しているが、ではどうすればいいのかと問うと理性は簡単に沈黙した。


「同志と認めてもらえるなど思わなかった。セレスティナ侯爵令嬢……これからもよろしく頼む」


 碌な策も浮かばない私の理性は、頭の中で悲鳴を上げていた。

 


 


アークレイは『ロマンスの同志』の地位を手に入れた!

恋人から遠ざかっている?近くなってる?

どちらでしょうか…?



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― 新着の感想 ―
まずさっき書いた感想が全部作者様に先回りされててちゃんと葛藤してたアークレイ君の気持ちに、はうああとなった後ですぐのマーガレット嬢登場からの風雲急を告げる展開 それに対するアークレイ閣下の立ち回りが…
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